2017年12月26日火曜日

北朝鮮 安保理追加制裁を戦争行為と非難

 国連安保理は22日、北朝鮮が11月に新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射したことを受け、同国に対する追加制裁決議案を全会一致で採択しました。同決議は北朝鮮への石油精製品輸出を年間50万バレルに制限することで同国への輸出の約90%を禁止するほか、北朝鮮の海外出稼ぎ労働者の24カ月以内の本国送還を求めるもので、厳格に実施されれば北朝鮮の息の根を止めかねないものです。
 
 それに対して北朝鮮外務省は24日、声明を出し「米国とそれに追随する国が策定した制裁決議は北朝鮮の主権に対する重大な侵害であり、朝鮮半島や地域の平和と安定を乱す戦争行為だとみなすとともに、断固として決議を拒否する」「この制裁決議を支持した国々は、決議で生じたすべての結果の責任を負うことになる」と宣言しました。

 平壌の1月の平均最低気温は氷点下107度(北海道の釧路 氷点下104度)、気象観測史上最低は氷点下302度、近年も2001年1月には氷点下26.5度を記録していて、灯油がなければ国民は冬を過ごせません。世界は北朝鮮の国民数百万人が凍死しても仕方がないという考え方なのでしょうか。

 国連が制裁を課す根拠は、2006年7月5日北朝鮮がミサイルを発射したことに対して、同月16日に行った国連安保理決議1695と、同年10月9日に北朝鮮核実験を行ったのに対して同月14日に行った国連安保理決議1718で、北朝鮮に対しこれ以上の核実験弾道ミサイルの開発・発射の中止を求め、核拡散防止条約NPT)国際原子力機関IAEA)への復帰を要求するというものです(いずれも小泉政権下の日本が主導しました)。
 しかし、核拡散防止条約にしてもミサイル開発禁止にしても、一部の国は所有し開発することが容認されるが北朝鮮はダメだという不公平なもので、納得の上で核拡散防止条約条約に加盟している国などはいざ知らず、北朝鮮にすれば理不尽なものであって、とても容認できないものです(北朝鮮はNPTとIAEAから離脱しています)

 現に、世界は北朝鮮の核実験やミサイルの試射を「挑発」として非難する一方で、米国軍のその名も「地球規模攻撃軍団」が今年4月にカリフォルニア州の基地からICBM(ミニットマンIII)を発射し約7000キロ離れたマーシャル諸島の環礁近くに着弾させた時には、北朝鮮への威嚇・挑発に対して何一つ抗議をしていません。年に何回も北朝鮮の領海や領空近くで行っている米韓の軍事演習に対してもそうです。
 米・朝の力関係や、アメリカによって攻め滅ぼされたイラクの帰趨をみれば、北朝鮮の核とミサイルは自国防衛上のものであるのは明らかです(このことは金王朝の是非論とは無関係のものです)。

 天木直人氏が「石油禁輸制裁決議は戦争行為であるという正論」と題した記事を出しました。同氏は、
国の存在を脅かす厳しい制裁措置は事実上の宣戦布告であり、今度の国連安保理制裁決議は、もしそれを世界各国に徹底させようとすれば、北朝鮮を暴発に追い込むことになるが、世界の先頭に立って米国にそれをけしかけ、今度の決議称賛しているのが、日本の安倍首相である。これほど憲法9条違反の首相はいない
と述べています。いつもながら短い文章ですが正論です。

 ロイター通信の記事と天木直人氏のブログを紹介します。
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北朝鮮、安保理追加制裁を戦争行為と非難 「制裁支持国に報復」示唆
ロイター通信 2017年12月25日
北朝鮮の外務省は24日、国連安全保障理事会が採択した追加制裁について、戦争行為であり、完全な経済封鎖に等しいとした上で、追加制裁を支持した国に報復すると警告した。国営の朝鮮中央通信社(KCNA)が外務省の声明を伝えた。

安保理は22日、北朝鮮が11月に新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射したことを受け、同国に対する追加制裁決議案を全会一致で採択した。同決議は北朝鮮への石油精製品輸出を年間50万バレルに制限することで同国への輸出の約90%を禁止するほか、北朝鮮の海外出稼ぎ労働者の24カ月以内の本国送還を求めるもの

北朝鮮外務省は声明で、「米国は北朝鮮の核戦力を恐れ、北朝鮮にかつてないほど厳しい制裁と圧力を加えることに熱狂している」と非難。「われわれは、米国とそれに追随する国が策定した制裁決議は北朝鮮の主権に対する重大な侵害であり、朝鮮半島や地域の平和と安定を乱す戦争行為だとみなすとともに、断固として決議を拒否する」と宣言した。
外務省はさらに「この制裁決議を支持した国々は、決議で生じたすべての結果の責任を負うことになる」とし、「われわれはこれらの国に確実に重い代償を払わせる」と警告した。
今回の決議には北朝鮮の後ろ盾となってきた中国とロシアも賛成した。

中国政府は23日、追加制裁は対話を通じた平和的な問題解決の必要性を強く示していると説明するとともに、すべての当事者は緊張を和らげるための措置を講じる必要があるとの考えを示した。
韓国外務省はロイターに対し、追加制裁に関する北朝鮮側の発表は認識しているとした上で、追加制裁について、北朝鮮が挑発行為をすぐにやめ、非核化に向けた対話に応じる以外に選択肢がないとする国際社会の警告だと強調した。


石油禁輸制裁決議は「戦争行為」であるという正論
天木直人のブログ 2017年12月25日
 産経新聞をのぞいて、今日の各紙は一斉に報じた。
 北朝鮮外務省は24日、国連安保理決議について「朝鮮半島や地域の平和と安定を破壊する戦争行為」だと非難した報道官談話を発表したと。
 北朝鮮の非難談話はいつもの通りだ。
 しかし、なぜ今回に限って、「戦争行為」という言葉を各紙はわざわざクローズアップしたのか。
 それは「正論」であるからだ。

 日本があの太平洋戦争に突き進んだ最後の決め手は、経済包囲網、とくに生命線である石油の禁輸だったと皆が知っている。
 安保政策の専門家の間でも、国の存在を脅かす厳しい制裁措置は事実上の宣戦布告であるというのは常識だ。
 つまり今度の国連安保理制裁決議は、もし米国が本気でそれを中国、ロシアを含めた世界各国に徹底させようとすれば、それは北朝鮮を暴発に追い込む事に他ならない。
 それにもかかわらず、世界の先頭に立って米国にそれをけしかけ、今度の決議はこれまでにない強力なものだと称賛しているのが、日本の安倍首相である。
 これほど憲法9条違反の首相はいない。

 しかし、その事を政治家もメディアも有識者も、誰一人正面から指摘するものはいまの日本にはいない。
 いまや北朝鮮のする事、言う事は、100%悪になっている。
 北朝鮮がミサイルを発射するたびに、与野党全会一致の非難決議が繰り返されるほどだ。
 だから、今度の北朝鮮の「正論」も認めるわけにはいかないのだ。
 だから、せめて「戦争行為」という言葉をわざわざ強調して、北朝鮮の非難も一理あると言いたかったとすれば、あまりにも情けない。

 もはやこの国は、北朝鮮問題に関しては言論封殺状態だ。
 そんなことでは憲法9条が泣く。
 そう正面から唱える政治家やメディアや有識者が一人でも出て来ないようであれば、もはや日本には憲法9条はないのと同じである。
 安倍首相の自衛隊明記の改憲をめぐって大騒ぎすること自体が茶番になる(了)