2017年7月27日木曜日

27- 連合 労基法改正案めぐる政労使合意を見送る方針

 連合の執行部は26日夜 臨時の3役会を開き、労働基準法の改正案(残業代ゼロ法案)について政府や経団連との「政労使」合意を見送る方針を固めました。27日札幌市で開く臨時の中央執行委員会正式に決定されます。
 連合3役は当初中央執行委にも諮ることなく、使用者に対し年間104日以上の休日確保を義務付けることなどを改正案に盛り込む方向で、政府や経団連と修正合意したい考えでした。神津会長は「どうせ『高プロ制度法案』は通るのだから…云々」と敗北主義的迎合姿勢を公言していましたが、連合傘下の労組から強い反対の声が上がり収拾がつかなくなり、内閣支持率が急速に下落しているなかで断念に追い込まれたものと見られます。

「働き方改革」といい、「働いた時間ではなく成果で評価する」といい、これほど欺瞞に満ち賃金の本質にもとる説明もありません。まして経済界が望んでやまない「残業代ゼロ」容認の口実に用いるなどは許されないことで、ナショナルセンターのトップがこれほどあからさまに政財界の下僕として振る舞うとは情けない限りです。

 NHK、日刊ゲンダイの記事と、全国一般 東京東部労組執行委の声明(連合3役が断念する前に出された)を紹介します。
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連合 労基法改正案めぐる政労使合意を見送る方針
NHK NEWS WEB 2017年7月26日
連合は、臨時の三役会を開き、働いた時間ではなく成果で評価するとした労働基準法の改正案をめぐり、政府や経団連との修正合意を見送る方針を固めました。
働いた時間ではなく成果で評価するとして、労働時間の規制を外す「高度プロフェッショナル制度」を盛り込んだ労働基準法の改正案をめぐり、連合執行部は、使用者に対し年間104日以上の休日確保を義務付けることなどを改正案に盛り込む方向で、政府や経団連と修正合意したい考えでした

しかし連合傘下の一部労組から、「これまでの方針に反する」などと反対意見が出されたほか、連合を最大の支持団体とする民進党からも慎重な対応を求める意見が出ていました。

このため連合は、26日夜札幌市内で臨時の三役会を開いて対応を協議した結果、政府や経団連との修正合意を見送る方針を固めました。
連合執行部は、27日札幌市で開く臨時の中央執行委員会にこうした方針を示し、正式に決定したいとしています。


連合「残業代ゼロ」容認撤回へ 安倍政権支持率低下で転換
 日刊ゲンダイ 2017年7月26日
 連合は25日、政府が秋の臨時国会に提出する「残業代ゼロ」法案を容認する方針を撤回することを決めた。
 連合の神津里季生会長は今月13日、安倍首相と会談し、働きすぎを防ぐ措置を盛り込むなどの条件付きで同法案を容認する姿勢を示した。これに民進党の最大の支持団体の連合を取り込みたい官邸サイドの意向が働き、政府も受け入れる方向だった。

 しかし、21日の中央執行委員会で異論が相次ぎ、過労死遺族や労働問題に詳しい弁護士らからも反対の声が上がっていた。その後も想定外の激しい異論や反対が続出しており、執行部は容認撤回に追い込まれた形だ。
「是々非々路線」と称して政府にすり寄る姿勢を見せていた神津執行部だが、ここにきて「1強」と言われた安倍内閣の支持率が急落。連合内部からも「この時期に敵に塩を送るのは得策ではない」との批判も出ていたという。支持率低落が縁の切れ目ということか。


「残業代ゼロ法」をめぐる情勢についての声明
ナショナルセンターを超えた団結と闘いで労働法制改悪を葬り去ろう!
2017年7月26日
全国一般 東京東部労働組合執行委員会
一定の年収や職種を条件に労働者を1日8時間労働の規制から外して残業代を支払わなくてもよいとする「残業代ゼロ法」(高度プロフェッショナル制度)を、日本最大のナショナルセンター(労働組合の全国組織)である連合が容認に方針転換するかどうかで揺れている。

残業代ゼロ法が導入されれば、時間にとらわれずに成果重視で働けるようになるなどと政府は宣伝しているが、まったくの虚偽であり、実際には長時間労働への最低限の歯止めがなくなるだけだ。
労働者の過労死や健康被害をいっそう促進することは、過労死を出した企業では必ずと言っていいほど違法残業や残業代不払いが横行していることからも明らかだ。

すかいらーくやワタミなどの過労死遺族とともに闘ってきた私たち東部労組が残業代ゼロ法を認める余地は一切ない。
経団連の長年の悲願でありながら、連合を含めた多くの労働者の反対で導入を阻んできたのだ。こうした中で連合の会長が突如、安倍に対して小手先の修正を要請したうえで残業代ゼロ法を事実上容認すると受け取られる態度を示したことは到底許されない
安倍や経団連とのボス交渉で「実をとる」ためというが、長時間労働に苦しむ労働者や過労死遺族とともに最後まで闘うことを投げ捨てたうえでの「実」などあるわけがない。
今ならまだ間に合う。連合内の良心的な労組の奮起で、連合が反対方針を再度確立し、修正要請を撤回するよう強く望む。

報道によると、安倍や経団連への連合のすり寄りは、UAゼンセン同盟出身の事務局長が主導しているという。これまで闘う労組をつぶすために経営者と結託して御用組合づくりを重ねてきた連合内最大の労組である。過労死が出た企業にゼンセンの労組があることは珍しくない。
先日は残業代ゼロ法をめぐり労働者市民が連合本部を取り囲み、事務局長らを名指しで抗議するという前代未聞の事態が起きた。
問題の核心は、なぜゼンセンのような労組の幹部が労働者の代表のような顔で思うままに振る舞うことを日本労働運動は許しているのかである。

1989年にナショナルセンターだった総評が解散して連合が結成された。東部労組はこれを「労働戦線の右翼的再編」と呼んで反対した。そして「たたかう、まともな労働運動」を標榜する全労協に参加した。
あれから28年。不安定雇用や低賃金にあえぐ非正規労働者は2000万人に達した。
職場では長時間労働やパワハラの嵐が吹き荒れ、労働者は生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされている。
にもかかわらず、多くの労働組合が「労使協調」の名のもと職場で闘わない。同僚のリストラや過労死にも見て見ぬふりをしてストライキを1分たりとも打たない。非正規労働者を組織化しようとしない

今回の連合の混迷は、まさに当時私たちが危惧した右翼的労働組合による職場支配がいっそう進行したことが背景にある。そういう意味では、連合に加わらず、闘う労組の全国結集をめざした私たちが、どこまで労働者一人ひとりを闘いに立ち上がらせることができたのかが問われている。

他方、ナショナルセンターの別を問わず、長時間労働やパワハラをなくすためにストライキを果敢に実行したり、非正規労働者自身が差別反対を訴えて闘ったり、企業閉鎖や不当解雇に対して職場占拠や座り込みなどの実力闘争に決起したりする労働組合が、確実にある。
このような労働者の闘いと団結を広げることなくして、あるべきナショナルセンターの確立や労働者のための法律制度は実現できない。

すべての労働者が団結して職場でも路上でも声をあげて闘えば、堕落した労組幹部が安倍や経団連と仮に「政労使合意」なるものを演出したとしても、残業代ゼロ法は必ず葬り去ることができる。
連合内の良心的な労組、全労連、全労協、あらゆる労働者は連帯して、今秋の労働法制改悪反対の闘いに全力を尽くそう