2017年7月6日木曜日

安倍政権が佐川理財局長を国税庁長官に 税務調査で報復

 国税庁による税務調査はいわば経済面における査察権とでも呼べるもので、検察がいわゆる自由裁量権を発揮して睨みを利かしているのと同様に、国税庁もまた これまで政府に批判的な東京新聞(中日新聞)などへの報復として国税調査を繰り返すなどして来ました。査察の手法や問詰の仕方も検察と全く同様だということです。
 かつて民主党は税と社会保険料を一体的に徴収する「歳入庁」構想をマニフェストで謳い、民主党政権時代に具体化が検討されましたが、国税庁の持つうま味を失いたくない財務省は当然反対で、財務省の意向に逆らえない野田政権では実現しませんでした。

 森友・加計学園問題への野党の追求から安倍首相を守り切った財務省の佐川理財局長は、7月の人事で国税庁長官に抜擢されました。Literaによるとそれは単なる論功行賞ではなくて、忖度官僚の佐川氏であれば「阿吽の呼吸」でいわゆる安倍首相の政敵たちに睨みを利かせてくれるから・・という期待も込められているということです。

 安倍首相の不在中に加計学園問題を追及する閉会中審査を行うことに合意した民進党国対委員の間抜けぶりもさることながら、安倍政権の陰湿さには驚かされます。
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「深く反省」は大嘘! 安倍政権が“忖度官僚”佐川理財局長を国税庁長官に抜擢、税務調査で批判マスコミに報復
Litera 2017年7月4日
 歴史的大惨敗を喫した都議選の結果を受け、「深く反省」「丁寧に説明する」と語った安倍首相。だが、実際にはこの男はそんなことはつゆほども思っておいない。あいかわらず都合の悪いことは蓋をし、批判を強引に封じ込めようと、悪あがきを続けている。
 そのひとつのあらわれが、「安倍首相抜き」の閉会中審査だ。加計学園問題を追及する閉会中審査の開催と、前川喜平前文部科学事務次官の参考人招致が今月10日に決定したが、安倍首相が「7・8日に開かれるG20出席などのために5日から12日まで欧州に外遊予定」であることを理由に、「首相不在」で開催されることが確定してしまったのだ。
 もちろんこれは、安倍首相が閉会中審査に出席したくないため、官邸が無理やりこのスケジュールを打ち出した結果だ。

3日午前の党役員会の後、安倍首相も含む自民党の役員が話し合い、“閉会中審査に応じざるを得ない”との認識で一致したため、自民党は当初、首相が外遊から帰国したあとのスケジュールを調整していた。ところが、3日夜になって、官邸から首相の外遊中にやれ、という指示が来たため、竹下亘国対委員長があわてて民進党に“首相抜き”を提案することになった。民進党は拒否したが、官邸がこのスケジュール以外の閉会中審査には、頑として首をふらず、そのまま押し通してしまった。おそらくいま、安倍首相が閉会中審査に登場したら、火に油を注ぐ結果になるため、“安倍隠し”をはかったということでしょう」(全国紙自民党担当記者)

 本来、疑惑の張本人抜きの審議などあり得ない話だが、安倍首相は恥も外聞もなく、疑惑隠しのためにトンズラしてしまったのである。
 さらに、安倍政権の姿勢が露骨に読み取れたのが、佐川宣寿理財局長の国税庁長官への抜擢だ。周知のように、佐川氏は森友学園への国有地売却をめぐって、国会答弁で事実確認や記録の提出を拒み続け、「官邸の意を受け真相解明を妨害した」と批判されていた人物。そんな人物を安倍政権は事実上、財務省の事務方ナンバー2に抜擢したのである。

森友疑惑隠しとパワハラ常習の佐川局長を国税庁トップに抜擢した意図
 佐川局長の国税庁長官抜擢は、マスコミからも「事実を隠蔽して首相を守ったことへのごほうび人事」「官邸の意向に従えば、嘘をついても出世できるのか」と厳しい批判が飛び交っている。
「今回の人事では、他にも、宗像直子首相秘書官が女性初の特許庁長官就任、菅官房長官秘書官を務めた矢野康治財務省主税局審議官が同省官房長に異例の抜てきをされた。ようするに官邸の言うことをなんでも聞く忠犬だけが要職につけるという、安倍政権の典型的な人事と言えるでしょう」(財務省関係者)

 しかし、この人事には、論功行賞以外にもうひとつ、意図があるといわれている。それは、マスコミへの報復と、批判封じ込めだ。
 周知のように、国税庁長官は、税務調査権という絶大な権力をもち、企業を震え上がらせている存在だ。
 一方、佐川局長は以前、「週刊文春」でも報じられたが、財務省では典型的な忖度官僚であると同時にパワハラ官僚として知られている。
「とにかく上の意向には絶対にさからわず、その命令をどんなことをしても実行しようとする。一方、部下に対しては、人間扱いしないし、逆らうものは徹底して干し上げる恐怖支配を平気でやる。部下を怒鳴りつけたり、人格批判をすることもしょっちゅうです。財務省では、『恐竜番付』なるパワハラ上司ランキングをつくっているんですが、それの上位に必ず入っている」(財務省担当記者)

 つまり、佐川局長を国税庁長官に就任させることで、安倍批判をしてきたマスコミに徹底的に税務調査をかけさせるつもりではないか、というのだ。
 これは陰謀論でも過剰反応でもない。事実、国税庁は親玉である財務省のスキャンダルや増税反対キャンペーンなどを張った報道機関や記者に対しては、厳しい税務調査を行うことで“報復”してきた。
「報復調査のときの国税のやり口はすさまじいですからね。新聞販売店への押し紙や奨励金など、新聞社のブラックボックス部分を突いてくるのはもちろん、記者の出した領収証を1枚1枚チェックして、いったい誰と会ったのかを厳しく調査するんです。調査は長期に及び、日常業務にも支障が出てくるし、記者の人脈や情報源が筒抜けになってしまう」(全国紙元国税担当記者)

東京新聞が受けていた、ありえない税務調査の嫌がらせ
 直近でもっとも露骨だったのは、2011年から2012年にかけての東京新聞(中日新聞)に対する調査だ。財務官僚に籠絡され、消費財増税へとひた走ろうとしていた当時の民主党・野田政権に対して、東京新聞は〈野田改造内閣が発足 増税前にやるべきこと〉〈出先機関改革 実現なくして増税なし〉などの社説で真っ向から批判を展開していた。すると、半年以上の長きにわたる異例の“調査”が入り、約2億8600万円の申告漏れが指摘されたのだ。
 中日新聞と東京新聞は2016年にも、再び大規模な“調査”を受けている。このときは大きな不正はほとんど見つからなかったが、取材源秘匿のため取材先の名前を公開しなかった領収証を経費として認めないなど、重箱の隅をつつくような調査で、約3100万円の申告漏れを指摘された。しかも、こんな少額の申告漏れにもかかわらず、国税当局はこの情報を他のマスコミにリークして記事にさせている。
2016年の調査は、官邸の意向を受けてのものと言われていましたね。2015年の安保法制強行採決や米軍基地問題での東京新聞の批判に、官邸が激怒し、国税を動かしたのではないか、と」(全国紙政治部記者)

 もちろん、こうした目にあっているのは東京新聞だけではない。マスコミが財務省の政策批判や不祥事報道に踏み込んだあとには、必ずといっていいほど、税務調査が入っている。
 たとえば、90年代終わり、それまで絶対タブーだった旧大蔵省にマスコミが切り込み、ノーパンしゃぶしゃぶ接待など、汚職事件の端緒を開いたことがあったが、その少し後、2000年代に入ると、国税当局は一斉に新聞各社に税務調査を展開した。
 2007年から2009年にかけても、朝日、読売、毎日、そして共同通信に大規模調査が入り、申告漏れや所得隠しが明らかになっている。この時期は第一次安倍政権から福田政権、麻生政権にいたる時期で、マスコミは政権への対決姿勢を明確にし、官僚不祥事を次々に報道していた。これらの調査はその“報復”ではないかと指摘された。
 さらに、東京新聞に大規模調査が入った2011年には、やはり消費増税に反対していた産経にも“調査”が入っている。また、2012年3月には朝日が2億円超の申告漏れを、4月には日本経済新聞が約3億3000万円の申告漏れを指摘された。

 また、税務調査による報復は、新聞やテレビだけではなく、週刊誌にも向けられてきた。
財務省のスキャンダルをやった週刊誌の版元の出版社もことごとく税務調査で嫌がらせを受けてますね。それどころか、フリーのジャーナリストのなかにも、財務官僚のスキャンダルを手がけた後に、税務調査を受けたという人が結構います。年収1千万円にも満たないようなフリーに税務調査が入るなんてことは普通ありえないですから、これは明らかに嫌がらせでしょう」(週刊誌関係者

財務省内でも反発の声が上がっていた佐川局長の人事を官邸が強行
 ようするに国税庁はこれまでも、平気で税務調査を使ってメディアに政治的圧力をくわえてきたのだ。それに加えて、今回、前述したように官邸の言うことならなんでも聞く、忖度&パワハラ体質どころか憲兵的な体質のある、官僚の佐川氏が国税庁長官になる。もっと露骨な報復と圧力が展開されるのは火を見るより明らかだろう。
「官邸も明らかにそういう意図があると思いますよ。理財局長から国税局庁への抜擢というのは、これまではめったになかったのですが、第二次安倍政権以降は理財局長から国税庁長官というパターンが続き、財務省内部からも異論が出ていた。前任者の迫田氏のときも強い反対があったのですが、森友学園への国有地売却に骨を折った論功行賞なのか、官邸が強行した。しかし、今回はこれだけ批判が集まった後ですからね。佐川氏を国税庁長官に抜擢したら、4代続けて理財局長からの国税庁長官という前例のない人事になるうえ、森友学園のことがあったのでマスコミからも批判を受けることがわかりきっていた。それでも、佐川氏を国税庁長官にしたのは、佐川氏なら阿吽の呼吸でマスコミへの報復調査をやるだろうと考えたからでしょう。そして、国税が脅しあげれば、マスコミは再び黙るはずだ、と」(国税担当記者)

 マスコミはいま、都議選の結果を受けて、一斉に安倍政権批判の声を上げ始めているが、安倍政権は再びかつてのような圧力をかけるチャンスを虎視眈々とうかがっている。実際、先に紹介した報復調査のときは、そのあと、ほとんどすべての新聞・テレビが財務省スキャンダルの追及や消費増税批判キャンペーンをやめてしまった。
 そんな事態が再現されないよう、マスコミは安倍政権を権力の座から完全に引きすりおろすところまで、徹底的に追及しなければならない。(野尻民夫)