2017年6月15日木曜日

国連人権理事会 日本はメディアの独立性強化を

 国連人権理事会特別報告者デービッド・ケイ氏が12日、日本では政府当局者がメディアに対して直接・間接的な圧力をかけることができる」などと指摘し、日本政府に対し、メディアの独立性を強化するため放送法の一部を見直すべきだと勧告しました。また「記者クラブの制度は調査報道を萎縮させる」などと指摘し、表現の自由と知る権利を確実に守る環境を整えるため、メディアも責任を果たすよう求めました。(NHK)
 
 併せて琉球新報の社説 「[国連報告者指摘]懸念に正面から答えよ」を紹介します。
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国連人権理事会 日本はメディアの独立性強化を
NHK NEWS WEB 2017年6月13日
日本で表現の自由について調査を行った国連人権理事会の特別報告者が12日、日本政府に対し、メディアの独立性を強化するため法律を改正すべきだなどと勧告しました。日本政府は「表現の自由や知る権利は憲法で最大限保障されている」と反論しました。
 
スイスのジュネーブで開かれている国連人権理事会の会合で、特別報告者をつとめるアメリカ・カリフォルニア大学教授のデービッド・ケイ氏は日本で行った表現の自由についての調査結果を報告しました。
ケイ氏は「日本では政府当局者がメディアに対して直接・間接的な圧力をかけることができる」などと指摘し、日本政府に対し、メディアの独立性を強化するため放送法の一部を見直すべきだと勧告しました。
ケイ氏はまた、「記者クラブの制度は調査報道を萎縮させる」などと指摘し、表現の自由と知る権利を確実に守る環境を整えるため、メディアも責任を果たすよう求めています。
 
ケイ氏の勧告に対し、ジュネーブ国際機関日本政府代表部の伊原大使は「日本政府の説明や立場に対し、正確な理解のないまま述べている点があり遺憾だ」と批判したうえで、「表現の自由や知る権利は憲法で最大限保障されている」と反論しました。
ケイ氏は人権理事会に提出した報告書で、特定秘密保護法や教科書検定、さらに沖縄での集会の自由についても懸念を示していて、13日以降も議論が続く見通しです。
 
 
社説[国連報告者指摘]懸念に正面から答えよ
琉球新報 2017年6月14日
 国連特別報告者は国連人権理事会の任命を受け、国やテーマ別に人権状況を調査・監視する専門家だ。人権擁護の最前線に立つ2人の報告者が、最近の日本政府の方針に強い懸念を示している。
 言論と表現の自由に関する特別報告者のデービッド・ケイ氏が、ジュネーブで開催中の国連人権理事会に対日調査報告書を提出し、演説した。
 ケイ氏は昨年4月に訪日し調査した結果をもとに、放送局に電波停止を命じる根拠となる条項が盛り込まれた放送法見直しの勧告を検討するよう要請。報道の独立性確保を訴えた
 基地を巡る沖縄の状況についても、抗議行動に加えられる圧力を指摘。活動への規制は「最小限で釣り合いの取れたものにとどめるべきだ」と慎重な対応を求めた。対日報告書では沖縄平和運動センターの山城博治議長の長期勾留について「抗議行動を萎縮させる懸念がある」ことにも言及している。
 
 これに対しジュネーブ国際機関政府代表部の伊原純一大使は「報道機関に違法・不当に圧力をかけた事実はない」「デモを含む表現の自由は最大限保障している」などと反論した。
 辺野古では今も新基地建設に反対する市民に対し、警察官や海上保安官らによる強制排除が続いている。政治的表現の自由が規制されているのである。
 政府の説明が説得力を持たないのは、ケイ氏が示した危惧を多くの県民が抱いているからにほかならない。
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 国会で審議中の「共謀罪」法案について懸念を示す書簡を日本政府に送ったのは、プライバシーの権利に関する特別報告者のジョセフ・ケナタッチ氏。
 ケナタッチ氏は、対象となる犯罪が幅広くテロや組織犯罪と無関係なものも含まれる可能性があることなどを挙げ、「プライバシーや表現の自由を不当に制約する恐れがある」と指摘する。
 ところが安倍晋三首相は書簡を「著しくバランスを欠く不適切なもの」と批判。与党からは「国連の権威に名を借りた主張」という声まで飛び出している。
 ケナタッチ氏はプライバシー権の保護と救済を示してほしいと要請しているのであり、法案すべてを否定しているのではない。
 昨年、日本は人権理事会の理事国選挙に立候補した際「特別報告者との有意義かつ建設的な対話の実現に協力していく」と誓約している。異論は受け付けないというのは約束をほごにするものだ。
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 特別報告者に対する政府の反応に、1930年代のリットン調査団への抗議を彷彿(ほうふつ)させるという声が上がり始めている。日本の満州国建国を認めなかった調査団の報告に異議を唱え、国際連盟を脱退した時とよく似ているという。
 政府は国際世論に与える影響を心配し、特別報告者の指摘に神経をとがらせているようだが、国際社会から不誠実に映るのはどちらだろう。
 批判を正面から受け止める謙虚さと、指摘に対する丁寧な説明が必要である。