2017年7月30日日曜日

自衛隊日報問題の本質

 自衛隊日報問題の根源に、安倍政権が南スーダンPKO駆け付け警護の任務を付与して、新安保法(戦争法)の実績を作っておきたいと熱望したことがあるのは言うまでもありません。
 そのためには7月にジュバで起きた政府軍対政府軍の戦闘(そこでNGO職員を襲撃し、殺人やレイプ行為を働いたのは南スーダン政府軍の兵士でした)は戦闘ではないものとして、11月の自衛隊の新規部隊の派遣に漕ぎ着ける必要がありました。
 自衛隊日報隠蔽は正にそのためにどうしても「必要」な作業であり、自衛隊に対して有言・無言の圧力が加わったのでした。結果的にこの度責任を取らされた自衛隊のトップスは「いい面の皮」でした。
 安倍首相(それに稲田前防衛相)はここでも「勝手な忖度だ」と言いたいのかもしれませんが、彼(ら)の憲法違反の野望が全ての原因になっていることは疑いの余地がありません。
 
 LITERAと日刊ゲンダイの記事を紹介します。
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稲田朋美の防衛相辞任でも自衛隊日報問題は終わらない!
稲田の隠蔽了承と安倍首相の隠蔽指示を徹底追及
LITERA 2017年7月29日
 稲田朋美防衛相が大臣をようやく辞任したが、何をいまさら、というしかない。森友学園をめぐる虚偽答弁に、都議選での「自衛隊としてお願い」発言、そして南スーダンPKOをめぐる日報隠蔽問題と、この間、さまざまな問題発言、行動が散々国民から批判されてきたにもかかわらず、「“ともちん”がかわいくてしようがない」(政界関係者)安倍首相は、周囲の声に耳を貸さず、頑として更迭を拒否してきた。そのあげくがこのザマである。
 しかも、今回の辞任も稲田氏が責任を取ったという話ではなく、稲田氏自身にふりかかった疑惑をごまかし、野党が要求する閉会中審査をつぶすために、安倍政権が先手を打って稲田氏をやめさせたということにすぎない。

 稲田防衛相は昨日の会見でも、関与を否定していたが、明らかに、日報隠蔽に関わっている。昨日、発表された特別防衛監察の報告では、「幹部から日報の存在に関する何らかの発言があった可能性は否定できないものの、 書面による報告や非公表を了承した事実はなかった」となっていたが、これは、陸自幹部が稲田防衛相が隠蔽を了承したと証言していたのに、稲田防衛相が強硬に否定したため、玉虫色の表現をとらざるをえなかったということらしい。
 実際、FNNは稲田氏への「報告」を示す防衛省幹部による“手書きメモ”を入手。そこには、2月13日に大臣室で交された、稲田氏と幹部との生々しい会話の様子が記録されていた。

辰己昌良統幕総括官「破棄漏れがある」
湯浅悟郎陸幕副長「まだ全部調べていない」
    (略)
稲田防衛相「CRF(注:陸上自衛隊中央即応集団)。7/7〜12のものもあったということ?」
湯浅「紙はないかとしか確認しなかった。データはあったかというと、あった。今あったのは1件のみ」
    (略)
湯浅「1年未満のなかで運用。帰国して報告書を作るまで残っている」
稲田「明日なんて答えよう。今までは両方破棄したと答えているのか?」
米山大臣秘書官「後藤くんにも、データは破棄したと答えた」

稲田防衛相の虚偽答弁によって忖度が働いた可能性
 稲田氏が明確に日報データの存在を認識し、隠蔽に関与していたことはもはや決定的といっていいだろう。なお、メモに出てくる「後藤くん」とは、日報問題をめぐる国会で厳しく稲田防衛相を追及していた民進党の後藤祐一議員のことで、稲田氏が頭を抱えている様子がありありと伝わってくる。
 いや、問題は稲田防衛相がたんに隠蔽を了承していたというだけではない。自衛隊日報にはもっと深い背景がある。たとえば、発売中の「週刊文春」(文藝春秋)が載せた“防衛官僚覆面座談会”では、防衛省の中堅官僚Bが一連のリークを“陸自による防衛相への反乱”とする見方について、こう語っている。
「反乱説はどうかなぁ。日報を『ない』としたミスを目立たなくするために、陸自が組織防衛に走った可能性もある」
 そして、続けて中堅官僚Cがこう述べているのだ。
「『陸自で破棄されていた報告を受けている』と大臣が国会答弁しちゃった手前、辻褄を合わせるために“統幕で日報が見つかった”ことにした。ところが、防衛監察で陸自だけが悪者にされる可能性が浮上して、慌ててリークが始まった、と」
 ようするに、自衛隊制服組が稲田氏ら政府側の答弁に振り回されるかたちで、組織的隠蔽をめぐって嘘を積み重ねることになったということだろう。

 実際、本サイトでも指摘しているとおり、そもそもこの日報隠蔽問題の背景には、日報にも記されていた昨年7月のジュバでの「戦闘」が、安保法に基づく自衛隊駆け付け警護の新任務付与にとって“不都合な事実”だったという事情がある。稲田防衛相と安倍首相は、国会で「戦闘」を「衝突」と言い換えて、新任務付与を閣議決定。その11月には、強引に駆け付け警護の任務を付与した自衛隊部隊を現地に派遣した。
 だからこそ、この日報隠蔽問題は、政権を忖度した防衛省が「戦闘」をなかったことにするため、日報の隠蔽を働いた可能性が濃厚なのである。それどころか、官邸、安倍首相が防衛幹部に指示をした可能性すらあるのだ。

安倍首相も要所で幹部と面会、日報隠蔽の報告を受けた疑惑が
 24日午後の閉会中審査でも、稲田防衛相だけでなく、安倍首相も報告を受けていたのではないかという疑惑が焦点となった。共産党の笠井亮衆院議員は「(総理も)早くからご存知だったのではないか」と切り込み、防衛省の黒江哲郎事務次官、豊田硬官房長が、今年1月18日に二人そろって官邸を訪れ、総理に面会している事実を突きつけた。実は、この1月18日というのは、陸自で岡部俊哉陸幕長にデータが見つかったことが報告された日の翌日にあたる。さらに、陸自内の日報データの保管事実が報道された3月15日の2日後にも、やはり黒江事務次官が安倍首相と面会していた。
 安倍首相は繰り返し「ありえない」と強弁したが、日報隠蔽問題について要所要所で黒江事務次官ら防衛省・自衛隊幹部から報告を受け、対処方針を指示していたのではないかという疑念は尽きない。それどころか、隠蔽疑惑が表面化した12月末以前より、駆け付け警護の新任務付与のために、なんらかのかたちで日報隠蔽に関与していた可能性もあるだろう。

 安倍首相は、稲田防衛相の辞任を受け、官邸で記者団に対し「閣僚の任命責任についてはすべて総理大臣たる私にある。国民の皆様の閣僚に対する厳しいご批判については、私自身、真摯に受け止めなければならないと思っている」と述べたが、「閣僚の任命責任」にしても「国民に対する真摯な説明」にしても、安倍首相はいつも口だけだ。
 本来ならば、防衛省で組織ぐるみの隠蔽が行われた事実が認定され、稲田防衛相の関与も濃厚、さらに自身の指示疑惑まで浮上しているのだ。情報をフルオープンにした第三者による真相究明の実施が急務だろう。
 いや、それだけではない。隠蔽問題が明るみになるなかで問題発言を連発した稲田防衛相を、ここまで延命させたのは、他ならぬ安倍首相である。国民の不信は頂点に達している。いますぐ総理の座を降りること。それが、責任のとり方というものだろう。(宮島みつや)


稲田防衛相が直前に了承 ”疑惑のキーマン‟の高飛び人事
日刊ゲンダイ  2017年7月29日
「国民に疑念を抱かせた責任を痛感している。職を辞することにした」――。稲田朋美防衛相が28日午前、南スーダンPKOの日報隠蔽問題に関する特別防衛監察の結果を公表。混乱を招いた監督責任を取る形で、ようやく辞任を表明した。組織的隠蔽への関与については「報告を受けたとの認識はない」とあくまで否定し続けるが、辞任直前、隠蔽問題のキーパーソンを海外へ逃亡させる人事に了承していた

■責任逃れのためなら何でもやる
 本紙は、統合幕僚監部が作成した今夏の防衛省人事の「内示」文書を入手した。注目は、統合幕僚監部参事官付国外運用班長の小川修子氏の在外公館への異動である。文書には外務省に出向させ、在中国大使館に1等書記官として赴任する旨が記されている。

「彼女は歴代防衛相の通訳を務めてきたほど語学堪能で、いわゆる背広組では『エース級』といわれるほどの逸材です。ただし、彼女は南スーダンPKO日報問題に関わり、実務レベルの責任者を務めていました。いわば彼女こそ、日報問題の全容を把握している最重要人物。当然、特別防衛監察の対象者となりました」(防衛省関係者)
 いったんは「破棄済み」と説明した日報が今年1月17日、陸上自衛隊内でデータ保管されていたことが判明。2月13日には稲田がその事実を陸自ナンバー2の湯浅悟郎陸幕副長から伝えられ、同月15日の省内の最高幹部会議で非公表とする方針を了承した――。監察結果で最大の焦点となっている稲田の隠蔽への関与の有無も、小川班長なら知り得る立場にあるという。

 今回の人事は8月3日に予定される内閣改造の直後に発令される見込みで、もちろん稲田も辞任する前に了承済み。自衛隊内部では、「監察の結果、処分されるのは陸自の『制服組』ばかり。小川班長は隠蔽問題の責任者の1人なのに、背広組のエース級なら海外逃亡の“1回休み”で、恐らくキャリアは守られる。常日頃から制服組を見下していた稲田さんらしい判断です」と怨嗟の声も広がっている。
 それにしても、政権にとって“不都合な真実”を握る官僚を海外に飛ばしてしまうとは……。
 森友疑惑で安倍首相の妻、昭恵夫人付だった経産省職員の谷査恵子氏と同じケースで、ロコツなまでの口封じ人事である。

「稲田氏の後任大臣が国会答弁などのために、隠蔽問題の経緯を調べようにも全容を知るキーパーソンが既に不在では、実態の把握は困難。監察結果の妥当性も国会で検証できなくなります。はたして稲田氏は組織的隠蔽を了承していたのか。その真相究明は、稲田氏の辞任と小川班長の異動とのワンセットで闇から闇。政権中枢としてはウヤムヤ決着で、この問題に幕引きを図る算段です」(官邸事情通)
 この政権の隠蔽体質は底なしだ。