2017年4月28日金曜日

教育勅語 授業使用の政府方針 専門家らが反対声明

 教育勅語は、絶対主義的天皇制を支える「忠良なる臣民」「国家のためには命を投げ出す国民」を養成するために、明治政府の指導者たちが1890年(明治23年)に発布したものです。
 それは新憲法に全く整合しないものであるため、1948年、「教育勅語等排除に関する決議」衆院)と「教育勅語等の失効確認に関する決議」参院)によって排除・失効されました。
 それを、勅語の中の徳目の個所はいまも通用するからというような理由で、取り入れるべきだというような主張を稲田防衛相などが行っていますが、まことに木を見て森を見ないもので、何故いわば常識的な徳目を教育勅語のなかに求めようとするのか不可解です。
 そもそも「父母ニ孝ニ、兄弟ニ友ニ、夫婦相和シ、朋友相信シ」といっても、それは封建的な家父長制度、長幼の序、男尊女卑、目上・目下などをベースにしたもので、そのままでは現代に取り入れようのないものです。
 
 稲田氏は、教育勅語を賛美するに当たり「道義国家」という言葉を使いましたが、それは教育勅語には含まれておらず、教育勅語の復活を訴えている明治神宮のHPに掲載されている現代語訳に出てくるものです。まさに語るに落ちています。
 こうした「教育勅語を現代に・・・」の動きを解明した論文に、エンジョウトオル氏による「教育勅語の正体」(LITERA 3月13~14日)があります。これを読むと教育勅語を巡る一連の動きがすべて理解できます。
※    3月15日  教育勅語の正体(前編・後編)
 
 民進党議員からの「衆参の決議を徹底するために、教育勅語本文を学校教育で使用することを禁止すべきだと考えますが、政府の見解を伺います。」という質問(書)に対して、政府が
学校において、教育に関する勅語を我が国の教育の唯一の根本とするような指導を行うことは不適切であると考えているが、憲法や教育基本法(平成十八年法律第百二十号)等に反しないような形で教育に関する勅語を教材として用いることまでは否定されることではないと考えている」と閣議決定したことを含めて、こうした「時代錯誤」が大手を振ってまかり通っているところにいまの安倍政権の異常さがあります。
 
 教育勅語について、政府が「憲法や教育基本法に反しない形で授業で使用することは否定しない」と閣議決定したことに対して、教育分野の専門家らおよそ120人が反対する声明を出しました。
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教育勅語 授業使用の政府方針 専門家らが反対声明
NHK NEWS WEB 2017年4月27日
教育勅語について、政府が「憲法や教育基本法に反しない形で授業で使用することは否定しない」と閣議決定したことに対して、教育分野の専門家らおよそ120人が反対する声明を出しました。
 
声明を出したのは、東京大学大学院の本田由紀教授や、オックスフォード大学の苅谷剛彦教授など、教育分野の専門家など合わせて120人です。
政府は今月、教育勅語について、「憲法や教育基本法に反しない形で授業で使用することは否定しない」と閣議決定しましたが、声明では、過去の国会決議や答弁と比べて、今回の政府方針は教育勅語を容認する姿勢を強めていると批判しています。
そのうえで、民主主義と対立する思想や価値観であり、授業では批判的に取り上げる以外使用すべきでないと主張しています。
教育勅語は、戦前、国民が守るべき道徳とされていましたが、戦後は「国家主義や軍国主義に拍車をかけた」として、衆参両院で排除や失効を確認する決議がされています。
 
本田教授は「現在の方針では、子どもたちの教育勅語への批判的な認識が醸成できないおそれがある。歴史的な過ちを繰り返さないためにも、政府は認識を改めるべきだ」と話していました。