2017年9月23日土曜日

23- 子育て支援どころか孫・子の代にツケ 私利私欲の大義なき解散

 安倍首相は、支持率が暴落した8月はじめの内閣改造時には、PKO日報隠蔽にも触れ、「大きな不信を招く結果となった」と10秒近く国民に深々と頭を下げました。
 しかし、その後沈静期間が経過して何故か支持率が上昇すると、「加計問題について丁寧に説明する」という約束などはどこ吹く風、森友学園・加計学園疑惑隠しの「大義なき」解散に踏み切る作戦に転じました。正に党利党略私利私欲の解散です。

 安倍政権はこれまで社会保障費の膨張を防ぐと称して、生活保護費の切り詰めや介護費用の負担増加などの酷政を断行してきたのに、選挙で勝つためには背に腹は代えられないとばかりに、急に幼児教育・保育の早期無償化の実現や高等教育の負担軽減などを打ち出しました。ご都合主義もいいところです。
 それには当然莫大な予算が要るので、その分防衛費を削減するとかシロアリ(官僚天下り先組織への国費の配給)を退治するとか、所得税の累進課税率を改定するなどの対策が必要なのですが、それはやらないようです。

 経済学者の高橋乗宣氏は、
国の借金が軽く1000兆円を超える中、選挙の人気取りという目先の利益を追うだけの判断は、子育て支援とは逆に孫の代まで借金のツケを回すことになる。いかに解散に大義がないかは、こうした争点の急ごしらえでも分かる。今度の総選挙で国民は安倍首相の退陣を迫り、それを争点にしなければいけない」と述べています
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   日本経済一歩先の真相
子育て支援どころか孫にツケ…私利私欲の大義なき解散
 高橋乗宣  日刊ゲンダイ 2017年9月22日
 安倍首相が28日召集の臨時国会冒頭で衆院の解散・総選挙に踏み切るようだ。3カ月も国会を開かなければ、憲法の解散規定である内閣不信任の可決はできっこない。憲法上は異議のある「7条解散」に打って出るにも、現時点で民意を問うべき特段の事情はない。

 それこそ解散権の行使は、首相の祖父・岸信介元首相が締結に邁進した日米安保条約の改定のように重大な政治的課題が生じた場合や、国民に公約した基本政策を根本的に変更する場合に限られるべきである。
 そのような「大義なき」安倍政権の解散は、党利党略と私利私欲以外の何ものでもない。

 党利党略とは、野党が弱っているうちなら自民有利という安易な発想だ。民進党は離党者が相次ぐなど混乱続き。小池都知事の“同志”らによる新党結成は準備不足だ。今なら勝てると踏んでの判断のようだ。
 私利私欲とは露骨な「もり・かけ」隠しだ。臨時国会で安倍首相が森友問題、加計問題で再び野党の厳しい追及を受けるのは必至だ。ならば国会審議を遠ざけるという自己保身の考えである。

 安倍首相は通常国会閉会の際に、加計問題で「丁寧に説明する」と国民に約束。8月の内閣改造時には、PKO日報隠蔽にも触れ、「大きな不信を招く結果となった」と詫び、10秒近く国民に深々と頭を下げた。
 だが、殊勝な態度はそれっきり、約束した説明を反故にして「仕事人内閣」には「仕事」をさせる間もなく解散だなんて、国民への裏切りに等しい。国権を私物化しても平然としていられるとは、安倍首相の本性を見る思いだ。

 直近の内閣支持率の上昇も首相の背中を押したに違いない。支持率回復の背景には、軍事的挑発を繰り返す北朝鮮に対する強硬姿勢への有権者の好評価があるようだ。日本人は日露戦争の昔から、強硬論に流されやすい気質とはいえ、安倍首相は金正恩のふんどしを借りて相撲を取っているフシがある。

 大義なき解散という批判を封じ込めるため、安倍首相は消費税率10%の引き上げ分について、「借金返済から子育て支援へ」などという聞き心地の良い公約を掲げようとしている。幼児教育・保育の早期無償化の実現や高等教育の負担軽減などに充てる考えだが、大半は国の借金の穴埋めに使う財源の使途を変えてしまったら、財政再建はいっそう遠のく。

 国の借金が軽く1000兆円を超える中、選挙の人気取りという目先の利益を追うだけの判断は、子育て支援とは逆に孫の代まで借金のツケを回すことになる。いかに解散に大義がないかは、こうした「争点」の急ごしらえでも分かる。今度の総選挙で国民は安倍首相の退陣を迫り、それを争点にしなければいけない。

 高橋乗宣  エコノミスト
          (プロフィールは省略