2018年1月8日月曜日

08- リニア「国策化」の怪しいプロセス(日刊ゲンダイ)

 別掲の記事でも触れましたが、いま話題のリニア中央新幹線の建設計画は、当初からJR東海が全額自己負担を原則に進めてきたもので、政府もリニア計画に長年距離を置いてきまし
 ところが安倍政権になって着工を許可した2014から政府が口を出し始め16年7月の参院選公約にリニア大阪延伸の前倒しや整備新幹線の建設などのため、官民合わせて「5年で30兆円」の資金を投じることを掲げました。
 そして同年11月には法改正し、すでに約3兆円がJR東海に貸し出されています。因みにJR東海のトップ葛西敬之氏は安倍氏の応援団長=後見人として知られている人です。

 日刊ゲンダイは「リニア『国策化』の怪しいプロセス」としています。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
3兆円融資は“忖度”か リニア「国策化」の怪しいプロセス
日刊ゲンダイ 2018年1月7日
 東京地検特捜部が全容解明に向けて捜査を進めている「リニア疑惑」事件が今年、本番を迎える。総工費9兆円の巨大プロジェクトを巡る疑惑には、単なる「入札談合」では片づけられない「闇」が横たわっている。どう考えたって安倍政権のヨコシマな思惑への忖度がはたらいたとしか思えない――。そんな構図が浮かび上がってくるのだ。

 そもそもリニア中央新幹線の建設計画は、JR東海が全額自己負担を原則に進めてきた。政府もリニア計画に長年距離を置いてきたが、安倍政権がくちばしを入れ始めたのは、国が着工を許可した2014年のこと。
「JR東海が自力で行うとしていることも勘案しつつ、要望を受けて対応を考えていきたい」
 当時、世耕弘成官房副長官は、関西経済連合会のリニア新幹線「国家プロジェクト化」と「大阪・名古屋同時開業要望」に対し、そう語っていた。

「リニア大阪延伸の前倒しは関西財界の悲願でした。その意向を受けて積極的に“ロビー活動”を進めたのが、松井一郎大阪府知事であり、大阪市長時代の橋下徹氏です。2人は安倍首相と菅官房長官と定期的に会食する仲。その席でもリニア前倒しの話題を何度も伝えていたようです」(関西政界関係者)
 リニア大阪延伸の前倒しを決断したのは、ほかならぬ安倍首相だ。16年6月の「骨太の方針」の中で、国が低利で資金を貸し出す「財政投融資」を活用した財政支援を表明。さらに自民党は同年7月の参院選公約に、リニア大阪延伸の前倒しや整備新幹線の建設などのため、官民合わせて「5年で30兆円」の資金を投じることを掲げた。

 加えて同年11月には法改正し、リニア建設に財政投融資を活用できるようにした。その結果、すでに約3兆円がJR東海に貸し出され、大阪までの全線開通時期を当初計画の2045年から最短で8年前倒しされることになった。

■維新の要望の見返りに……
 安倍政権が横から口を挟み、成長戦略に取り入れたことで、リニア計画は文字通り「国家プロジェクト」に格上げされたのだ。政府が静観していたはずの民間の事業が、なぜ「国策」に格上げされ、法をねじ曲げてまで3兆円の国費を投じたのか。ここに、政権の意向をくんだ官邸や国交省などの「忖度」がはたらく余地がありそうなのだ。

「安倍政権が巨額の国費を貸し付けてまで、リニア大阪延伸の前倒しにこだわるのは、まず日本維新の会を味方につけたいためでしょう。リニアを含め、『大阪万博誘致』『大阪・夢洲のカジノ計画』という維新が公約に掲げた3点セットを支援する見返りに、政権運営で維新の協力を引き出す思惑です。事実、維新は与野党対立法案に軒並み賛成し、もはや政権の補完勢力です。9条改憲に公明党が難色を示す中、安倍政権と維新の蜜月はますます深まりそうです」(政界関係者)

 リニア建設は南アルプスの巨大トンネルなど難工事が目白押し。ただでさえ建設業界全体が土木技術者の人手不足に悩まされる中、国がムリを重ねて工期まで縮小すれば、現場は地獄の苦しみである。もはや大手ゼネコンのキャパシティーさえ超え、業界関係者からは「限られた工期、対応できる業者の少なさ、工事の安心・安全などを考えれば、業者間の調整も仕方がない」という開き直った声も聞こえる。安倍首相のヨコシマなリニア国策化が談合の温床を生み出してもいるのだ。

 特捜部も野党も大手メディアも、「リニアの闇」に鋭いメスを入れるべきである。