2017年4月20日木曜日

米空母カール・ビンソンは朝鮮半島へ向かわずに南下

 北朝鮮の海域に空母カール・ビンソンを中心とする機動部隊が向かっていると報じられて緊張が極度に高まりましたが、15日段階で同機動部隊はスマトラとジャワの間にあるスンダ海峡を通過、南下していることが明らかになりました当初の予定通り、インド洋でオーストラリア海軍との演習に参加するということです。
 マティス国防長官はそもそも「機動部隊を北上させる要求も理由もない」とカール・ビンソンの朝鮮半島派遣に乗り気ではなかったといいます。そうするとこの間の大騒動は一体何だったのでしょうか
 しかし大惨事の可能性がひとまずなくなったのは何よりも喜ばしいことです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
米空母カール・ビンソンは朝鮮半島へ向かわずに南下、
スマトラとジャワの間の海峡を通過した
櫻井ジャーナル2017.04.19 
空母カール・ビンソンを中心とする艦隊が朝鮮半島へ向かっているという話に疑問が出てきた。4月8日にシンガポールを出港、そこから朝鮮半島周辺へ向かい、そこで朝鮮を恫喝するための示威行動、場合によっては軍事作戦も実行すると言われていたのだが、15日にスマトラとジャワの間にあるスンダ海峡を通過、つまり南下している
 
アメリカにしろ日本にしろ、その支配層が本気で朝鮮を脅威だと考えているとは思えない。もし朝鮮が破壊活動をはじめるとするならば、それはアメリカ側の意向によるだろう。アル・カイダ系武装集団、あるいはそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)と同じように傭兵的な役割を果たすということだ。
何らかの攻撃、あるいは工作で原発が破壊された場合、日本は破滅する可能性が高いが、朝鮮半島で戦争が勃発、あるいは朝鮮の体制が崩壊した場合に発生するであろう難民の問題も無視できない。これは中東/北アフリカ/ウクライナにおける出来事でも明らか。朝鮮半島を南下、あるいは船で日本列島へ向かう人も少なくないだろう。朝鮮がそうしたリスクを冒してまで攻撃するような国だとは思えない。
 
本ブログでは何度か書いているが、朝鮮戦争やベトナム戦争はアメリカの対中国戦の一環である可能性が高い。これは今でも同じ。ヨーロッパでアメリカ/NATOはイランを口実に使い、ロシアとの国境周辺にミサイル・システムを配備してきたが、この点、朝鮮はイランと似た役割を演じている
中国との関係を重視する韓国の反対を押し切り、アメリカはTHAAD(終末高高度地域防衛)ミサイル・システムを韓国に配備するが、勿論、これは朝鮮でなく中国がターゲットだ。
 
韓国では金泳三が大統領に就任した1993年に済州島での海軍基地建設が発表された。候補地が江汀(カンジョン)に絞られたのは2007年のこと。その翌年、2008年の2月に大統領だった盧武鉉は辞任に追い込まれてしまう。現在、アメリカは最新鋭のミサイル駆逐艦ズムウォルトを済州島の基地へ配備したい意向を示しているが、これも中国を睨んでのことだ。朝鮮の核兵器開発、ミサイルの発射実験などもアメリカの中国戦略と深く結びついているだろう。 
 
 
北上せず? 米空母カール・ビンソンはインド洋で豪と演習
日刊ゲンダイ 2017年4月19日
「北朝鮮近海に非常に強力な大艦隊を送り込む」――トランプ米大統領が12日に放映されたテレビでこう宣言。世界最大の原子力空母カール・ビンソンを中心とする第1空母打撃群が派遣されるとされ、「すわ、米朝戦争勃発か」との衝撃が世界中を駆け巡った。
 
 ところが、オーストラリア海軍との合同演習をキャンセルし、シンガポールから西太平洋を北上するはずのカール・ビンソンが、一向に北上しないどころか、インド洋で予定通りオーストラリア海軍との演習に参加していたというから拍子抜けだ。
 
 米軍事専門誌「ディフェンス・ニューズ」電子版によると、トランプの派遣宣言から3日後の15日時点で、カール・ビンソンは朝鮮半島から5600キロも離れたインドネシアのスマトラ島とジャワ島の間のスンダ海峡を航行していた。米国や海外のメディアが一斉に「カール・ビンソンが朝鮮半島近海に近づいている」と報じたことに対して、米海軍高官は「そのような発表をした覚えはない」と突っぱねたという。
 
 マティス国防長官はそもそも「現時点で(第1打撃群を)北上させる要求も理由もない」とカール・ビンソンの朝鮮半島派遣に乗り気ではなかったというから、この間の大騒動は一体何だったのか。ただし同誌によると、25日の朝鮮人民軍創建記念日前後に朝鮮半島近海に展開する可能性は否定しなかったという。