2017年4月24日月曜日

もしも違憲の共謀罪法案が成立すれば・・・

 共謀罪は、「社会に有害な結果を生じる行為がなければ処罰されない」という近代刑法の基本原則を踏みにじり、「市民革命」が勝ち取った「内心のあり方が処罰の対象とされた中世の桎梏からの解放」を、再び暗黒時代に押し戻そうとするものであって、憲法第13条、第19条、第21条そして第31条などに反するものです。
 憲法に反する法が提案されること自体があってはならないことですが、安倍政権になってからは内閣法制局もおかしくなって歯止めの役を果たさなくなりました。
 最後の砦である筈の司法も、日本では最高裁以下一貫して政権に従属しています。裁判所は頼りになりません。
 そんな状況のなかでもしも共謀罪法案が成立すれば一体どういうことになるのでしょうか。
 
 「世に倦む日日」氏は、「共謀罪と『お上を恐れぬ不届き』の刑罰論理 - 精神的自由の侵害」(4月20日)で要旨 次のように述べています。
 
 江戸時代の刑罰の法論理で、町奉行が容疑者に罪と刑を宣告するとき、「お上を恐れぬ不届き至極」という理由で断罪した。「お上を恐れぬ」という内面の態度が、正式な刑罰決定の法的根拠だった。共謀罪の法論理は、近代に獲得した基本的人権の達成と前提を崩して、市民と国家権力との関係を江戸時代に戻してしまうものだ。
 
 政府から「テロリスト」の疑いがかけられた者が、要注意人物として当局の監視対象になる。分かりやすく言えば、戦前に「アカ」とか「非国民」とされて弾圧された者が、今度は「テロリスト」という呼び方で規制と弾圧を受けるこの制度改変によって、国家権力が市民を統制するフリーハンドは大幅に拡充され、憲法に保障された精神的自由権の内実が失われる。中国のような社会になる。中華人民共和国の憲法にも「言論の自由」の規定はある形式的に精神的自由が保障されながら、現実にはあのとおりの自由のない社会が回っている。
 
 そこから先、どういう政治と社会になるかを見通すと、政府の横暴を食い止めるためには、抵抗する市民側は法を犯してやるしかないという判断と選択に導かれる方向になる。合法的にやっていても政府によって恣意的に弾圧されてしまい、また反政府の思想そのものが犯罪なのだから、開きなおってアウトローの立場で目的実現に邁進せざるを得ないという路線になる。安倍晋三(ファシズム)の側は、待ってましたとばかり、その動きを歓迎して公然と暴力的弾圧を強める。一般論として、共謀罪は市民の政治運動をそのように変質させるはずだ。
 
 憲法の精神的自由権の条文規定はそのままでも、この国は実質的に中国と同じ自由のない強権的な政治体制になる
 (詳細は原文をお読みください。URL: http://critic20.exblog.jp/26600014/  )

 そんなことになるのは絶対に避けなければなりません。
 東京新聞の記事を紹介します。
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「内心」「表現」の自由侵害
 「共謀罪」違憲性の指摘
東京新聞 2017年4月23日
 「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案に対し、憲法違反との声が上がっています。連載「いま読む日本国憲法」の特別編として、憲法のどの条文に照らして違憲性が指摘されるのか、国会論戦や学識者の主張を基に整理しました。
 「共謀罪」法案との関係でよく議論になるのは、<憲法19条>が保障する思想及び良心の自由(内心の自由)。人は心の中で何を考えようが自由。旧憲法下で思想弾圧が行われた反省から、国家は人の心の中に立ち入らないという大原則を定めた条文です。
 その点、犯罪が実行される前に、合意しただけで処罰できるのが「共謀罪」法案。犯罪をすると考えた人の心を罰することになり、19条違反が疑われているのです。安倍晋三首相は「準備行為が行われて初めて処罰対象とする」と説明していますが、何が準備行為なのかあいまいです
 <憲法21条>は、自分の考えを自由に発表できる「表現の自由」を定めています。旧憲法下で反政府的な言論が取り締まられた歴史を踏まえた条文で、国家権力を批判できる自由をも保障している点が重要なポイントです。
 政府は今回、捜査対象は「組織的犯罪集団」と説明する一方、普通の市民団体が性質を変えれば対象になるとしています。米軍基地反対や反原発など、自らの主張を表現する市民団体の行動が対象になったり、活動を萎縮させたりする恐れが指摘され、表現の自由の侵害が懸念されています。
 さらに、「共謀罪」法案が成立すれば、共謀を立証するために捜査機関が電話やメールなどの通信傍受を拡大する可能性があると言われます。このことを根拠に、幸福追求権を定めた<憲法13条>違反を問う声もあります。13条にはプライバシー権が含まれるという解釈があるためです。
 また、<憲法31条>は、何をすれば処罰されるのか法律で明示するよう定めています。「共謀罪」法案は何が準備行為と判断されるか分からず、処罰対象が不明確なため31条違反という意見があります。
 一方、政府も、国際条約を「誠実に遵守(じゅんしゅ)する」ことを求めた<憲法98条>に言及し、国際組織犯罪防止条約の締結に向けて法案の成立を訴えています。
 
憲法の条文(抜粋)
違憲と指摘される根拠
13条 幸福追求の権利は最大の尊重を必要とする
 (個人情報を守る「プライバシー権」の根拠条文ともされる)
共謀を立証するため市民生活を監視する捜査が横行しかねない
19条 思想及び良心の自由は侵してはならない
 (心の中で何を考えても構わない「内心の自由」を保障)
外からは分からない合意内容を処罰するため、国家が内心に立ち入ることに
21条 集会、結社その他一切の表現の自由は保障する
 (自分の思想や主張を、外に向かって自由に発表する権利)
米軍基地建設反対などの市民運動が対象になりかねない
31条 法律の手続きによらなければ刑罰を科せられない
  (何をすれば処罰されるのか、あらかじめ法律で示しておく)
犯罪実行前の合意を処罰するため、処罰対象が不明確