2018年1月15日月曜日

日韓合意の見直し 感情論に走る安倍政権の大人げなさ

 韓国の文大統領が日韓合意の成立経過に言及したことに対し、安倍首相が見直し等を拒否したことを世論の83%が支持(15日付・読売新聞)し、韓国を信頼できないとする人たちが78%もいることに、天木直人氏が大いなる違和感を表明しました。

 14日のサンデーモーニングで、司会の関口氏をはじめとしてほぼ全員が韓国叩きをしたことにも天木氏は衝撃を受けたとしています。リベラル派の青木理氏も、奥歯にものが挟まった言い方だったと非難しました。青木氏の発言は他のメンバーとは一線を画していたのですが、やや遠慮がちであったのは事実です。

 2015年末の日韓合意が、被害者や韓国民の思いとは大きく乖離したものであったのは間違いのないことで、韓国政府が何故そんな合意をしたのか疑問です。しかしそもそもが当時慰安婦問題をめぐり完全に冷え切っていた日韓関係を懸念したオバマ大統領強い要求(事実上の命令によって急遽まとめられた日韓合意だったので、不本意ながら合意せざるを得なかった韓国政府の苦衷は、公表された文書からも察することができます。

 報道を丁寧に読めば、文大統領は日韓合意が正しい着地点に達していないことは口にしつつも、それを「反故にする」と言うような発言はしていません。
 したがって日本政府が、直ちに「日韓合意は1ミリも変更しない」などと強硬に断言したのは、やはり韓国政府の苦衷を無視するもので、大人げないというしかありません。
 安倍首相が激昂型の態度を取るのは予想されたことですが、それを世論の83%が支持したのはやはり驚きで、かつて米国で、クリントン大統領がイラクを爆撃するたびに支持率が90%に急上昇したことが思い出されます。

 日刊ゲンダイは「日韓合意の反故を非難 感情論に走る安倍政権の大人げなさ」と題した記事を出しました。何故 静観することが出来なかったのかということです。
 天木直人氏のブログと日刊ゲンダイの記事を紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
全員で韓国叩きに走った14日朝のサンデーモーニングの衝撃
天木直人のブログ 2018年1月15日
 およそテレビの政治番組は、読売、フジ、NHKといった御用番組はもとより、リベラルを売りにしているものですら、時の政権を正面から批判しなくなったが、きのう1月14日朝のTBSサンデーモーニングには心底驚いた。
 日韓合意の見直しを求めた文在寅大統領の韓国を全員で袋叩きした。
 民主党政権を相手にするな、と米国務省に伝えていた事がウィキリークスで暴露されて大恥をかいた藪中元外務次官が韓国批判をするのは当たり前としても、関口宏をはじめとした全員が韓国批判をした(ただひとり、女性の人権重視はいまや世界的な動きだ、と語っていた女性解説者を例外として)

 リベラル役を一手に引き受けている青木理ですら、奥歯に挟まったような言い方で、せっかく安倍政権は2年前に10億円の政府拠出をするという英断を見せたので、ここで日韓関係を悪化させるのはもったいない、などと、訳のわからない事を言っていた。
 いまや老醜が隠せなくなった田原総一朗に代わって電波芸者の後を継いだ観のする青木理の正体見たりだ。
 どうして、「あの日韓合意はいかさまだった。だから、朴槿恵政権の失脚と共に韓国国民の手で無効にされるのは当然だ」、と言い切る者がただの一人も出て来ないのか。
 そう思っていたら、今朝の読売新聞を見て驚いた。
 安倍首相の追加要求拒否を支持する世論が83%だという。
 韓国を信頼できないとする世論が78%であるという。
 読売新聞の世論調査であることを割り引いても、この世論調査の数字は異常だ。
 私のような事を言っている者は排除される事になる。
 まさしく一億総安倍首相化だ。

 安倍政権が、こんなに間違った政策を繰り返していても、それでも政権に留まっていられる理由がここにある(了)


日韓合意の反故を非難 感情論に走る安倍政権の大人げなさ
日刊ゲンダイ 2018年1月14日
 韓国の文在寅政権が慰安婦問題に関する日韓合意を事実上、反故にしたことに安倍政権はカンカンだ。12日はとうとう、トップの安倍首相自ら韓国の新方針を初めて批判。「韓国側が一方的にさらなる措置を求めることは全く受け入れられない」と露骨に不快感を表した。

 菅官房長官は「合意は1ミリたりとも動かさない」と青筋を立て、河野外相は「政権が代わっても責任をもって(合意を)実施しなければならない」などと激しく非難した。外務省幹部も「合意を変更しようとするのであれば、日韓関係が管理不能となる」と繰り返し抗議しているという。
 政府内では韓国側の新方針への対抗措置とばかりに、2月9日に開かれる平昌冬季五輪の開会式への安倍首相出席に慎重論が強まっているが、ちょっと感情的になりすぎではないか

 そんなに韓国政府に合意の長期的な順守を求めるなら、なぜ安倍政権は条約の形式を取って国会で審議し、日韓両国の立法府も巻き込んだ合意を形成しなかったのか。日韓合意は2015年12月28日、年末のドサクサに日韓両外相が共同会見を開いて発表しただけ。合意内容について公式な文書すら交わしていなかったのだ。
「日本政府が今も問題視する慰安像の撤去についても、合意内容は韓国外相が口頭で『適切に解決されるよう努力する』と語るにとどまりました。『努力』なんて、いかにも玉虫色の表現ですが、それを『了』とし『最終的かつ不可逆的な合意』と言い張ったのは安倍首相なのです」(元外交官の天木直人氏)

■やっつけ仕事をタナに上げ
 いかにも「やっつけ仕事」の合意に至ったのは、日韓両政府とも当時のオバマ米大統領の強い要請に嫌々ながら従ったに過ぎなかったからだ。当時、慰安婦問題をめぐり完全に冷え切っていた日韓関係を懸念したオバマの「仲裁」という名の「命令」により、安倍政権は渋々「謝罪」を口にしただけなのである。
 ぞんざいな合意をタナに上げ、怒りに任せて韓国政府に激しい言葉をぶつけるとは、この政権はつくづく大人げない。

「新方針には『被害者らの名誉・尊厳の回復と心の傷の癒やしに向けた努力を継続することを期待する』とあり、文大統領も元慰安婦への謝罪などを要求しています。ただし、その主語はあくまで『日本』であり、『日本政府』ではない。『日本社会』とも受け取れる表現にとどめることで、日本政府の見解に異を唱えたわけではないという文政権の配慮がうかがえます」(外交事情通)

 安倍政権は文政権の心配りをむげにし、韓国国内の一部反日勢力の慰安婦問題をめぐる感情論と同じ土俵に立つつもりなら、愚かだ
 例えは悪いかもしれないが、国と国との「合意」を一方が反故にするのは離婚交渉に似ている。昨年、松居一代のエキセントリックな言動にダンマリを貫いた船越英一郎を見習って、安倍首相も静観すべきではないか。欧州歴訪中に北朝鮮への圧力最大化を呼びかけるなら、なおさらだ。安倍自身が唱える北包囲網には韓国の協力が不可欠。日韓両国にすきま風が吹けば、金正恩を喜ばせるだけである。