2018年1月9日火曜日

日本の貧困化を政策の正面に据えよ

 家計の支出に占める食費の割合である「エンゲル係数」は特に年配の人にはお馴染みの数値ですが、高度経済成長の時期を経て「一億総中流」といわれるようになると大幅に改善されて、あまり耳にしなくなりました。

 安倍政権になって5年、大企業はますます儲け、金持ちはますます大金持ちになりましたが、庶民の生活はますます苦しくなり、16年の1世帯当たりの実質消費支出は、3年連続で減り、エンゲル係数は、2人以上の世帯で25.8%と1987年以来29年ぶりの高水準で、勤労者世帯では24.1%と27年ぶりの高水準でした。

 安倍首相は4年間で海外に40兆円をばら撒き(16年末現在)目下は役に立たない高額な米国の兵器を買いあさっていますが、庶民の生活は貧困化の一途をたどっています。

「日々雑感」氏が「日本の貧困化を政策の正面に据えよ」と述べました。余りにも当然の主張です。
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日本の貧困化を政策の正面に据えよ。
日々雑感 2018年1月8日
 総務省が17日発表した2016年の家計調査速報によると、家計の支出に占める食費の割合である「エンゲル係数」は2人以上の世帯で前年より0.8ポイント上昇して25.8%となった。1987年以来29年ぶりの高水準。食品価格が上昇したほか、共働き世帯の増加で調理食品などの購入が増えたことが背景にある。衣料品などを買い控えており、家計の節約志向は根強い。

 16年の1世帯あたりの月額消費支出は平均28万2188円で、物価変動の影響を除いた実質で前年に比べ1.7%減った。前年を下回ったのは3年連続だ。
 勤労者世帯の消費支出も実質で1.7%減。エンゲル係数(農林漁業世帯を除く)は24.1%となり、90年以来の高水準だった。

 家計の支出のなかで、食品はほかの支出に比べて削りにくく、一般的にエンゲル係数が高いほど他の支出に回す余裕がなく、経済的に苦しいとされる。経済が発展途上にあるときは高く、成熟すると低下してくる。80年代以降にエンゲル係数が低下傾向だったのは「景気が上向き消費全体が活発で、娯楽など食品以外の支出が増えたため」(総務省)とされる。

 日本経済はすでに成熟しているが、同指数は15~16年の2年間で1.8ポイント上がった。総務省は「うち半分は食品の物価上昇によるもの」と分析した。
 消費者物価指数(CPI)をみると、16年の総合指数は0.1%低下したが、食料は1.7%上昇。円安傾向などで原材料価格が上昇し、菓子類や加工食品が値上がりしたためだ。

 働く女性の増加も食品への支出増につながっている。総務省が17日発表した労働力調査(詳細集計)によると、女性の就業率(15歳以上)は48.9%と前年比0.9ポイント上昇した。93年(49%)以来、23年ぶりの高い水準だ。15~64歳の生産年齢人口ベースでみると就業率は66%に達し、過去最高水準となっている。16年の女性正社員の雇用者数は36万人増の1078万人となり、増加数はこの10年で最も多かった。

 食品への支出は2人以上の世帯で実質0.2%減だったが、勤労者世帯では0.6%増。特に「時短」につながる弁当や総菜セットなど調理食品は4.5%増と旺盛だ。

 一方、勤労者世帯でも家具・家事用品は1.8%減、被服及び履物は3.4%減と振るわない。勤労者世帯の可処分所得は42万8697円で実質0.4%増。企業の賃上げの効果もあり4年ぶりに増加したが、可処分所得のうち消費に回した割合を示す「平均消費性向」は1.6ポイント低い72.2%で、15年ぶりの低水準となった。

 SMBC日興証券の牧野潤一氏は「16年は賃上げより食品値上げの影響が大きく、節約志向が高まった」とみる。特に無職世帯にとって値上げは家計に打撃だ。高齢夫婦の無職世帯ではエンゲル係数が15年から1.7ポイント上昇の27.3%となった
(以上「日経新聞」より引用)

 エンゲル係数は学校で馴染みの深い経済指標の一つだ。日本は先進国の中でもエンゲル係数は低い方だったが、2014年の消費増税により急激に上昇し、日本の貧困化を如実に表わしている。
 消費増税でエンゲル係数が上がるのは当たり前で、消費税の増税で他の消費は抑えられるが、食料費だけは削減できないため如実に上昇している。それだけ日本の各家庭から余裕がなくなり、消費増税により国民が貧困化しているのが良くわかるのではないだろうか。

 去年ブームとなったフランスの経済学者ピケティ氏は「資産課税に累進税率を導入せよ」と「21世紀の資本論」で提言していた。その理由は簡単で、資産から得られる利益率は労働などによる経済成長よりも大きいからだ、と主張する。
 日本でも株式配当などには源泉分離20%課税が適用されて、給与所得などよりも有利な税率になっている。それは株式市場への投資を促進しようとの理屈からそうなっているのだが、いい加減本来の総合課税に戻すべきではないだろうか。

 勿論、相続課税も強化すべきではないだろうか。当然、都会などでは普通の宅地でも相続すれば課税控除額を越えて、納税するために売却しなくてはならなくなり、被相続人が路頭に迷うことにもなりかねない。という事態に対処すべきだろう。たとえば農地と同様に「納期の延長」を特例措置として設けて、家屋を売却するまでは相続税の課税対象から除外しておくなどの特別規定を設けるのは必要だ。

 そうした配慮をしつつも資産課税を強化して、所得に関しては減税を行い、特に年収300万円以下の低所得者に対しては思いっきり減税すべきだ。そしてGDPの伸びが3%を越えるまでは積極的に財政出動してデフレ下経済から真剣に脱却すべきだ。PBなどといった姑息な財務官僚の徴税宣伝をマスメディアは引き受けるのを拒否し、「国の借金1050兆円」などというウソ宣伝を一切やめるべきだ。「政府の借金」はあるが、国は世界随一の債権国だという事実を国民に報せるべきだ。