2018年1月27日土曜日

安倍首相が一転 平昌出席 その裏に朴前大統領への私信

 安倍首相平昌五輪の開会式に出席することにしたのは、ぺンス米副大統領が米選手団長として出席することになったからだと言われていますが、パフォーマンスが好きな首相は本当は出たかったので、いい口実になったのだという説も有力です。

 それはともかく26日付の日刊ゲンダイが、2015年の日韓合意に当たり、安倍首相が当時の朴槿恵大統領宛に〈慰安婦問題については個人的に謝罪する〉、〈日韓合意を実現できるのであれば、50回でも100回でも謝罪する〉という文面の私信を出していたことを報じました。
 何とも頭の中がショートしそうな話です。
 一国の首脳が他国の首脳に私信を出すというのは、「おおっぴらには出来ないが私の本心はこうです」という心情などを記すものでしょうから、「慰安婦問題については100回でも謝罪する」というのが本心ということになります。
 そうすると小泉内閣時代に官房長官として登場するや否や、「慰安婦を軍部が強制したことを裏付ける資料はない」ことを口実に、今日に至るまで一貫して「慰安婦問題は存在しない」と主張し続けているのは一体何なのかということになります。
 彼のように二面性を持つ人間は、自分は本当は「それはA」だと思っているが、事情があって「それはB」だとして振る舞うということはあり得ますが、いくらなんでもそのことを当の相手国のトップに私信で打ち明けるなどは、あり得ないことです。
 そうであれば、私信を読んだ朴氏が拙速にあの「日韓合意」に到ったのも何となくわかるような気がします。そして私信を読んだ文大統領が合意は無効とまでは言わないものの、合意に至る過程に誤りがあり見直すべきだと明言するのには道理があります。
 日刊ゲンダイの記事を読んだ天木直人氏は、あのとき河野外相が「非公開の合意をばらすのは信義違反だ怒り狂い、日韓合意を破棄しようとするなら日韓関係はマネージ不能となるとまで言った」ただごとでない反応をしたことに合点がいったと述べました。
 いずれにしても、ペンス副大統領と日本で会談し連携強化をアピールして訪韓し、日韓合意をひっくり返し南北融和に傾く文在寅大統領に、ガツンとモノ申すというようなストーリーを日本側(やネトウヨ)が描いているとしたら大間違いで、そんな立場にはありません。
 日刊ゲンダイは27日の続報記事で、慰安婦問題は解決済みと強調するほど日本が不利になるというのが国際社会の見方であるとし、韓国社会で安倍首相ほど嫌われている日本の現役政治家はいないという記者の見方を報じました。
 日刊ゲンダイの2本の記事と天木直人氏のブログを紹介します。
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安倍首相が一転…平昌出席の決定打は朴前大統領への私信
日刊ゲンダイ 2018年1月26日
 韓国が慰安婦問題に関する日韓合意を事実上ホゴにした“報復措置”として、要請された開会式出席を拒んでいたのが一転、安倍首相は「事情が許せば平昌五輪の開会式に出席したい」と言い出した。親密メディアを利用して“新次元”の強気外交の演出に必死だが、裏にはのっぴきならない事情が見え隠れする。
■文在寅政権が切った“最強カード”
 アベ発言の伏線は官邸と近い産経新聞(24日付)に掲載されたインタビュー記事だ。国会会期中にもかかわらず単独取材に応じ、日韓首脳会談を念頭にこう気炎を上げていた。
 〈日韓合意について、韓国側がさらなる措置を求めることは受け入れることができません。この考え方について、大統領に直接伝えるべきだと考えています〉
 〈北朝鮮への圧力を最大化していく方針はいささかもぶれてはならない。この考え方も文大統領に明確に伝えたい〉
 開会式に出席する米国のペンス副大統領と日本で会談し、連携強化をアピールして訪韓。日韓合意をひっくり返し、南北融和に傾く文在寅大統領にガツンとモノ申す――そんなストーリーを描いている。
 「内閣支持率は下落傾向で、世論もおおむね開会式出席を是としている。当初、開会式出席に難色を示していた米国からGOサインが出たこともあり、訪韓は支持者向けのパフォーマンスにもうってつけだと判断したようです」(官邸事情通)
 一方、韓国は文在寅政権が切った“最強カード”が奏功したとほくそ笑んでいる。それは、安倍首相が朴槿恵前大統領に宛てた文書だという。
 「朴槿恵前大統領が弾劾訴追で青瓦台を追われたドサクサに紛れ、文在寅政権が入手した機密文書の中に安倍首相が朴槿恵氏に宛てた私信があり、〈慰安婦問題については個人的に謝罪するといった文面が記されていたと聞きます。慰安婦問題の解決を急ぐ安倍首相が日韓合意の早期実現のために送ったようで、〈日韓合意を実現できるのであれば、50回でも100回でも謝罪するとも伝えていたようです。朴槿恵氏は尹炳世前外相の忠告に耳を貸さず、一気に合意の道筋をつけた。“アベ私信”を手にした大統領秘書室は大喜びで、日韓合意の見直しを後押ししたのです」(外交関係者)
 韓国がまとめた日韓合意の検証結果報告書は非公開部分に言及している。それに河野外相が噛み付き、「報告書に基づいて合意を変更しようとすれば、日韓関係がマネージ不能となる」と大騒ぎしたのも妙に合点がいく。
  安倍首相の強気パフォーマンスは、“最強カード”を手にした文在寅の揺さぶりを招きかねない。
安倍首相が日韓合意見直しに激怒した本当の理由
天木直人のブログ 2018年1月26日
 きのうの日刊ゲンダイ(1月26日号)が、官邸事情通の話として、安倍首相の突然の平昌五輪出席宣言の背景について、こう書いている。
 「内閣支持率は下落傾向で、世論もおおむね開会式出席を是としている。当初、開会式出席に難色を示していた米国からGOのサインが出た事もあり、訪韓は支持者向けのパフォーマンスにもうってつけだと判断したようです」と。
 やはり日刊ゲンダイもパフォーマンスと見透かしている。
 そして、米国との関係では、米国の命令ではなく、米国の許可が下りたというわけだ。
 しかし、私がこの日刊ゲンダイの記事で注目したのは、こう書いていた部分である。
 すなわち、朴槿恵前大統領が弾劾で青瓦台を追われたドサクサの中で、在文寅政権が入手した機密文書の中に、安倍首相が朴槿恵前大統領に宛てた私信があったという。
 そこには「慰安婦問題については個人的に謝罪する」という文面があったという。
 つまり、慰安婦問題の解決を急ぐ安倍首相が日韓合意の早期実現の為に私信を送り、そこには、さらに、「日韓合意を実現できるのであれば、50回でも100回でも謝罪する」、とまで書かれていたというのだ。
 この安倍私信を手にした朴槿恵大統領秘書は大喜びし、日韓合意を急いだという。
 そして、この驚くべき事実が、文在寅政権になって出来た検証作業部会の報告書の非公開部分の中に書かれているというのだ。
 これで合点が行った。
 あの時、河野外相は、非公開の合意をばらすのは信義違反だ怒り狂った。
 日韓合意を破棄しようとするなら、日韓関係は「マネージ不能となる」とまで言った。
 こんな反応はただ事ではない。
 ただ事でない機密がばらされていたから異例な反応をしたのだ。
 果たして大手メディアは、この日刊ゲンダイが書いた安倍首相から朴槿恵大統領に宛てられた、「50回でも100回でも謝罪する」と伝えた私信について、調査報道してくれるのだろうか。
 野党はこの日刊ゲンダイが教えてくれた仰天情報について、国会で追及してくれるだろうか(了)
文在寅大統領が笑う 安倍首相の「日韓合意」平昌殴り込み
日刊ゲンダイ 2018年1月27日
 安倍首相の平昌五輪開会式への出席をめぐり、首相周辺が大騒ぎしている。韓国が事実上ホゴにした慰安婦問題に関する日韓合意をヤリ玉に挙げ、自民党外交部会では「日本が容認していると誤ったメッセージを送ることになる」「政治利用されるだけだ」などと反対論が噴出。党本部や官邸には安倍首相の支持者らから抗議電話が殺到しているという。
 「官邸の狙い通りです。外交部会の紛糾は官邸の思惑をくんだヤラセで、安倍首相支持者向けのガス抜き。出席拒否をチラつかせて文在寅政権を揺さぶったつもりが、米国の意向もあって行かざるを得なくなった。しかし、アッサリ翻意では格好がつかない。それで、異論が高まる中、文在寅大統領に直談判するために乗り込む、というシナリオを練ったのです」(官邸事情通)
  韓国大統領府は「日本側が訪韓計画を公式表明したことを歓迎する」と声明を出したが、文在寅大統領は腹の中でせせら笑っているようだ。大統領選中から文在寅氏のブレーンを務める世宗大学教授の保坂祐二氏が25日、出演した韓国CBSラジオで安倍首相の動向をこう評していた。
〈慰安婦問題を理由に平昌に行かなければ、批判の矛先が日本に向く恐れがあるとの助言があったと理解している〉
 〈話はするだろうが、強調はしないだろう。強調するほど日本が不利になる国際社会の視線がある
  
 つまり、文在寅政権は安倍首相が拳を振り上げているのはポーズに過ぎないと見抜いているのだ。
  現地で取材する国際ジャーナリストの太刀川正樹氏はこう言う。
 韓国社会で安倍首相ほど嫌われている日本の現役政治家はいません。朝鮮民族をイジメ抜いた岸信介元首相の孫にあたる上、韓国を見下したような横柄な態度を取るので、思想の左右を超えて忌み嫌われている。そんな人物がやって来て、世論が猛反発する日韓合意に言及しようものなら、反日デモに発展しかねません」
 一部メディアは「平昌出席で殴り込み」と報じたが、アウェーで堂々突き上げを食らうか、尻尾を巻くか。見ものである。