2017年8月19日土曜日

19- 小池都知事は超右翼なのか

 最近民進党から抜けた長島昭久議員や細野豪志議員らはいずれ若狭勝議員が立ち上げた「日本ファーストの会」に合流するだろうと見られています。
 民進党代表選に立候補して議員票では優勢であるとされる前原誠司議員も、代表に選出された場合、小池都知事が実質的に率いている「日本ファーストの会」と理念が合えば協力すると語っています。
 またもしも代表選に敗れれば、彼を支持する一派を引き連れて民進党を離脱し、日本ファーストに合流するだろうと見られています。

 都議選で都民ファーストを圧勝させた小池都知事は抜群の選挙巧者ですが、不思議なことに都議選ではついに都民ファーストの政策を明らかにしませんでした。勿論その方が選挙に有利だと判断したからです。
 若狭勝議員が立ち上げた「日本ファーストの会」も政策を発表していません。政策は未定で、これから同士を募る中で固めていくという説明でしたが、当然小池都知事と相談したうえでそんなスタートを切ったのだと思われます。

 こんな風に何も政策を語らないながら「時の人」になっている小池都知事を東洋経済オンラインが取り上げました。
 全体的に比較的にサラっとした感じで書かれていますが、まず会の名称の「日本」を「にっぽん」と読ませているあたりは日本会議系を示唆しているとしています。
 そして憲法観については、彼女は先ず改憲手続きの憲法96条の改定に取り掛かろうとしたことと、2001年の段階で衆議院憲法調査会で「むしろ私は、一度、真っさらな段階から、我が国はこうあるべきだ、こういう方向を目指すのだといった形で書き直した方が早いのじゃないか、そういうスタンスを持っている」 と述べたことを明らかにし、ウルトラ(=超)右翼な憲法観を持っているとしています。

 そして都民ファーストの会の代表であるとともに都知事特別秘書(政策担当)を務め小池氏の右腕ともいわれる野田数氏が、都議時代の2012年に都議会に出された「日本国憲法の無効確認と大日本帝国憲法の復活を求める」請願の紹介者となったことを明らかにしています(記事では触れていませんが、野田数氏は日本会議系の日本教育再生機構の常務理事も務めています)。

 小池都知事についての基礎知識が得られます。
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小池都知事は「ウルトラ右翼の独裁者」なのか
「日本ファーストの会」に見えるその国家観
東洋経済オンライン  2017年8月18日
衆議院の早期解散がささやかれている。その原因となっているのが政治団体「日本ファーストの会」だ。7月にこの政治団体を創設した若狭勝衆議院議員は、10月10日までの新党結成を明言した。というのも、10月22日に衆議院選の投開票が行われるとするならば、この日は公示日となるからだ。

■「にほん」ではなく「にっぽん」
その「日本ファーストの会」は「にほんふぁーすとのかい」ではなく「にっぽんふぁーすとのかい」と読む。これは8月7日の会見で若狭氏がわざわざ断りを入れたもので、その目指す方向性を示したかったに違いない。保守で右系の最大級組織で、安倍晋三首相と近いとされる日本会議も、読み方は「にっぽんかいぎ」だ。自民党よりも右にウイングを伸ばした「たちあがれ日本」も、「たちあがれにっぽん」だった。
一方で「日本新党」や「日本共産党」は「にほん」と読み、「にっぽん」とは言わない。「日本社会党」や「日本未来の党」はこだわりがないようだ。なお「にほん」と「にっぽん」はどちらが正式なものなのかは決まっていない。ただ「にほん」よりも「にっぽん」と読むほうが古いらしい。NHKも正式な国号としての「日本」は、「にっぽん」としている。

こうして見ると、若狭氏が「にっぽん」にこだわったのは、保守層を意識している証拠だ。実際に若狭氏は会見で、「自民党に代わる保守の受け皿が必要」と述べている。
余談だが、森友学園問題で話題の人となった籠池泰典前理事長について次のように解説をする人がいた。「彼は日本会議のメンバーだというが、あの人は本物の右翼ではない、日本会議を『にほんかいぎ』と読んだからだ」。

さて気になるのは「日本ファーストの会」と小池百合子東京都知事との関係である。
「日本ファーストの会」と小池都知事の関係はどうなっているのか。若狭氏は会見で「小池知事は関係ない」と述べながらも、立ち上げたばかりの政治塾(輝照塾)の第1回の講師として小池知事を招き、「ファースト」という名称使用の件についても、「当然、小池知事の許可というか、『結構ですよ』という話になっている」と“関与”をほのめかした

小池知事も同日、「国政については若狭衆議院議員にお任せしている」と述べたが、「といいますか、改革の思いを、志を共有する」と言い直した。実質的支配権は小池知事にあるという意味だろう。
(「日本ファーストの会」の)背後に小池知事がいることは間違いない」。都政を取材する大手メディアの記者もこう話す。「ただ都知事である小池氏が国政について直接動くのはまずい。表向きには若狭氏にやらせ、うまくいくようなら要所要所で小池知事が出てくるだろう」。

■小池知事の憲法観は"ウルトラ右翼"
その小池知事は、その政治的キャリアをスタートさせたのは「日本新党」である。とはいえ、小池知事がリベラル政治家であるとは言いがたい。ずばり「保守党」にも在籍したことがある。さらに小池知事の右腕として「都民ファーストの会」の代表を務めているのが、都議時代の2012年に東京都議会に出された「日本国憲法の無効確認と大日本帝国憲法の復活を求める」請願の紹介者となった野田数氏だ。
この請願については同年9月18日の東京都総務委員会で、藤田裕司総務部長が中曽根康弘内閣時の1985年9月に大日本帝国憲法の改正手続きによって日本国憲法が成立し、法理的に問題ないとの答弁があったことを紹介。同請願は不採択になっている。

小池知事の憲法観もなかなかウルトラ右翼である。衆議院議員時代の2013年3月4日には、衆議院本会議でこのように述べている。「憲法の改正は国会にのみ認められた権限であります。その責任は、国会の構成員である国会議員が負うことになります」。
そして国権の最高機関である国会が憲法を議論することは「当然」としながら、まず改正に着手すべきところを「憲法改正条項である憲法96条」とした。そして全会に賛同を求めたのである。
憲法96条は、憲法改正発議には各議院の総議員の3分の2以上の賛成が必要とし、日本国憲法を硬性憲法たらしめるものだ。これを改正するということは発議を容易にすることで、小林節慶應大学名誉教授など学者から「憲法の破壊だ」と批判が強い。

もっとも憲法96条改正に意欲を示す安倍首相の目的は、憲法9条の改正だ。ところが小池知事の場合は、憲法改正の幅はもっと広い。たとえば2001年4月26日の衆議院憲法調査会で以下のように述べている。
「むしろ私は、一度、真っさらな段階から、我が国はこうあるべきだ、こういう方向を目指すのだといった形で書き直した方が早いのじゃないか、そういうスタンスを持っている一人でございます」
これはあたかも「革命」を求めているかのような表現にも読める。では現行憲法は改正すべき論を持つとして、小池知事が目指す行政とはどういうものなのか。

知事就任から1年経ち、その真相も見え始めている。たとえば「情報公開」についてだ。小池知事は昨年9月28日の所信表明で「都議会は密室ではない」と述べ、それまで自民党が牛耳っていた都政を批判した。今年の都議選でも情報公開を1丁目1番地と位置づけ、都議選で配布した“都民ファーストPRESS”には「『黒塗り』の公文書を改め、徹底的に情報公開します」と宣言した。
すでに前出の衆議院憲法調査会でも、小池知事はこのような発言もしている。
「憲法の中にどうしても本来は組み入れるべきではないかと思っているのが、情報公開でございます。(中略)今の政治と行政のさまざまな問題、これは多くの部分で、情報公開によってかなり前進する部分がある。そしてまた、透明性を持つ部分がある。そして、国民が政治、行政に対しての信頼を寄せる……」

■実は「自分ファースト」?
ところが都議選前に小池知事が判断した「豊洲移転・築地再開発方針」に関する議事録が残されていないことが判明。これをスクープした毎日新聞の記者が8月10日の会見で小池知事に質問したところ、小池知事は「政策判断だ」と答えるのみで、文書として残さなかった理由については述べなかった。
行政事実を記載した文書を黒塗りにするのは国民の知る権利を侵害するものだが、それは黒塗りを剝がせば足りる。しかし文書化しなければ、その事実が永遠に知らされることはない。ましてや小池知事は“ブラックボックス”だった築地移転問題に火を付け、知事に当選したという経緯がある。それなのに「側近との密室政治」を行おうとするのなら、それこそ「自分ファースト」との批判は逃れられない。

以上を踏まえて考えれば、「日本(にっぽん)ファーストの会」の名称はいかにも皮肉な様相を含んでいるのではないか。“若狭新党”がいまいち盛り上がらないのは、それゆえかもしれない。