2017年10月8日日曜日

ノーベル平和賞 核兵器禁止条約の制定に努力したICANに

 今年のノーベル平和賞に、核兵器の廃絶を目指して活動し核兵器禁止条約が採択されるのに貢献した国際NGOICAN」=「核兵器廃絶国際キャンペーン」が選ばれました。

 ICAN(アイキャン)は2007年にオーストラリアのメルボルンで結成され、日・米・英など各国のNGOが加わって、日本被団協など各国の平和団体と連携し、核兵器廃絶を目指し政府代表への働きかけやキャンペーンを進めてきましたが、特に2013年から3回にわたって各国の政府代表が参加して開かれた「核兵器の非人道性を検証する国際会議」では、被爆者たちと協力しながら、核兵器が壊滅的な被害をもたらす非人道的な兵器であるという認識を国際社会に広めるのに貢献しました。
 そしてNPT=核拡散防止条約のもとでは核兵器はなくならないとして、条約で禁止することが必要だと各国政府に対して働きかけを進めた結果、国連本部で核兵器の開発や保有などを法的に禁止する「核兵器禁止条約」が議論され、今年7月、国連加盟国の6割を超える122の国と地域の賛成で採択されました。

 受賞を高く評価するしんぶん赤旗の記事と、受賞に沈黙する日本政府の立場を報じた日刊ゲンダイの記事を紹介します。
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ICANにノーベル平和賞 核兵器禁止条約の制定に努力
しんぶん赤旗 2017年10月7日
 2017年のノーベル平和賞が核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)に授与されました。ノルウェー・ノーベル委員会が6日、発表しました。
 ICANは核兵器禁止条約の制定などを訴えてきたNGO(非政府組織)の連合体。2007年にウィーンで旗揚げし、現在、日本を含む100カ国以上に組織があります。

 授賞理由の発表で同委員会は、「どのような核兵器の使用も人類に破滅的結果をもたらすことに注目を集める活動と、核兵器を条約に基づいて禁止することを達成するという前例のない努力」を挙げました。
「われわれの住む世界は、核兵器の使われる危険がこれまでになく大きくなっている」として、保有国の核兵器改良の動きや北朝鮮による核開発を指摘。ICANへの授賞は、核兵器保有国に対し核廃絶を真剣に交渉するよう求めるものでもあると強調しました。

 日本共産党の志位和夫委員長は今年3月、核兵器禁止条約の国連会議に出席した際、ICANのベアトリス・フィン事務局長、国際運営グループ共同議長の川崎哲(あきら)さんらと懇談し、条約の採択に向けた協力を確認。7月の国連会議の際には、条約の採択をともに喜び合いました。

受賞に拍手・歓声
 ノーベル平和賞発表の瞬間を生中継で見る集会(ピースボート主催)が6日、東京都新宿区内で開かれ核兵器禁止条約を推進したICANが受賞すると、会場は拍手と歓声に包まれました。
 被爆者の三宅信雄さん(88)は「被爆者と市民の長年の運動が認められたということです。大変意義がある」と喜びました。広島出身の女優・東ちづるさんは、涙を流しながら、「夢のよう。これを受け止め、日本が(核兵器禁止を)どのように発信していくかが問われている」とのべました。


ICANのノーベル平和賞受賞に日本政府が沈黙する理由
 日刊ゲンダイ 2017年10月7日
 核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のノーベル平和賞受賞。唯一の核兵器被爆国である日本は、真っ先に祝福のコメントを出してしかるべきだが、安倍晋三首相も政府も沈黙したままだ。
 これはICANが、日本政府が反対の立場をとっている核兵器の開発や使用などを初めて法的に禁止した「核兵器禁止条約」採択の原動力となったからだ。コメントを出したくても「出せない」というのが本当のところだろう。

 同条約には、米国をはじめとする核保有国が参加しておらず、日本は「核兵器国と非核兵器国の隔たりを深め、核兵器のない世界の実現をかえって遠ざける結果となってはならない」として不参加の立場をとっている。わかりにくい理由だが、要は「核の傘」を提供してくれる米国のご機嫌を損なわないように「忖度」して、反対しているだけだ。

 ICANの平和賞受賞の前日の5日、英国人作家カズオ・イシグロ氏がノーベル文学賞決定の際には、日系であるという理由だけで、安倍首相は「長崎市のご出身で、小さい頃に英国に渡り、作家活動を行ってきた。日本にもたくさんのファンがいる。ともに受賞をお祝いしたい」とでしゃばったコメントを出したばかり。対照的な平和賞に対する沈黙は、米国に隷属する安倍首相と政府の卑小さを浮き彫りにしている。