2017年7月30日日曜日

30- 安倍首相は例のごとく北朝鮮の脅威を煽るものの

 北朝鮮のICBMの発射実験に対して安倍首相は、今回も極めてハイテンションな対応を見せましたが、「日々雑感」氏は別の冷静な見方をしています。
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北のICBM級の発射実験に、毎度の日本政府の「強い抗議」
日々雑感 2017年7月29日
稲田朋美前防衛相の辞任に伴い防衛相を兼務する岸田文雄外相は防衛省で記者団に「ICBM(大陸間弾道ミサイル)級」と説明。弾道ミサイルは高度3500キロを大きく超え、通常より高い高度に打ち上げる「ロフテッド軌道」で発射されたとの認識を示した。約1000キロ飛行し、北海道積丹半島の西約200キロ、奥尻島の北西約150キロのEEZ内に落下したことを明らかにした。
 北朝鮮が7月4日に発射し日米などが大陸間弾道ミサイル(ICBM)とみているミサイルは約40分間飛んだ。ロフテッド軌道で高度2500キロを大きく上回り、飛距離は約900キロだったと分析されている。今回は前回を上回る性能だった可能性がある。

 政府は29日未明、国家安全保障会議(NSC)閣僚会合を首相官邸で開き、対応を協議した。安倍晋三首相は、情報収集と分析に全力を挙げ、国民に迅速・的確な情報提供を行う▽航空機、船舶などの安全確認を徹底する▽不測の事態に備え万全の態勢を取る--の3点を政府内に指示した。

 安倍首相は首相官邸で記者団に「国際社会の強い抗議と警告を無視して、北朝鮮がまたも弾道ミサイル発射を強行し、わが国のEEZ内に着弾させた。先般のICBM級ミサイル発射に続き、わが国の安全に対する脅威が重大かつ現実のものとなったことを明確に示すものだ」と語った。

 政府は直ちに外交ルートを通じて北朝鮮に抗議した。首相は「北朝鮮に対し厳重に抗議し、最も強い言葉で非難する。北朝鮮がこのような挑発行動を続ける限り、米国、韓国をはじめ中国、ロシアなど国際社会と緊密に連携し、さらに圧力を強化していくほかない。さらなる北朝鮮による挑発行為の可能性も十分に考えられる。強固な日米同盟のもと、高度な警戒態勢を維持し、国民の安全確保に万全を期す」と述べた
(以上「毎日新聞」より引用)

 1998年8月31日に北朝鮮が西側諸国においてテポドン1号と 呼ばれるミサイルを日本海に向けて発射した実験。 発射されたテポドン1号 が津軽海峡付近から日本列島を越えた時から19年も経っている。
 その間、日本政府は北朝鮮にいかなる対抗措置と会話を行って来たというのだろうか。ここに到って米国が本国が射程に入るICBMの発射実験を北朝鮮が繰り返して性能と精度が向上しているのに苛立っている。
 日本が北のミサイル攻撃の射程に入った当時、米国は北に対して殆どいかなる制裁もしなかったし、国際社会に対して対北制裁の提唱もしなかった。しかし本国が脅威に脅かされ始めると、俄かに強硬姿勢に転じている。

 米国にとって日本との安保条約とはその程度のものだ、と認識しておく必要がある。そして米国は韓国の同意なしに北に対して武力行使することは出来ない。なぜなら対北武力行使はソウルが火の海になり、少なくとも6万の韓国人が犠牲になるからだ。いや犠牲者は30万人に上るだろうという推定もある。

 米国は日本に対北軍備増強として武器購入のために北の脅威を放置してきた。それは対中国についても同様のことがいえる。東シナ海の中間線に中国が油井を建設しても、米国は日本政府と一緒になって抗議しなかった。
 南シナ海の岩礁埋め立てでも、埋め立てが完成して中国海軍基地が造営されて初めて米国は騒ぎ始めた。それも南シナ海周辺諸国や日本に対中軍備の武器を買わすためだった。
 米国は北朝鮮の脅威を決して完全には排除しないだろう。朝鮮半島で南北が睨み合っている現状こそがロシアにとっても中国にとっても米国にとっても最上に好ましい。南北にそれぞれの兵器を永遠に売りつけることができるし、極東で影響力を誇示することができる。

 何よりもアジアで最強国家になりうる可能性が最大の国・日本を抑え込むことができる点が大きい。日本の原発に向けて北の通常弾頭ミサイルが発射されようと、中国もロシアも何ら痛痒を感じない。自分たちが手を出すまでもなく、日本が滅亡するかもしれない、という想像は中国とロシア政府にとって愉快だろう。
 以上のような先の大戦の戦勝国と似非・戦勝二か国の思惑の上にある北朝鮮の脅威について、日本政府はどうすべきかを考えるべきだ。米国に騙されて北朝鮮の軽水炉建設に1兆円援助した愚策を繰り返してはならない