2017年6月17日土曜日

共謀罪法強行成立 各団体が抗議声明

 15日、政府与党は参院法務委委員長を握っているにも関わらず、そこでの採決を行わないまま異例の委員長中間報告をもって参院本会議で採決し、稀代の悪法である共謀罪法を強行成立させました。
 
 この民主主義のルールを無視した暴挙に対して多くの団体が抗議声明を出しました。
 日本ペンクラブ日本出版労連日本新聞労連日弁連日本民放労連の声明を掲載します。
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日本ペンクラブ声明  「共謀罪強行採決に抗議する」
 
 国内外の専門家、表現者、市民から、多くの意見が表明されるなか、国会において十分な審議が尽くされないばかりか、多くの疑問をのこしたまま、思想・表現の自由に重大な悪影響を及ぼすいわゆる「共謀罪」が強行的に採決されたことを深く憂えるとともに、強い怒りを禁じえない。
 今回の衆参両院における法案審議と採決にいたる過程は、民主主義のルールを無視し国民を愚弄したものであり、将来に大きな禍根をのこす暴挙である。
 われわれは法案審議のやり直しを強く求める。
2017年6月15日          
日本ペンクラブ会長 浅田次郎
 
2017 年6 月15 日
声明 出版労連は共謀罪( テロ等準備罪) の成立強行に強く抗議します
日本出版労働組合連合会
中央執行委員長 大谷 充
2017 年6 月15 日、自民、公明与党両党は、参議院法務委員会での採決を省略する異例な形で共謀罪法案の本会議採決を強行し、与党両党と日本維新の会などの賛成により共謀罪が成立しました。この背後には、森友、加計両学園疑惑の追及から逃れ、東京都議会選挙に影響させたくないという、政府与党の身勝手な思惑があります。このような身勝手で異例な採決の強行は、今国会での共謀罪の成立は見送るべき、また両学園の疑惑を解明すべきとする多数の民意と、共謀罪法案に反対する多くの人々の声を踏みにじるものであり、民主主義を破壊する暴挙です。断じて許すことはできません。そして、これは2013 年12月6 日の特定秘密保護法、2015 年9 月19 日の戦争法( 安全保障関連法)に続く、三たびの暴挙であり、私たち出版労連は、この共謀罪の成立強行に強く抗議します。
この間、共謀罪法案について、対象となる「組織的犯罪集団」の定義や、何が犯罪行為にあたるかなどが国会で議論されてきましたが、何一つ明確になった点はありません。それどころか、迷走する答弁によって、一般の人たちが捜査対象となり、個人の内心の自由や言論・出版・表現の自由が脅かされる危険性が一層、浮き彫りにされました。共謀罪は、刑事法の原則「犯罪を実行に移した段階から処罰する」を大きく変える内容であり、捜査機関の判断次第で拡大解釈される危険性があらわになっています。
また、国会審議では、国民の不安や懸念に真摯に向き合わない、不誠実な政府答弁が相次ぎました。さらに、国連人権理事会の理事国でありながら、プライバシー権担当の特別報告者から「プライバシーや表現の自由を制約する恐れがある」と共謀罪法案に懸念を示されても、政府はこれに誠実に回答せず、根拠を示さない一方的な主張を繰り返すだけです。こうした不誠実な態度は真実の価値を失わせ、議会制民主主義そのものを破壊する行為であり、日本の国際的な評価を自ら貶めるものです。
なにより共謀罪により、私たちの生業である出版については、捜査機関の判断で業務が監視されたり、家宅捜査や証拠物件の押収が行われたりし、仕事そのものが脅かされる可能性があります。また、私たち労働組合の活動や運動も捜査の対象となります。これまでも、イギリスやアメリカでは労働組合や反戦運動が、共謀罪で取り締まられてきました。戦前、治安維持法によって思想・信条の自由が踏みにじられ、言論・出版・表現の自由が奪われ、日本は戦争の道を進んでいきました。その末期には、治安維持法下最大の言論弾圧事件とされる横浜事件がでっち上げられ、多くの出版人が無実の罪で犠牲となりました。私たちは、そのことを決して忘れません。
私たちは、決して萎縮しませんし、忖度もしません。日本の民主主義が発展していくためには、基本的人権や思想・信条の自由が尊重され、言論・出版・表現の自由が力を発揮していくことが必要です。出版労連は、出版産業に携わるすべての人々、表現に関わるすべての人々、メディア関連の労働組合、そして幅広い多くの市民とともに、権力による言論統制・封殺を許さず、国民の知る権利と言論・出版・表現の自由を発展させ、平和と民主主義、そして日本国憲法を守るため、あらゆる言論統制・弾圧に怯むことなく、活動を旺盛に継続し、今後、共謀罪を廃止に追い込む決意を表明します。
以上
 
共謀罪と同質のテロ等準備罪成立に抗議し、廃止を求める声明
2017年6月15日     
日本新聞労働組合連合
中央執行委員長 小林基秀
政府が今国会に提出した「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案が成立した。新聞労連はこれまで、過去3度にわたり廃案となった「共謀罪」と骨格が同じである点を問題視し、捜査機関によって人々の生活が広範囲に監視され、表現や思想の自由を侵害される恐れや、それに伴って、もの言えぬ社会が到来する危険性を指摘してきた。こうした懸念に対して政府与党は誠実に向き合わず、しかも参院法務委員会での審議を打ち切って本会議で直接採決する「中間報告」を強行した。議会制民主主義を自己否定するような乱暴なやり方であり、政府与党に強く抗議する。 
 
国会審議で浮き彫りとなったのは、捜査機関の判断次第で対象がいくらでも広がる法律の問題点だ。テロ等準備罪の適用対象となる「組織的犯罪集団」かどうかを判断するのは警察や検察であり、その判断の適切性がどう担保されるのかは依然不明確だ。構成要件とされる「準備行為」についても、何を根拠とするのか曖昧で、当局の解釈にゆだねられている。計画を合意したとみなす材料をどのようにして入手するのかも明らかになっていない。問題点が多く残る中、政府の「一般市民は対象にならない」という説明は破綻している。私たち市民の電話の盗聴や電子メールの収集などが広範囲に行われる恐れは拭いきれない。 
 
国連人権理事会でプライバシーの権利を担当する特別報告者ジョセフ・ケナタッチ氏が5月、安倍晋三首相に送った書簡で、この法案は「プライバシーや表現の自由を過度に制約する恐れ」「テロや組織犯罪と関係ない犯罪にも適用される恐れ」を指摘したのに、政府は真正面から受け止めることなくケナタッチ氏への非難に終始した対応も問題が大きい。 
 
テロ等準備罪法が成立した今、私たちは捜査機関が同法をどう運用していくのか、裁判所はチェック機能を果たしているのかを丹念に調べ、追及し、市民の知る権利に応えていく。また、同法が抱える問題点を引き続き伝え、廃止を粘り強く訴えていく。萎縮せず、自由で開かれた社会の実現に向けて市民や読者とともに歩んでいく。
以上
 
いわゆる共謀罪の創設を含む改正組織的犯罪処罰法の成立に関する会長声明
 
本日、いわゆる共謀罪の創設を含む組織的犯罪処罰法改正案(以下「本法案」という。)について、参議院本会議において、参議院法務委員会の中間報告がなされた上で、同委員会の採決が省略されるという異例な手続により、本会議の採決が行われ、成立した。
 
当連合会は、本法案が、市民の人権や自由を広く侵害するおそれが強いものとして、これまで本法案の制定には一貫して反対してきた。また、本法案に対しては、国連人権理事会特別報告者であるジョセフ・カナタチ氏が懸念を表明する書簡を発出するという経緯も存した。
 
本国会における政府の説明にもかかわらず、例えば、①一般市民が捜査の対象になり得るのではないか、②「組織的犯罪集団」に「一変」したといえる基準が不明確ではないか、③計画段階の犯罪の成否を見極めるために、メールやLINE等を対象とする捜査が必要になり、通信傍受の拡大など監視社会を招来しかねないのではないか、などの様々な懸念は払拭されていないと言わざるを得ない。また、277にも上る対象犯罪の妥当性や更なる見直しの要否についても、十分な審議が行われたとは言い難い。
 
本法案は、我が国の刑事法の体系や基本原則を根本的に変更するという重大な内容であり、また、報道機関の世論調査において、政府の説明が不十分であり、今国会での成立に反対であるとの意見が多数存していた。にもかかわらず、衆議院法務委員会において採決が強行され、また、参議院においては上記のとおり異例な手続を経て、成立に至ったことは極めて遺憾である。
 
当連合会は、本法律が恣意的に運用されることがないように注視し、全国の弁護士会及び弁護士会連合会とともに、今後、成立した法律の廃止に向けた取組を行う所存である。
 
  2017年(平成29年)6月15日
日本弁護士連合会   
 会長 中本 和洋
 
民放労連委員長談話
   「共謀罪」廃止までたたかい抜く
2017年6月15日          
日本民間放送労働組合連合会
中央執行委員長 赤塚 オホロ
「テロ等準備罪」と名称を変えた「共謀罪」関連法案が本日早朝、参議院本会議で与党などの賛成多数で可決とされた。国会審議では法務大臣がまともな答弁もできず、挙句の果てに委員会採決を省略した「中間報告」で本会議に上程して徹夜の国会で強行採決するという、憲政史上恥ずべき行いの結果だった。安倍政権を揺るがす数々の疑惑の追及を恐れた政府・与党の一連の行動は、政治の私物化そのものであり、断じて許されない。
 
具体的な犯罪行為がなくても、その相談をしたという疑いがあれば身柄拘束や家宅捜索も可能となるという「共謀罪」は、思想・信条の自由、言論・表現の自由、集会・結社の自由などの基本的人権を踏みにじる、違憲の疑いが強いものだ。捜査当局の恣意的な判断で、市民団体や労働組合の日常的な活動、テレビ・ラジオなどメディアの取材・報道活動まで摘発の対象とされるおそれがある。「共謀罪」は、国会前で夜を徹して反対の声を上げ続けた多くの市民たちと同様に、私たち放送の現場で働く者としても絶対に容認できない。
 
国連の特別報告者の立場から「共謀罪」法案に疑問を投げかけたジョセフ・カナタチ氏は、日弁連のシンポジウムで「法律が通ってしまったとしても、まだ始まったばかりだ。日本の人々は基本的人権の保障を享受する権利がある」と語った。私たちは、政府・与党らの横暴に強く抗議するとともに、「共謀罪」関連法を廃止に追い込むまで、国内・国外の幅広い仲間と共にたたかい抜く決意を表明する。
以 上