2017年11月3日金曜日

物価上昇率またも下方修正 それでも緩和を止められない

 消費税を10%に上げるために、無理やり見掛け上の物価上昇2%を達成させようというアベノミクスは、発想からして不健全です。
 この間、日銀は何百兆円という金を投じ、政府は国民の年金積立金にまで手を付けて株価を上昇させましたが、それは大金持ちや大企業に莫大な利益をもたらしただけで、国民の実質賃金は低下の一途をたどっています。

 そんな風にして必死に操作した円安でも、いまでは企業は外貨ベースの輸出価格下げないので、輸出向けの生産は増えず、雇用も増えず、賃金への波及もありません。企業としては為替差益的な手段で儲ければいいというわけです。
 それによって得られた儲けは、株の配当と内部留保に向けるだけで労働者への配分はありません。
 結局労働者には、円安で暴騰した輸入食料原料に起因する食料品の高騰や石油その他の輸入品の高騰だけが降りかかることになります。

 また官制相場で株価を吊り上げても政府はその株を手放すことは出来ないし、株購入の資金投入を止めることもできません。
 政府が介入していることを安心材料にして投資家たちは買いに走っているのが現状なので、政府が資金の投入を止める(そこが株価のピークになる)と分かれば、彼らは一斉に株を売り出し大暴落が生じます。
 そうなれば年金積立金で購入した株券も二束三文ということになります。
 それがいわゆるアベノミクスの「出口論」で、識者たちが当初から警告しているものです。

 安倍首相は選挙の時に「年金資金で株を運用して数十兆円儲けた」と豪語しましたが、政府は投資家と違って株の「売り抜け」が出来ないので、最後の段階で二束三文になるまで持ち続けなくではなりません。それが官制相場を張った者の宿命です。

 日刊ゲンダイが「物価上昇率またも下方修正 黒田日銀“緩和継続”の支離滅裂」とする記事を出しました。
 数百兆円を投じても見掛けの物価上昇すらも達成できていないのが現実です。
 何もかもが間違いの「安倍―黒田路線」(アベノミクス)で、その行く末に待っているのは想像を絶する悲劇です。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
物価上昇率またも下方修正 黒田日銀“緩和継続”の支離滅裂
日刊ゲンダイ 2017年11月2日
 もう、うんざり……。金融界からは冷めた声が聞こえてくる。31日、日銀は金融政策決定会合で金融政策の現状維持を決めた。同時公表の「展望リポート」では、2017年度の物価上昇率見通しを従来の1.1%から0.8%へ引き下げた。

「日銀は展望リポート(年4回)を出すたびに物価目標を下方修正しています。今回、黒田東彦総裁の最大目標である『2%の物価上昇』は『19年度ごろ』に据え置きましたが、これまで6回も先送りしています。次回の展望リポートで7回目の先送りをするかもしれません」(市場関係者)

 黒田総裁は31日の会見で、2%上昇について、「まだまだ遠い」と話し、大規模金融緩和の継続を強調した。株価上昇の効果をもたらすETF(上場投資信託)購入も続ける。日銀はすでに日本株を20兆円以上保有。ニッポンの大株主に君臨している。
日銀は株を買うばかりで、ほとんど売却していません。市場原理の働かない歪みきった市場だけに、海外投資家が日本を見捨てる日は必ず来ます」(金融関係者)

 第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストも言う。
日銀の審議委員を見ると、現在、株式市場に精通した人物はひとりもいません。人選が偏っている印象を受けます

■出口戦略に向かった途端に株は暴落
 今年7月までは野村証券やモルガン・スタンレー証券で活躍した2人が審議委員を務めていただけに、兜町からは「株価が上昇しているうちは問題ないが、下落したときが心配」(ネット証券)との声も聞かれる。

 金融政策そのものも不安だらけだ。米欧の中央銀行がそろって緩和縮小を打ち出すなか、日銀だけが緩和継続。しかも黒田総裁は2%上昇まで手を緩めるつもりがない。
「実際のところ、もはや日銀は緩和をやめられません。日銀が緩和縮小を打ち出した途端に、世界の株価が暴落しかねないからです。日米欧ともに出口戦略に向かうと、株式市場に流入する資金は減少します。これは間違いなく株安要因で、世界の金融界は、日銀の黒田総裁を非難するでしょう。黒田総裁はババを引かされたのです」(株式アナリストの黒岩泰氏)

 日本だけが金融緩和を継続すれば、円の価値は極端に下落し、輸入品は高騰する。その分、収入が増えればいいが、実質賃金は直近統計の8月まで3カ月連続で減少している。庶民生活は苦しくなるばかりだ