2016年10月14日金曜日

野田幹事長で野党共闘は進むのか

 民進党の野田幹事長10日、福岡6区の立候補予定者応援演説後の記者会見で、「衆院の単独過半数めざす」と語り大顰蹙を買いました。
 「世相を斬る あいば達也」氏がブログで「呆れて開いた口が塞がらない」と述べたことは先に紹介しましたが、朝日新聞(など)も、「共闘する共産、社民、生活の3党との小選挙区のすみ分けが課題となるなか、あくまで単独で政権奪取をめざす考えを示したもので、3党の反発も予想される」と、控えめな表現ながらその傲慢さを批判しています。
※  10月12日  野田幹事長 衆院の単独過半数をめざすと
 
 彼が蓮舫氏の要請に応じて民進党の幹事長に収まったときに、ジャーナリストの高野孟氏も日刊ゲンダイに、「安倍悪政の下地つくった戦犯が幹事長 自公民大連立の悪夢」というタイトルで、いわば野田政権時代の罪悪を列挙する記事を書きました。
9月23日  高野孟氏が野田佳彦批判の決定版を!!
 
 それは極めて簡潔にまとめられていて、当時のさまざまな事柄を一読してよく思い出させるものでした。
 その高野氏が今回再び日刊ゲンダイ紙に、「・・・民進党の足を引っ張っているのは誰か」と題して、その後の彼に見られる、「幹事長にあるまじき耐えがたい欠点」を3つにまとめて指摘しています。
 
第1は、政治家という以前に社会人としての礼儀を欠いている傲慢さです。
第2は、選挙区ごとの統一候補の選定にあたり、”地方自主権”を認めずに、すべて野田幹事長=馬淵澄夫選対委員長が取り仕切ることにしたという権威主義と、実情を認識できていない不明さです。
第3に、「共産党とは選挙協力はしても連立政権は組まない」と繰り返し述べるという、「まずは連立して現政権を倒す」というプロセスへの認識の無さ乃至は誤った考え方です。
  高野氏の論評は今回も極めて簡潔に分かりやすく書かれています。

 それにしても、この先こういう人間を相手にして共闘を進めなくてはならないわけで、果たしてうまくゆくのか・・・暗澹たる思いがします。
 もしもそういう認識を蓮舫氏が全く持っていないのであれば、彼女もただ口の回り具合が良いだけの人間であったということになります。
 
 植草一秀の「知られざる真実」も併せて紹介します。
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ごちゃごちゃ言って民進党の足を引っ張っているのは誰か
 高野孟 永田町の裏を読む 日刊ゲンダイ 2016年10月13日
 民進党が8日の全国幹事会で、次期衆院選でも野党統一候補の擁立を目指す方針を決めた。野田佳彦幹事長は、昨年末の自分のブログでは「共産党とは思想も政策も全然違うので、共闘することはありえない」と言っていたし、今年春には生活の党を含む野党結集について「一番ごちゃごちゃ言って(自分の政権の)足を引っ張った小沢一郎さえ来なければ、生活の党を受け入れる」と言っていたのだから、これはほとんど“変節”と言えるほどの路線転換である。
 
 しかしそれは当然で、目前の2つの衆議院補選も新潟知事選も、さらに1月と噂される総選挙も、独力で勝つ可能性が絶無なのだから、野党選挙協力をさらに深化させていくほか民進党の生き残る道はない。ところが、野田の本心である「反共産・反小沢」感情は根深いものがあり、そのためこのせっかくの路線転換もまだいくつもの問題点を残している。
 
 第1に、自力で勝てないからこそ他党に頭を下げて協力をお願いする立場だというのに、野田は補選に関して「政策協定は結ばない」「推薦は受けない。支援は自由だ」などと偉そうな口をきいている。政治家という以前に社会人としての礼儀を欠いている
 
 第2に、参院選の場合には各選挙区ごとに候補者調整をしたり政策協定を結んだりしたのだが、次期衆院選についてはそのような“地方自主権”を認めず、すべて野田幹事長=馬淵澄夫選対委員長が取り仕切るという制約条件をつけた。しかし参院選の多くの1人区では、候補者は単に「野党統一候補」だったのではなく「野党プラス市民の統一候補」だった。地元で安保法制反対のデモ・集会を組織してきた市民団体などが積極的に政策協定の議論に加わり、場合によっては全国レベルの「市民連合」も出かけて行って市民と政党との調整役を果たすことで、それぞれに特徴のある政策協定と選挙体制が出来上がった。中央で仕切ったのではこういう知恵はむしろ圧殺される
 
 第3に、野田も蓮舫代表も「共産党とは選挙協力はしても連立政権は組まない」と繰り返し述べている。党内反共派を安心させるためだろうが、思想や基本政策が違う党とも当面の課題で一致する限り、政策協定を結んで政権交代を図るのが連立で、それが違わないのなら1つの党になればいいのである。何を言っているのか分からない。
「一番ごちゃごちゃ言って民進党の足を引っ張っている」のは野田である
 
高野孟 (ジャーナリスト
1944年生まれ。「インサイダー」編集長、「ザ・ジャーナル」主幹。02年より早稲田大学客員教授。主な著書に「ジャーナリスティックな地図」(池上彰らと共著)、「沖縄に海兵隊は要らない!」、「いま、なぜ東アジア共同体なのか」(孫崎享らと共著」など。メルマガ「高野孟のザ・ジャーナル」を配信中。 
 
 
新潟から原発再稼働阻止の大いなる風を!
植草一秀の「知られざる真実」 2016年10月12日 
新潟県知事選が10月16日に投票日を迎える。
新潟県知事選で米山隆一氏が勝利し、10月23日の東京10区と福岡6区の衆院補選で自公系候補が勝利すると、蓮舫-野田民進党は壊滅する。緒戦3タテということになる
その理由は民進党が 「鵺(ぬえ)」 であるからだ。
 
新潟県知事選で原発稼働推進候補と原発稼働阻止候補が出馬し、原発阻止候補を支援しないところに、この政党の正体が表れている。
そして民進党最大の支持母体である連合新潟は、原発推進候補を正式に支援し、連合会長の神津里季生氏が原発推進候補と理解されている森民夫氏の応援に現地入りしたのである。
「連合」は労働組合の連合組織であるような装いを凝らしているが、まったく違う。連合を仕切っているのは「御用組合」である。
その「御用組合」は電力、電機、鉄鋼、自動車産業の御用組合である。この電力、電機、鉄鋼、自動車の4業界こそ、TPPを推進し、原発を推進し、集団的自衛権行使を推進し、沖縄米軍基地建設を推進し、消費税増税を推進している 日本の巨大資本である。
 
この巨大資本と表裏一体の組織が上記の「御用組合」であり、その主張は日本の一般労働者及び一般労働者によって組織されている労働組合の主張と正面から対峙する。
新潟県知事選には民進党議員の一部が米山隆一氏の応援に駆け付けている。
民進党は「鵺(ぬえ)」の存在だが、民進党のなかには、主権者の側に立とうとする政治家が存在している。しかし、民進党全体は、日本の巨大資本と表裏一体である「御用組合連合」の意思に逆らえない「ゆ党」なのである。「や」と「よ」の間でも、限りなく「よ」に近い「ゆ党」である。
その象徴が蓮舫氏と野田佳彦氏であり、もし、初戦連敗となるなら、直ちに引責辞任し、党を解党するのが望ましい。
 
同時に、この機会に、連合も「御用組合連合」と「労働組合連合」に分離されることを提唱したい。
民進党の基本政策が曖昧であるために、野党連合の構築が難しくなっている。
民進党の構成員は、野党連合を阻害しているのは「共産党」であるかのような言い回しをするが、これは主権者の感覚からかけ離れた暴論である。
 
安倍政治の基本政策に反対する主権者にとって、何よりも邪魔な存在が民進党なのである。
「日本維新の会」のように、完全に自公サイドに付くことを明示するなら「鵺」の存在ではなくなる。「自公勢力」として正確に捉えることができる。
ところが、民進党は原発、憲法、TPP、基地、格差=消費税の問題に、党として明確な基本政策を示さない。そのことを「鵺」と表現しているのである。
 
多くの民進党議員、候補者は、連合を敵に回したくないから、はっきりとした政策路線を示さない。
その思考回路を理解できないわけではないが、その曖昧姿勢は主権者に対する不誠実さを意味していることを忘れてはならない。
連合が「御用組合連合」と「労働組合連合」に分離し、それと連動して民進党が「野党」と「与党もどき」に分離するべきだ。
この点を明確にする「野党」民進党は共産、生活、社民と強固な野党連合を構築できる。
 
フクシマ事故の検証もなしに日本の原発稼働を全面転換することが間違っていることは、大半の日本国民の同意するところだ。
10月16日の新潟県知事選で、新潟県民は全員投票所に足を運び、新潟県民の良識を広く日本に示すべきだと思う。
そして、この選挙を通じて民進党の「鵺体質」を広く世に知らしめ、一刻も早い民進党解党を実現するべきだ。
このプロセスが実現すれば、日本政治刷新の道筋が一気に開けてくると思われる。
(後  略)