2017年7月20日木曜日

隠蔽加担の稲田防衛相に与党からも更迭要求

 南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣されていた陸上自衛隊の部隊が作成した日報が、「廃棄した」とされた後も陸自内で保管されていた問題で、陸自内の文書の存在について対応を協議した省内の幹部会議に、稲田朋美防衛相が出席していたことが、19日、朝日新聞、毎日新聞、東京新聞などや地方紙(共同通信配信)に一斉に掲載されました。

 朝日新聞は、稲田氏の出席の下で開催された幹部会議で非公表が決まった=稲田氏が隠蔽方針を了承した=ことを、目下省内で組織的な隠蔽があったかを調べている防衛監察本部に対し、陸自が報告していると伝えています。
 産経新聞は、稲田氏が19日、記者団に対し自らが「隠蔽」に関与したとの見方を強く否定し、2月15日に「緊急幹部会議」があった事実もないと述べたと報じる一方で、防衛省・自衛隊内で求心力を失っている稲田氏が格好のスケープゴートになったとの見方を示しました。

 来週の閉会中審査を前にこうして稲田氏に対する絶好の攻撃材料が提示されたのは、複数の防衛官僚のリークによるとしか考えられず、彼女が国民からはおろか、省内・自衛隊内でも全く信頼されていないことを示すものです。
 官僚たちの夏の反乱です。
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稲田防衛相、組織的隠蔽を容認 陸自にPKO日報、国会で虚偽答弁
東京新聞 2017年7月19日朝刊
 南スーダン国連平和維持活動(PKO)部隊の日報を廃棄したとしながら陸上自衛隊が保管していた問題で、稲田朋美防衛相が二月に行われた防衛省最高幹部による緊急会議で、保管の事実を非公表とするとの方針を幹部から伝えられ、了承していたことが分かった。
 複数の政府関係者が十八日、明らかにした。防衛省・自衛隊の組織的隠蔽(いんぺい)を容認した形になる。

 稲田氏はその後の国会で、一連の経緯の報告を受けていないとし「改めるべき隠蔽体質があれば私の責任で改善していきたい」と答弁。国会でも虚偽の説明をしたことになり、防衛相辞任を求める声が強まり、安倍晋三首相も任命責任を問われるのは確実だ。
 稲田氏は十八日、当該の会議で非公表の方針を了承したかどうかの事実関係について、共同通信の取材に「ご指摘のような事実はありません」と書面で回答した。

 複数の関係者によると、緊急会議は二月十五日、防衛省で開かれた。稲田氏や事務方トップの黒江哲郎事務次官、豊田硬(かたし)官房長、岡部俊哉陸上幕僚長、湯浅悟郎陸幕副長らが出席。情報公開請求に「廃棄済み」とした日報が陸自に電子データで残されていたことについて、事実関係を公表するか対応を協議した。
 陸自は一月十七日、岡部幕僚長に保管されていたことを報告し公表の準備を始めたが、会議では、陸自のデータは隊員個人が収集したもので公文書に当たらないなどとした上で、「事実を公表する必要はない」との方針を決定稲田氏は異議を唱えず、了承したという。

 三月に入り、報道によって陸自に日報が保管されていた事実が明るみに出た。稲田氏は同月十六日の衆院安全保障委員会で、民進党議員から一連の隠蔽行為の報告を受けていないのか問われ「報告はされなかったということだ」と否定した。

 日報を巡っては、情報公開請求を不開示とした後、昨年十二月に統合幕僚監部で発見。その後、陸自でも見つかったが、一月二十七日に統幕の背広組の防衛官僚が、報告に来た陸上幕僚監部(陸幕)の担当者に「今更陸自にあったとは言えない」と伝達。二月にデータは消去された。
 防衛省は二月六日、統幕で見つかった事実を公表し翌七日、一部を黒塗りで公開。陸自での保管の経緯は防衛相直轄の防衛監察本部が特別防衛監察を実施中で、近く結果を公表する見通しだ。

◆「戦闘」表現巡り議論  (後 略)


辞職は必至 隠蔽加担の稲田防衛相に与党からも“更迭”要求
日刊ゲンダイ 2017年7月19日
 陸上自衛隊南スーダンPKOの日報隠蔽問題で、2月に開かれた防衛省最高幹部による緊急会議に稲田防衛相も出席し、日報が保管されていた事実を非公表とする方針を了承していたことが発覚。
 野党はもちろん、与党内からも「致命的な失態」などと厳しい批判が噴出している。

 陸自の日報をめぐっては昨年12月2日、防衛省が「陸自で廃棄済み」として不開示を決定。16日に稲田大臣が再探索を指示し、26日に統合幕僚監部に電子データで保管されていることが分かり、今年1月27日には稲田大臣がデータ発見の報告を受けた経緯がある。
 問題の緊急会議は2月15日。稲田大臣をはじめ黒江事務次官、豊田官房長、岡部陸上幕僚長らが出席した。その席で「陸自のデータは隊員個人が収集したもので公文書にあたらない」とし、「公表する必要はない」との方針が決定され、稲田大臣はこれを了承した。
 しかし、稲田大臣は3月16日の衆院安全保障委員会で、「(データ隠蔽は)報告されていなかった」と虚偽の答弁をし、翌17日には防衛相直轄の防衛監察本部に特別防衛監察まで開始させた。

 稲田大臣は国会で「改めるべき隠蔽体質があれば、私の責任で改善したい」とも答弁していた。その稲田大臣が自らも隠蔽に加担していたことが分かったわけで、今度ばかりは与党内からも「致命的な失態」「国会でウソをついていたわけで、防衛相更迭だ」と厳しく追及する声が上がっている。
 だが、ことはそれだけではすまない。騙され続けてきた国民は大臣更迭ぐらいでは収まらない。これまで稲田大臣をかばい続けてきた安倍首相がわが身可愛さでトカゲのシッポ切りに走り、議員辞職も必至の情勢だ。


タイミングを逸した稲田防衛大臣の嘘の発覚
天木直人のブログ 2017-07-19
 きょう7月19日の各紙が一斉に報じた。毎日新聞などは一面トップだ。
 稲田防衛大臣が南スーダンPKO部隊の日報の存在を知っていたというのだ。
 知っていたどころか、その内容について了承していたというのだ。
 いうまでもなく、PKO部隊の日報には当時の南スーダンは戦闘状態だったと書かれていた。
 そんなところにPKOを派遣する事は法律違反だ。その事を隠すために、日報は廃棄されていた。
 その事を稲田防衛大臣は知らされていなかった。当時そう説明され、我々はそう思い込まされて来た。
 それが事実ならとんでもない自衛隊の暴走だ。誰がそんな判断をしたのか。
 稲田大臣は内部調査して報告すると国会で答弁していた。それらが皆ウソだったということだ。その報告が出される前に、すべての嘘がバレたのだ。

 これが事実なら安倍内閣は即座に吹っ飛ぶほどの嘘だ。もちろん稲田大臣はこの報道を否定している。自分がすべてを知っていた事など、ないと否定している。
 しかし、各紙が書いている。複数の政府関係関係者が明らかにしたと。あきらかに内部関係者のリークだ。
 安倍一強が崩れた証拠だ。ぼろぼろと不都合な真実が出てくる。
 しかし、である。もはや稲田防衛大臣の更迭は周知の事実だ。あと二週間ほどでただの議員になる。
 いまさら稲田防衛大臣を追及しても誰も関心はない。
 この報道は、南スーダンPKO問題の国会議論が真っ最中の時に報じられてこそ、価値があるのだ。そうすれば、稲田大臣の更迭は必至で、安倍政権は総辞職に追い込まれていたかもしれない。

 同じ事は加計問題についても言える。
 もし前川次官の国会招致が、もっと早く実現されていたなら、そして前川次官がメディアにしゃべる前に、真っ先に国会でそのすべてを告白していたなら、加計疑惑問題はこんなに長引くことなく、安倍政権を総辞職に追い込んでいただろう。
 すべてはタイミングだ。
 今頃になって安倍首相を呼んで予算委員会を開いても、安倍首相の冗舌な言い訳を聞かされて終わる事になる。
 安倍首相の支持率がさらに下がっても、総辞職に追い込むまでには至らないだろう。
 ここで安倍首相を総辞職に追い込めなければ、解散・総選挙は遠のく。その間に政局は混乱し、自民党は混乱は必至だが、野党はもっと混乱する。
 野党の迫力不足が安倍政権を延命させているのである(了)