2017年6月15日木曜日

15- 「共謀罪に反対する関西宗教者」、「信州大学人の会」が共謀罪法反対声明

 「共謀罪」に反対する関西宗教者9日に、信州大学人の会13日に、それぞれ共謀罪法案に反対する声明を出しました。
 併せて14日夜に国会前で行われた7000人の反対集会の記事を紹介します。
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「共謀罪」に反対する関西宗教者による緊急声明
 
私たちは、今国会で審議されている「組織犯罪処罰法改正案」(以下、「「共謀罪」法案」)に対して深い憂慮を抱き、その成立に反対します。
 
 この法案は、具体的な犯罪行為の前段階で取り締まる法案となっており、日本の刑法が拠って立っている原理である「行為原理」に反する法案であるとの指摘がなされています。また、「共謀罪」を取り締まるためには市民の日常的な会話や行動が監視対象となり、それによって市民生活が萎縮し、自由、ことに集会や思想信条の自由が制限されることが危惧されています。さらに、告発による罪の軽減も含まれているために、市民同士がお互いを監視し、告発し合う、「警察社会」の出現やえん罪の増加すら、引き起こしかねないと思われます。
 
 「共謀罪」法案の持つ問題については、国連人権委員会の任命した特別報告者も懸念を表明し、日本政府に対して説明を求めています。
 「共謀罪」法案が成立すれば、すべての宗教団体がその監視対象となることが危惧されます。政府の当初の説明では、対象は「組織的犯罪集団」のみが適用の対象となるとしてきましたが、その定義は曖昧であり、「普通の団体」も「その性格が一変すれば」対象となる事がありうると国会答弁で答えています。
 
 また、犯罪の構成要件も非常にあいまいであり、各宗教団体が行う、祈り、礼拝などの、日常的な宗教行為まで、「共謀罪」、準備行為とみなされる可能性があります。政府は、犯罪の構成要件は犯罪の具体的計画を立て、合意をし、その「準備行為」を行うことであると説明しています。しかし、その合意は集会に参加したり、SNS・メーリングリスト等でその合意が行われたグループに参加したりしているだけでも成立することがありうると指摘できます。つまり、日常的に行われる各宗教団体の集会における法話や説教で語られたことも、信者の集まりで話合われたことも、果ては、信者同士の何気ない会話も「共謀」とみなされる可能性があることは否定できません。
 
 歴史を振り返れば、「治安維持法」も「言論文章の自由」を最大限尊重すると答弁されていたにもかかわらず、多くの宗教団体が国家権力によって、監視され、自由な宗教活動は制限されました。私たちは、自らの宗教者としての信条に基づき、戦争や「国体」に反対し、それゆえ、「治安維持法」により逮捕され、拷問すら受けた宗教者のあったことを想い起こします。その一方、宗教団体が組織として、国家による弾圧を恐れて、自らの教説を曲げてまで「聖戦完遂」のために協力した歴史もあったことを認識しています。私たちが「共謀罪」法案に反対するのは、このような歴史に対する反省の上に立っています。
 
 国会審議の過程では、オウム真理教による事件が、テロ組織に変貌した宗教団体による事件の例として言及されました。彼らのような犯罪を企てることは決してありませんが、私たちが所属するそれぞれの宗教の教説には、理想的な社会の実現を信じ、そのために力を尽くすことが含まれています。「治安維持法」下では、これが「国体」を否定し、転覆させようとしたと見なされました。今回の「共謀罪」法案でも、今現在の社会を、民主的な手段で、あるいは、教育や福祉という方法で、よりよいものに変革しようとするグループすら「組織的犯罪集団」と見なされかねない危険があることが指摘されています。社会をよりよくしようとするすべての人々と手をたずさえて協力し合うことは、自らの教説に基づいており、また、これまで宗教が担ってきた社会における役割の一つであることを、私たちは認識し、これからもその役割を果たすものでありたいとの願いも、「共謀罪」法案反対の理由です。
 
 以上のようなことに鑑み、私たちは、良心の自由、思想信条の自由、集会の自由、表現の自由を守っていくため、この「共謀罪」法案に強く反対します。
​2017年 6月 9日    
「共謀罪」に反対する関西宗教者
 
信州大学人の会・共謀罪の制定に反対するアピール
 
日本国憲法前文には、「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものてあつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する」とある。この「人類普遍の原理」は、国民が制定した憲法のルールに権力者が真摯に従うという態度をもつことが前提になっている。
 
しかし、2012年12月に誕生した安倍政権には、この「人類普遍の原理」を遵守しようという態度が見られない。
①内閣法制局長官の人事に介入することによって、自衛隊発足以来60年間続いてきた憲法9条に関する内閣法制局の見解を変更させた。
②2014年12月に、ほとんど実質的な理由のない恣意的な衆議院解散を強行し、新安保法制の制定に備えた。
③2015年9月19日に、憲法9条違反の新安保法制を制定した。衆議院でも参議院でも委員会において「強行採決」がおこなわれた。
④新安保法制強行後、憲法53条の要件を満たした国会議員の要求があったにもかかわらず、臨時会の召集を決定しなかった。
⑤2016年7月の参議院選挙において「憲法改正は争点ではない」と言い続けて3分の2の議席を確保し、その約束に反して、憲法改正を進めようとしている。
 
この安倍政権が、現在、制定しようとしているのが共謀罪である。共謀罪は、既遂を原則とする刑法体系を変質させ、具体的な犯罪行為がなされる前の段階での「計画」が犯罪となる。また、277もの犯罪について相談をしたことが犯罪の基礎となる共謀罪は、団体の自由な活動に対し、警察による捜査を可能にする。
TOC条約の批准のために、このような包括的な共謀罪が必要ないことは、すでに明らかになっている。また、共謀罪を「テロ等準備罪」と呼び名を変更したことは、「条約批准のため」という大義名分と齟齬がある。しかも、テロリズムという文言が当初条文にないという指摘を受けて、「組織的犯罪集団」の前に「テロリズム集団その他の」という文言を追加したというお粗末さである。
「組織的犯罪集団」とは、結合関係の基礎としての共同の目的が犯罪を犯すことである団体であり、2人以上の者が犯罪の遂行を計画し、そのうちの誰かが準備行為をおこなった場合、共謀罪が成立する。しかし、団体の性質は捜査機関が判断する。結局、国民の自由な政治活動のための結社が、捜査と処罰の対象になる危険性が極めて高い。
 
このように共謀罪はプライバシー権と表現の自由を侵害する。しかもそのことは、国連特別報告者のジョセフ・ケナタッチ氏によって指摘されているのである。監視を受けない自由な市民が、自由に結合することによって、権力に対して批判的に対峙することは、「人類普遍の原理」の一部である。これまでその原理に反する行動を繰り返してきた安倍政権は、ついに、市民による自由な社会的政治的活動を抑制しようとしている。政権の主張する共謀罪制定の理由がことごとく崩されているのであるから、そう理解するしかないだろう。
 
わたしたちは、戦前の経験に学ぶ必要がある。たとえば、俳句はもっとも民衆的な娯楽であり、もっとも民衆的な芸術のひとつだろう。そして,それは数多の結社によって成り立ち、人びとの苦しみや悲しみ、喜びをつないできた。戦争を繰り返したかつての大日本帝国は、こうした「つながり」にも権力の弾圧を及ぼしたのだ。
 
現在、この国の社会で「きづな」や「つながり」ということばがあふれているにもかかわらず、人びとが自発的につどい、共感を寄せ合うことが権力の監視・弾圧の対象になりつつある。国民主権をささえる人びとの「公共圏」、その基礎となる共感を寄せ合う「親密圏」そのものが奪われようとしている。
2017年5月3日、安倍首相は、ついに憲法改正の具体的な案を提示した。共謀罪によって市民の自由な政治的活動が委縮させられる中で、憲法改正のための真に適正な国民的な議論の場が確保されるだろうか。
 
わたしたちは、日本社会の将来のために、過去の経験に学ぶことが重要だと考える。わたしたちは、共謀罪の制定に強く反対する。
2017年6月13日 新安保法制の撤回を求める信州大学人の会
 
 
テロ等準備罪 国会周辺で若者などが廃案求める
NHK NEWS WEB 2017年6月15日
国会で、「共謀罪」の構成要件を改めて「テロ等準備罪」を新設する法案の採決をめぐり、与野党の攻防が続く中、国会周辺では、法案に反対する若者などが廃案を求めました。
国会の前には、若者のグループの呼びかけで集まった法案に反対する人たちが、「共謀罪反対」などと書かれたプラカードを掲げながら、「強行採決絶対反対」とか「自由に話せる社会を守れ」などと声を上げ、廃案を求めました。
 
主催者の発表では午後11時の時点でおよそ7000人が参加したということで、このうち、23歳の男子大学生は「十分な説明もないまま強行採決しようとする与党の対応は許せません。きょうはずっとここで声を上げ続けたいと思っています」と話していました。
また、20歳の女子大学生は「法案によって市民団体の活動も制限され、自由な発言ができなくなるおそれがあり、自分も反対の声を上げなければと思い、初めて参加しました。強行採決は絶対に食い止めたいです」と話していました。