2017年4月1日土曜日

財政規律崩壊は鮮明 アベノミクスに出口戦略なく自縄自縛の末路

 27日、2017年度予算は参議院本会議で採決が行われ、自民・公明両党などの賛成多数で可決成立しました。
 成立した新年度予算は、一般会計の総額が過去最大の974500億円で、アベノミクスの破綻によって税収の伸び悩みが鮮明になり、歳入の3分の1以上を借金である国債に依存する厳しい財政状況が続きます。国債の償還や利払いに充てる国債費は、マイナス金利政策で金利が下がったためやや減少したものの235300億円に及んでいます。
 
 麻生財務相は「歳出改革と消費増税で健全化を図る」としていますが、エンゲル係数が漸増しているなかで消費増税など行うべきではなく、担税能力本位に戻って所得税の累進課税強化を行うべきでしょう。海外に湯水のごとく金をバラまく安倍首相のやり方も当然改めるべきです。
 
 日銀が「円」を発行して大量の国債を引き受ける・・・この中央銀行が国の借金を肩代わりする「財政ファイナンス」禁じ手とされていますが、それによる日銀の国債保有残高は今や400兆円を軽く超えていて、エコノミストの高橋乗宣氏は、戦時体制を彷彿させるような「財政規律の崩壊であるとしています
 そして「問題はこの歪んだ金融政策から脱却するための出口戦略がないことで緩和縮小に動けば、金利は確実に上昇し、国債の利払い負担の増加で、政府は苦しむことになる。だから異常な政策と知りながら、うかつに抜け出すこともできない。それがアベノミクスわなにのたうち回る自縄自縛の姿だ」としています。
 
 このソフトランディングする方法がないことこそ「アベノミクス」の最大の欠点であることは、当初から言われていたことです。いまさらどうにもならないでは決して済まされません。
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日本経済一歩先の真相  
過去最大97兆円超 新年度予算で鮮明化した財政規律の崩壊
高橋乗宣 日刊ゲンダイ 2017年3月31日
 過去最大の97兆4547億円に上る2017年度予算が成立した。安倍政権の「1億総活躍」の掛け声に合わせ、子育て世帯や学生への支援拡充や、同一労働同一賃金への助成策などが、ふんだんに盛り込まれた。
 具体的には、保育士の賃金引き上げなど待遇改善策に492億円を計上。経済苦の学生を対象とした返済無用の給付型奨学金の創設に70億円を費やす。非正規雇用の正規転換を進める企業への助成金は、610億円に倍増させた。
 一つ一つの政策は結構な話だが、問題なのは予算の原資である。
 アベノミクスの息切れで、税収は鈍化。今年度の当初予算より1080億円増にとどまった。高齢化で増え続ける社会保障費をいくら削っても、歳入の伸び悩みを補えない。結局、歳入の3分の1以上に当たる353%を国債に依存する苦しい予算編成となった。
 安倍政権が頼る国債を買い支えるのが、黒田総裁率いる日銀だ。2013年4月からの異次元緩和で、市場に出回る国債をドンドン買い占め、保有残高は今や400兆円をゆうに超える。
 日銀がお札をドンドン刷りまくり、大量の国債を引き受ける。中央銀行が国の借金を肩代わりする「財政ファイナンス」の禁じ手同然の危うい政策だ。戦時体制を彷彿させる財政規律の崩壊である。
 
 黒田日銀がマイナス金利の切り札まで放った結果、金融機関は軒並み、悲鳴を上げている。日本を代表する大手銀行でさえ、預金の運用先に困り果てている。国内で運用しようにも長期国債の利回りはマイナス続き。運用先に英国債やスウェーデン国債を選ばざるを得ないというのだ。日本の銀行がスウェーデン国債を運用するとは、まるで雲をつかむ感覚だ。それだけ綱渡りの運用を強いられているのである。
 安倍政権は支持率を気にして新年度予算では一見、良さそうな政策の旗を振っている。その内実は無軌道な戦費拡大と同じ火の車。さまざまな犠牲の上に成り立っていることを忘れてはいけない。
 
 これだけ歪んだ金融政策を未来永劫続けるわけにはいかないが出口戦略は困難だ。緩和縮小に動けば、金利は確実に上昇し、国債の利払い負担の増加で、政府は苦しむことになる異常な政策と知りながら、うかつに抜け出すこともできない。待っているのは、アベノミクスに隠れた「わな」に延々のたうち回る自縄自縛の姿だ。
 予算成立後に安倍首相は「今回の予算は未来を開く予算だ」と胸を張ったが、アベノミクスの大失敗が「未来を閉ざし、縛り上げる」結果を招くことに気付いていないようだ。経済失政と財政悪化の責任が、森友問題の責任以上に重いのは言うまでもない。安倍政権は直ちに総退陣すべきだ。
 
  高橋乗宣  エコノミスト
   1940年広島生まれ。崇徳学園高から東京教育大(現・筑波大)に進学。1970年、同大大学院博士課程を修了。大学講師を経て、73年に三菱総合研究所に入社。主席研究員、参与、研究理事など景気予測チームの主査を長く務める。バブル崩壊後の長期デフレを的確に言い当てるなど、景気予測の実績は多数。三菱総研顧問となった2000年より明海大学大学院教授。01年から崇徳学園理事長。05年から10年まで相愛大学学長を務めた。