2017年11月2日木曜日

今回の総選挙が戦後政治においてもっている意味(五十嵐仁氏)

 五十嵐仁氏が、今回の総選挙戦後の日本政治においてどのような意味を持っていたのかについて明らかにしました。
 五十嵐氏は要旨次のように述べています。

 これまで模索されてきた市民と立憲野党との共闘が新たな段階に達し、戦後日本政治の新局面を切り開いた
 2016年2月の「5党合意」や1人区での共闘など参院選への関与など新しい動きが始まり新潟県知事選や仙台市長選などで経験を積み重ねた。
 その結果が、衆院選でも市民と立憲野党との共闘が追求されることにつながり、選挙の直前に野党第1党の民進党が突然姿を消したときにも、即座に新たなリベラル政党を誕生させ躍進させることができた。
 そして立憲民主党の街頭演説はいたるところで聴衆の熱気にあふれ「左派ポピュリズム」に支えられて躍進した。
 これまでは維新の党や都民ファーストの会などの「右派ポピュリズム」はあったものの「左派ポピュリズム」まれたのは今回がはじめてである。
 これはアメリカ大統領選挙でのサンダース、フランス大統領選挙でのメランション、イギリス総選挙でのコービンなどによる「左派ポピュリズム」旋風と共通するものであり、ここに今回の総選挙が戦後政治においてもっている重要な意味があ
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今回の総選挙が戦後政治においてもっている意味
五十嵐仁の転成仁語 2017年11月1日
 先日、『しんぶん赤旗』日曜版の記者から取材を受けました。インタビューの記事は、11月5日付の日曜版に掲載されます。

 その時に、いくつかの質問を受けました。その一つが、「今回の総選挙は戦後の日本政治にとってどのような意味を持っていたのか」というものです。
 その問いに、このブログで少し詳しく答えることにしたいと思います。もちろん、もう少し時間が経たなければ正確な評価は難しい面もあるかと思いますが、現時点で私が直感的に理解した内容は以下のようなものでした。
 それは、本格的な市民政治の台頭ではないかということです。この間、模索されてきた市民と立憲野党との共闘が新たな段階に達し、戦後日本政治の新局面を切り開いたもので、共産党の議席減はそのための「生みの苦しみ」ではなかったのかと。

 2015年の安保法反対闘争で市民運動と政治との連携が始まりました。正確に言えば、派遣村や2011年の原発事故を契機にした脱原発・原発ゼロをめざす運動、特定秘密保護法反対運動などの流れを受け継ぎ、それまで政治に一定の距離を置いていた市民運動が本格的に政党や国会内での論戦と連動することになります。
 このような運動の中から「野党は共闘」という声が上がり、2016年2月の「5党合意」や1人区での共闘など参院選への関与など新しい動きが始まりました。その後も新潟県知事選や仙台市長選などでの経験を積み重ね、市民と立憲野党の共闘が発展していきます。
 そして、今回は政権選択にかかわる衆院選でも市民と立憲野党との共闘が追求され、各選挙区や地域で市民連合や共闘組織が作られました。こうして小選挙区で1対1の構図が作られようとした矢先、思いもかけない事態が生じたのです。

 共闘の重要な構成部分であった野党第1党の民進党が突然、姿を消しそうになったからです。市民も他の立憲野党も「一体どうなっているのだ」と、一時は茫然としたことでしょう。
 しかし、結果から言えば、このような政党政治の危機を救い、新たなリベラル政党を誕生させ躍進させることによって事態を収拾することに成功しました。安保法反対運動からの市民と立憲野党による運動と経験の蓄積がなければ、このような素早い対応は不可能だったでしょう。
「枝野立て」という市民の声に押されて立憲民主党が結成され、市民連合が政策協定を仲立ちして野党共闘を後押しし、これに共産党が積極的に応えて67選挙区で候補者を取り下げ、短期間に249選挙区で一本化が実現しました。市民のバックアップ(ツイッターの爆発的増大と9日で8500万円の個人献金)があり、街頭演説では国会前集会と同様の形式で熱気にあふれ、「左派ポピュリズム」に支えられて立憲民主党が躍進しました。

 これまで日本では維新の党や都民ファーストの会などの「右派ポピュリズム」はあっても、今回のような「左派ポピュリズム」の発生はあまりありませんでした。今回、それが生まれたのだと思います。
「ポピュリズム」とは既存のエスタブリッシュメントの政治への不信、エリートに政治を任せていられないという人たちの自発的な政治参加の波を意味しています。それが排外主義に向かえば右派、民主主義を活性化させれば左派ということになります。
 今回の総選挙では、希望の党による「右派ポピュリズム」の発生が抑制され、立憲民主党による「左派ポピュリズム」が生まれました。それは、アメリカ大統領選挙でのサンダース、フランス大統領選挙でのメランション、イギリス総選挙でのコービンなどによる「左派ポピュリズム」旋風と共通するものだったと言えるでしょう。

 国際的な政治の流れに呼応する新たな市民政治の局面が「左派ポピュリズム」の発生とう形で表面化し、立憲主義を守り民主主義を活性化させる新しい展望を切り開いたのではないでしょうか。ここにこそ、今回の総選挙が戦後政治においてもっている重要な意味があったように思われます。

 なお、11月の講演などの予定は、以下の通りです。お近くの方や関心のある方に足を運んでいただければ幸いです。
(後 略)