2017年7月17日月曜日

ヤフコメに異変! 安倍首相への批判が殺到! …その理由は?

 Literaが、Yahoo!ニュース」のコメント欄(ヤフコメ)における最近の特異な動向を取り上げました。
 この記事は2日に載りましたが、ネットを覗かない人たちはこのテーマには興味を示さないと思われたので、これまで時流の記事を優先させてきました。しかし埋没させるには惜しい記事なのでこの辺で紹介することにします。

 Yahoo!ニュース」では提携している新聞、放送局、ニュースサイトなどから引っ張ってきた記事に対し、読者が匿名でコメントを投稿でき、そのコメントに読者から「いいね!」の共感が多く示された順にコメントが表示される仕組みになっています
 もしもあるグループが自分たちの意見に合うコメントに集中的に「いいね!」と反応すれば、そのコメントが上位に位置づけられるので、そうすることで逆に世論を誘導することもできるわけです。
 その結果「ヤフコメ」は、ネトウヨ(ネット上の右翼)・ネトサポ(ネット上の自民サポーターズクラブ)・安倍応援団の巣窟と呼ばれる状況になっていました。

 安倍晋三氏は小泉内閣に登用された頃からメディア対策には異常な関心を示し、自民党の下野時代(安倍氏が総裁)に、ネット工作別働隊・J-NSC(自民党ネットサポーターズクラブ=ネトサポ)を組織しました。具体的には世耕氏あたりが中心となって広告代理店の下部組織にメンバーを集めさせたといわれ、活動の実態は、ネット上で他党のネガティブキャンペーンを行う “別働ステマ部隊” (ステマ=ステルス マーケッティング・隠密宣伝)としてスタートしました

 ネトウヨ・ネトサポは現在ネット上で跋扈しているかに見えますが、その実態は少数グループによる反復投稿活動ではないかと見られていました。
 Yahoo!は複数アカウント(上限は不明)を認めているので、それを活用すれば同一人物による投稿が多くの人たちによる投稿と見せかけることができます。要するにごく少数派の意見でも「ヤフコメ」を使って「世間の多数派の意見」を装うことができるのですが、それが実際に行われていたことが先に証明されました。

 2015年4月の1週間に配信した政治や社会など硬派なテーマの記事約1万件と、それに対するヤフコメ数10万件を、立教大学の木村忠正教授(ネットワーク社会論)とYahoo!ニュースが共同で調査したところ、その1週間に100回以上コメントを投稿した人が全体の1%おり、その1%の人たちによる投稿で全体のコメントの2割を形成していたことがわかりました(注 特定のソフトを使うことによって、投稿されたコメントや「いいね!」の発信源のパソコンの機器NOに相当するものを把握することができます)。

 こうした事実が判明したのを機に、Yahoo!ニュース6月の前半にマルチポスト(同じ文章を短期間に繰り返し投稿する行為)対策強化し、複数のアカウントを利用した投稿禁止した結果コメントの内容とコメントへの反応はたちまち正常化したということです。
 それにしてもごく一部の人たちは極めて精力的に安倍首相や安倍内閣(特に稲田防衛相)を応援していたわけです。もしもそれがすべて無償の行為だというのであれば随分とお目出度い人たちです。
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ヤフコメに異変! ネトウヨ、安倍応援団の巣窟だったのに、
安倍首相への批判が殺到! …その理由は?
Litera 2017年7月2日
2ちゃんねると同レベル」「便所」「ネトウヨの中央卸売市場」などと呼ばれてきたあの“ヤフコメ”に、いま、変化が起きている。
 ヤフコメとは、ご存知「Yahoo!ニュース」のコメント欄のこと。「Yahoo!ニュース」では提携している新聞、放送局、ニュースサイトなどから引っ張ってきた記事に対し、ユーザーが匿名でコメントを投稿できる仕組み。2015年6月15日以降はひとり1記事につき1投稿というルールになっている。
 しかし、ヤフコメといえば以前からネトウヨと安倍応援団の巣窟という状況。たとえば安倍政権のスキャンダル報道に対しては、「〇〇(報道機関名が入る)は反日マスゴミ」「フェイクニュース乙」というような、明らかにネット右翼によるものと思われる悪質なコメントが数千単位で投稿され、あるいは野党(とりわけ民進党)に対するデマ言説で埋め尽くされる有様だったのだ。
 ところが、そのヤフコメに投稿されるコメントの“質”が、6月ぐらいから、確実に変容し始めている。
 たとえば、本サイトでも報じた昨日の安倍首相の街頭演説での「安倍やめろ」コールについての時事通信の記事「『帰れ』コールに安倍首相激高=籠池氏も聴衆」(7月1日夜yahooニュース配信)を見てみると、コメント欄を上から順に紹介するとこんな感じだ(7月2日16時現在)。

〈まさかの籠池氏登場!これはドラマより面白い!〉
〈しっかり説明して、ダメな大臣は即座に処分していれば言われて無いけどね。〉
〈ここのところの自民党を見てたら、ヤジも飛ばしたくなるでしょう。〉
〈何か日本が変な感じになってるね。〉
〈自身が国会で野次っているのは何も問題がないのか?〉
〈淡々と粛々としてればいいのに、余裕の無さが表れてる。〉
〈その「こんな人たち」に明日自党の候補者をお願いする応援だったハズでは?
一体何をしに来て誰と闘っているのでしょう・・〉
〈こんな人たちにって、、説明しない、明らかにしないの結果だよ しっかり首相の仕事してたら、反対の声は出ないよ〉
〈コールは始めたのは一部だったけど、次第にかなり多くの聴衆がコールしていた。衝撃的だった。〉

 以前なら「共産党の動員だろ」「国民ってどこの国の人ですかね」「選挙妨害だ」「共謀罪で捕まえろ」などという陰謀論で埋め尽くされていただろうが、安倍首相の逆ギレに対する批判のほうが圧倒的だ。

安倍首相、稲田防衛相にも辛辣な批判が
 また石原伸晃経済再生担当相の「安倍やめろ」コール批判を報じたBuzzFeed Japanの「安倍首相の街頭演説で『安倍やめろコール』 石原経済再生相は「民主主義を否定」と非難」(7月1日夜Yahoo!ニュース配信)という記事でも、以前なら「そうだ! そうだ!」と同意の声が殺到したところだろうが、まったく逆だ。
〈石原のボンボンは表に出したらダメ ねずみ男か貧乏神だから・・〉
〈批判の許されない世の中こそ民主主義ではないと思うが?〉
〈この石原の言葉使いなんとかならんのか。民主主義を否定してるのは、あなた達の方だろ。本当にこんな人間ばかりなら、国会議員の年収300万ぐらいでも高くつくわ。〉
〈憲法を無視して国会も開かない政権の方が、よっぽど民主主義を否定していますが…〉
 石原経済再生相の発言のほうが袋叩きなのは、当然といえば当然なのだが、以前のヤフコメでは考えられないことだ。
 
 時事通信の「8月上旬にも内閣改造=態勢立て直しへ前倒し―安倍首相調整」(6月23日夜Yahoo!ニュース配信)という記事でも、〈一番変わるべきところが変わらないんだよなあ〉〈その前に逮捕もあるんじゃないの??〉〈能力第一で決めなきゃ…。〉〈内閣改造しても安倍さんがやるなら同じ事。不信感しかない〉〈内閣改造の前にこれを実行しないと選挙に勝てないと思いますが?(略)これらは先送りばかりで、もうしないの? 又、騙すの?〉〈一番の問題児は安倍おぼっちゃま、内閣改造何回もせなあかん原因はあなた〉と安倍首相に対する辛辣なコメントが並ぶ。
 ネトウヨ御用達の産経新聞配信の記事でも同様だ。たとえば、「稲田氏、失言を初めて陳謝 辞任否定」(6月30日夜Yahoo!ニュース配信)という記事を例にしてみても、従来なら「マスゴミに嵌められただけ! 悪くない! ともちんラブ!」というようなコメントが殺到していたはずなのに、7月1日10時現在、コメント欄を上から順に紹介するとこんな感じだ。

〈これだけ袋叩きになっても辞任させないって異常だと思う〉
〈こんなんで日本の防衛は大丈夫かと思ってしまう。〉
〈さすがに、稲田は辞めさせた方がいいと思うが。何かあるのか?〉
〈なぜ辞めないのか?辞めさせられないのか? 数時間で辞めた人も、辞めさせられたひともいるのに。〉
〈私は保守なのですが、稲田さんは、明らかに軽すぎる気がします・・・ 危機意識が足りないというか・・〉
〈ここまでになると、総理との間で何か密約があったと捉えられても仕方ない〉
〈やっとマスコミがしつこく質問始めたね。今度は安倍と菅にもお願いいたします〉

 なお、上述の記事のコメント順はいずれも「共感順」(コメントを見た人が「そう思う」を押した数)のデフォルト設定だが、他の配信記事のコメント欄を見ても基本的に同じ調子。ようするに、実に普通の市民感覚のコメントが多くなり、以前の低レベルなネトウヨ言説、差別言辞、安倍政権への盲従的礼賛が、すっかり鳴りを潜めているのである。

複数アカ規制の影響?
 この背景にはもちろん、加計・森友疑惑に一連の不誠実極まりない対応や強引すぎる国会運営など安倍政権のあまりの横暴さに、普段は政治に関心の薄い層にも安倍政権に対する怒りが広がり、批判コメントの絶対数が増え、ネトウヨのコメントがスミに追いやられた可能性もあるだろう。また保守層や自民党支持層にも政権への不信感が高まっているということもあるだろう。
 しかし、これにはもうひとつ大きな理由がある。実はYahoo!ニュースは、6月5日にマルチポスト(同じ文章を短期間に繰り返し投稿する行為)への対策の強化を、さらに6月14日には複数のアカウントを利用した投稿の事実上の禁止を、スタッフブログ上で公表していた。
 特に重要なのは“複数アカウントでの投稿禁止”だろう。つまり、今までは同一人物が複数のYahoo!アカウントを取得して、それを経由して大量に投稿することで、多くの人物が同じ様な意見を表明しているように見せかける印象操作ができた。言い換えれば、現実にはごく少数派の意見なのに、ヤフコメを使って「世間の多数派の反応」を“捏造”するということが、実際に行われていたのである。
 事実、数カ月にはこんな興味深い報道があった。立教大学の木村忠正教授(ネットワーク社会論)とYahoo!ニュースが、2015年4月の1週間に配信した政治や社会など硬派なテーマの記事約1万件と、それに対するヤフコメ数10万件を共同で調査。すると、実に1週間で100回以上コメントを投稿した人が全体の1%おり、その1%の人たちによる投稿で全体のコメントの2割を形成していたことがわかったという(朝日新聞デジタル17年4月28日)。

 ようするに、これまでヤフコメで跋扈していた安倍応援団的なコメントは、実は少数のネトウヨが複数アカウントを用いるなどして大量に書き込んでいたものだった。しかし、6月の“複数アカウントでの投稿禁止”により、そうした行為が不可能になったことで、全体としてヤフコメでは現実に即したネトウヨと一般人の比率に戻った。すると、少数のネトウヨ的言辞は一般人のコメントに埋まって、すっかり目立たなくなってしまった。そういうことではないのか。
 だとすると、これは自民党のネット戦略にも、多少なりとも関わってきそうだ。

 周知の通り、自民党は下野時にネット工作別働隊・J-NSC(自民党ネットサポーターズクラブ、通称ネトサポ)を設立。その活動内容は、自民党の政策や方針などをネットに日々書き込むこととされるが、実態はネット上で他党のネガティブキャンペーンを行う“別働ステマ部隊”である。J-NSCの会員専用サイト内には掲示板があって、ここに自民党関係者が他党に関する情報を書き込み、ネトサポが拡散する仕組みになっていると言われている。本サイトでもその実態については何度か取り上げてきたが、ネトサポの多くがネット上で韓国や中国への悪罵を連ねるネトウヨだ。
 これを踏まえると、Yahoo!ニュースの政治記事からめっきり退散したあの大量の安倍礼賛や野党デマは、やはりごく少数のネトサポたちの仕業だったのではないのか、との疑念が頭をもたげてくる。

ヤフコメは今後ヘイトにどう対処する
 いずれにせよ、あの読むに堪えなかったヤフコメが、いま、政治権力の腐敗や失政にまともに反応、その声が可視化されるよう“正常化”されつつあるということ自体は、喜ばしいと言っていいだろう。
 ただし、まだまだ課題は山積みだ。たとえばヘイトの問題だ。
 前述の木村教授らによる調査によれば、ヤフコメ内の言葉の出現頻度上位3つは「日本」「韓国」「中国」で、「日本人」「韓国人」「中国人」もトップ10に入る。そして、韓国と中国関連の言葉を含んだコメントが全体の25%を占め、その多くに「嫌韓」「嫌中」の意識が色濃く見られたという。ヤフコメがいかにネトウヨの溜まり場になっているかが統計的、数量的に示されたわけだ。
 もっとも、単に韓国政府の政策を批判したり、あるいは歴史問題について私見を述べることは、批評として言論の自由の範疇であり、これを一方的に規制してはならない。しかし、こうした他国民への悪罵を重ねる嫌韓嫌中の言説は、容易に、国籍や民族で差別するヘイトスピーチに繋がりやすいのも事実だ。では、嫌韓嫌中コメントに対し“複数アカウントでの投稿禁止”は効果があるのだろうか。
 一人のネトウヨによる大量投稿がなくなる分、多少、ヘイトの量が減るということはありうるだろう。しかし、実際のところ、黒に近いグレーゾーンの言辞は現在でも韓国関連記事などのヤフコメに多数投稿されている。Yahoo!ニュースは、2015年の時点で「ヘイトスピーチなどへの対応を強化」する方針を決めているが、具体的にどう対応しているのかは定かではない。
 少なくとも、Yahoo!ニュースが今後もヤフコメ機能を継続していくならば、当然、明白なヘイトスピーチの駆除を徹底しつつ、嫌韓嫌中の言辞と向き合って、その“悪質性”を判断し、他のモデルになる必要がある。それが国内最大のポータルサイトとして最低限の責任だろう。(編集部)