2017年7月7日金曜日

07- 都議選大惨敗で安倍首相の総裁3選も絶望的に(高野孟氏)

 日刊ゲンダイの連載記事「永田町の裏を読む」で、高野孟氏は「都議選大惨敗で政局は一変…安倍首相の総裁3選も絶望的に」というタイトルの記事を出しました。
 常識的にはそうとしか考えられませんが、安倍首相は都議選後も何故か結構強気な発言をしています。しかしそれは首相の周辺の人たちに言わせると「強さではなく弱さの表れで、立ち止まると倒れてしまいそうなのでしゃにむに前に進むしかない」のだそうです。
 安倍首相はこの期に及んで理不尽な強硬策をとるなどということは止めて、日本の将来のために潔く退場して欲しいものです。

 併せて「官邸は警戒 内閣改造後に始まる麻生財務相の“安倍降ろし”」(日刊ゲンダイ)も紹介します。
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   永田町の裏を読む
都議選大惨敗で政局は一変…安倍首相の総裁3選も絶望的に
 高野孟 日刊ゲンダイ 2017年7月6日
 都議選での自民党の大惨敗で、夏以降の政局の景色は一変した。安倍政治は基本的に、来年9月の自民党総裁選での安倍3選達成を軸として運転されているが、その軸がボッキリ折れた――とまではいかなくても、大きくヒビが入ったとみていいのではないか。自民党のベテラン秘書氏が言う。
誰もが、ああ、これで安倍3選は消えたな、と思ったでしょう。それどころか、来年9月まで政権がもつかどうかさえ心配になってきた。ポスト安倍を目指す人たちの動きもこれまでとは違ってくるでしょう」

 そもそも、先の会期末前後からの政局運営は、強気一本で野党も国民世論も蹴散らして進むかの勢いではあったが、秘書氏に言わせると「あれは、強さではなく弱さの表れ。立ち止まると倒れてしまいそうで怖いので、しゃにむに前に進むしかないというのが安倍や側近たちの心境でしょう」。
 都議選が厳しい結果となることは分かっていたけれども、これも、勢いをつけて溝を跳び越えてしまえば、その先は内閣・党人事の改造、秋は憲法改正論議で目先を変えて来年になだれ込んでいくというつもりであったのが、都議選の溝が思いのほか広く深くて、タイヤがはまり込んでしまった。

 こうなると、すべての歯車が噛み合わなくなってくる。従来からの自民党内および衆参両院での憲法議論の積み重ねを無視して、「9条3項加憲」で国民をだまそうという安倍の珍奇な思いつきに、保利耕輔、船田元ら自民党憲法族はこれまでは仕方なしに従ってきたけれども、「こんな粗雑な案ではダメだ」と巻き返しに出るだろう。
 おそらく、改憲の自民党案を秋の臨時国会に示して来年春までに発議する予定は、大幅に遅れることになるのではないか。そうすると、2018年冬までに改憲国民投票と抱き合わせで総選挙を打つという安倍の奇策は実現できず、総選挙は任期満了近くの「追い込まれ解散」になって、結果、3分の2を確保できなくなる可能性もある。改憲で無理押しすれば公明党が離反するから、なおさら選挙の見通しは暗い。

 そういう八方塞がりの中で来年9月を迎えれば、安倍3選どころではなく、看板を掛け替えて臨まないと、とうてい選挙で勝てないという雰囲気になっているだろう。安倍政権の先行きにともった黄信号が、いつ赤信号に変わるかを見極める必要がある。

  高野孟  ジャーナリスト
      1944年生まれ。「インサイダー」編集長、「ザ・ジャーナル」主幹。02年より早稲田大学客員教授。主な著書に「ジャーナリスティックな地図」(池上彰らと共著)、「沖縄に海兵隊は要らない!」、「いま、なぜ東アジア共同体なのか」(孫崎享らと共著」など。メルマガ「高野孟のザ・ジャーナル」を配信中。


官邸は警戒 内閣改造後に始まる麻生財務相の“安倍降ろし”
日刊ゲンダイ 2017年7月6日
 やはり政治は仁義なき権力闘争ということか。「麻生太郎は裏切るつもりだ」――と、安倍周辺が疑心暗鬼を強めている。盤石に見えた「安倍1強」は、一気にガタつきはじめている。

「安倍首相は、麻生さんに対して不信感を抱いているはずです。決定的だったのは都議選の最終日です。秋葉原で街頭演説した安倍首相は、『一緒にやろう』と麻生さんを誘ったが、断られたといいます。さらに、投票日の夜、自民党の大敗が分かっていたのに高級フレンチを一緒に楽しんだことも怪しい。安倍首相に批判が向かうことは明らかなのに麻生さんは止めなかった。安倍首相周辺はあれは安倍首相の評判を下げるために麻生さんが仕掛けた罠ではないか”と疑っています」(官邸事情通)

 実際、安倍首相・麻生財務相の間にすき間風が吹いているのは間違いない。この数カ月、安倍首相が麻生大臣に相談することは、ほとんどなかったらしい。安倍首相は5月3日に「2020年改憲」をブチ上げたが、麻生大臣は寝耳に水だったという。

■「加計問題」「天皇退位」でも対立
 政策もことごとく対立している。自民党の獣医師問題議連の会長である麻生大臣は、加計学園が獣医学部を新設することに反対していたが、安倍首相は麻生大臣に遠慮することなく獣医学部の新設を決めている。天皇退位に関しても確執があったという。妹の信子さんが寛仁親王に嫁ぎ、2人の皇族を姪に持つ麻生大臣は“女性宮家”創設派だが、安倍首相は女性宮家に強く反対している。

 もともとは、麻生大臣が安倍首相に不信感を抱き、都議選に大敗したことをきっかけに安倍首相が麻生大臣に不信感を持ちはじめている。麻生大臣は“安倍降ろし”に動くのか。
「麻生さんが“もう一度総理をやりたい”と野心を強めているのは確かです。でも、表立って安倍降ろしに動くことはないでしょう。まず、夏の改造人事で麻生派が優遇されるかどうか見るはずです。安倍降ろしを仕掛けるのはその後です。恐らく、財務官僚を使って巧妙にやるはずです。財務官僚も消費税増税を2度も延期した安倍首相のことを苦々しく思っています。麻生さんのホンネは“安倍政権を4年半も支えたのだから十分だろう”ですよ」(政界関係者)
 いま頃、安倍首相は、誰を信用していいのか、分からなくなっているのではないか。