2017年7月12日水曜日

共謀罪法施行 国会前で抗議 元高裁判事も懸念

 「共謀罪」(=改正組織犯罪処罰法)が施行された11日、暑い日差しの中、法律の廃止を求める市民ら800人が議員会館前に集まり、「思想の自由を侵害する法律はいらない」とシュプレヒコールしました。
 この日、全国12都道府県21か所で抗議行動行われまし

 犯罪の合意を処罰する「共謀罪」の施行に当たり、元東京高裁判事の門野博弁護士は、「今後は捜査機関の運用が課題となる。供述中心の立証となるため、冤罪の恐れが払拭できない」など様々な懸念を示しました。

 レイバーネットと東京新聞の記事を紹介します。
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「安倍退陣がみえてきた」~共謀罪施行日の7月11日、国会前で声上げる
レイバーネット 2017年7月11日
共謀罪施行日の7月11日、昼の議員会館前集会には暑い日射しをものともせず、約800人の市民が集まった。みんな表情は明るく元気だ。「安倍退陣がはっきりみえてきた。こういう状況をつくってきたのは私たちだ。もっと運動を広げて支持率を20%以下にしよう」。スピーカーの多くが安倍退陣へ手応えを語った。
 主催者挨拶で海渡雄一弁護士は、共謀罪反対の意思を政府に示すために廃止署名をやることを提案した。また「今後政府は共謀罪を盗聴捜査の対象にすることを狙ってくるはず。それは本当の恐ろしいことだ。手を緩めず監視しよう」と訴えた。
 野党議員が次々にマイクを握った。「私の質問のところでNHKは国会中継をやめてしまった」と悔しそうに語る森ゆうこ議員をはじめ、福山哲郎(民進)、福島瑞穂(社民)、小池晃(共産)の各氏は「憲法違反の共謀罪廃止」「安倍退陣実現」に向けて熱く語った。なおこの日、全国12都道府県21か所で抗議行動を行われた。(M)


「共謀罪」法施行 国会前で抗議「廃止へ新たな戦い」
東京新聞 2017年7月11日
 犯罪の合意を処罰する「共謀罪」の趣旨を含む改正組織犯罪処罰法が十一日に施行された。法律の廃止を求める市民ら五百人(主催者発表)が国会前に集まり、「思想の自由を侵害する法律はいらない」とシュプレヒコールを上げた。 
 市民団体や平和団体などでつくる「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」などが主催。参加者は「話し合うことが罪になる?!共謀罪NO!」などと書かれたプラカードを掲げ、野党の国会議員らが次々にマイクを握り、「共謀罪の廃止に向けて新たな戦いが始まる」などと決意を語った。
 同委員会共同代表の高田健さん(72)は「どんどん自由にものが言えない時代になる。この法律を使われないように署名活動を始める」と語った。
 アジア系の海外メディア記者(30)は「東京五輪・パラリンピックを控え、外国人も多く訪れる日本で、この法律が施行された。反対運動が起きていることも伝えたい」と話していた。

◆組織犯罪条約の締結を閣議決定
 改正組織犯罪処罰法が施行されたのを受け、政府は同法の必要性の根拠としていた国際組織犯罪防止条約(TOC条約)を締結すると閣議決定した。金田勝年法相は同法を適用する事件があった場合、事件の受理から裁判確定までの報告を求める「大臣訓令」を全国の検察庁に出したことを明らかにし、「運用の改善や必要であれば法改正などの判断材料にしたい」と述べた。
 日本が二〇〇〇年に署名した同条約は「重大犯罪の合意(共謀)」などの犯罪化を義務付けている。政府は二〇年東京五輪・パラリンピックに向け、テロを未然に防止するために共謀罪を新設し、条約を締結する必要があると主張していた。
 政府は条約の履行に必要な国内法が整備されたことを踏まえ、締結を決めた。外務省によると十一日中にニューヨークの国連本部に締結方針を伝達。三十日後の八月十日に条約の効力が発生するという。


「共謀罪」法施行 元裁判官「冤罪の恐れが払拭できない」
東京新聞 2017年7月11日 夕刊
 犯罪の合意を処罰する「共謀罪」の趣旨を含む改正組織犯罪処罰法が11日、施行され、今後は捜査機関の運用が課題となる。供述中心の立証となるため、東京高裁裁判長を務めた門野博(かどのひろし)弁護士(72)は「冤罪(えんざい)の恐れが払拭(ふっしょく)できない」と懸念する。 (山田祐一郎)

 四十年間裁判官として務め、主に刑事事件を担当した。思い出すのは、茨城県内の強盗殺人事件で男性二人が立件された「布川事件」。二〇〇八年、東京高裁裁判長として、二人の無罪につながる再審開始決定を支持した。
 自白が重要な証拠だったが、警察が自白を強要していたことが判明。犯罪を計画段階で捜査する「共謀罪」法も、物証はメールやメモなどに限られると想定され、供述が重要視される。
 「布川事件は、現在なら取り調べの可視化によって防ぐことができる。しかし共謀罪は自首によって刑が減免されるため、罪を免れようと犯罪を押しつける構図が問題になり、供述の任意性、信用性の見極めが難しくなる」と、捜査機関の運用に危惧を募らせる。
 逮捕令状などを審査する裁判官にはチェック役が期待されるが「捜査機関の資料は限られている。言いなりになっているつもりはなくても疑問を解消する方法がなく、信用して令状を出してしまう」と自身の経験を振り返り、「裁判官は経験したことがないような難しさを味わうことになる」と指摘する。
 特に「共謀罪」法の施行で、刑法の原則が大きく変わると感じる。これまでは、既に行われた「既遂」の犯罪の処罰が基本だったが「計画段階が問題となり、心の中の問題を処罰することになる。どう立証するか、多くの問題をはらんでいる」からだ。

 岐阜県で風力発電施設建設に反対する住民の情報を収集したり、大分県で選挙違反情報収集の名目で監視カメラを無断で設置したりと、警察による市民監視は既に問題化。共謀罪は対象を組織的犯罪集団の構成員に限定しておらず、一般人も対象になり得る。テロ対策に組織犯罪対策…。「さまざまな名目で、警察が何か調べてみようと思えばこの法律が後押しになる。市民監視がさらに強まるのではないか」