2017年4月30日日曜日

憲法改正「必要」43% NHKが憲法について世論調査

 NHKが憲法について個人面接法による世論調査を行い、2643人から回答を得ました(前回は2002年に行っています)。
 
 「改正する必要があると思う」が43%、「改正する必要はないと思う」が34改正が必要とする主な理由は「日本を取りまく安全保障環境の変化に対応するため必要だから」54改正は不要とする主な理由は「戦争の放棄を定めた憲法9条を守りたいから」51)でした。
 「改正する必要がある」は前回から15ポイント減り、「改正する必要はない」は前回より11ポイント増えました。
 
 「戦争の放棄」を定めた憲法9条については、
 「改正する必要があると思う」が25%、「改正する必要はないと思う」が57改正が必要とする主な理由は「自衛力を持てることを憲法にはっきりと書くべきだから」57改正は不要とする主な理由は「平和憲法としての最も大事な条文だから」58)でした。
 「改正する必要がある」は前回から5ポイント減り、「改正する必要はない」は5ポイント増えました。
 
 憲法9条が日本の平和と安全にどの程度役に立っていると思うか聞いたところ、
 「非常に役に立っている」が29%、「ある程度役に立っている」が53%で、初めて8割(82%)を超えました。
 自衛隊は憲法で認められるものだと思うか聞いたところ、
 「認められると思う」が62%、「認められないと思う」が11前々回1992年の結果と比べると、、「認められる」が14ポイント増え、「認められない7ポイント減りました。
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NHK世論調査 憲法改正「必要」43% 「必要ない」34%
NHK NEWS WEB 2017年4月29日
日本国憲法は来月5月3日で施行から70年を迎えます。NHKの世論調査で、今の憲法を改正する必要があると思うか聞いたところ、「改正する必要があると思う」が43%、「改正する必要はないと思う」が34%でした。「戦争の放棄」を定めた憲法9条について聞いたところ、「改正する必要があると思う」が25%、「改正する必要はないと思う」が57%でした。
 
調査概要
NHKは、3月、全国の18歳以上の4800人を対象に、憲法についての世論調査をおこないました。今回は電話による調査ではなく、直接会って聞く個人面接法で実施し、551%にあたる2643人から回答を得ました。
 
憲法改正「必要」43% 「必要ない」34% 
この中で、今の憲法を改正する必要があると思うか聞いたところ、
「どちらともいえない」が17%でした。
 
同じ方法で行った憲法に関する過去の調査と比較すると、「改正する必要があると思う」と答えた人は、1974年、1992年、2002年の調査では増加を続け、アメリカの同時多発テロ事件の翌年の前回2002年は58%に上りましたが、今回の調査では前回を15ポイント下回りました。「改正する必要はないと思う」と答えた人は、前回より11ポイント増えました。
 
改憲賛否の理由は
「改正する必要があると思う」と答えた人にその理由を聞いたところ、
「日本を取りまく安全保障環境の変化に対応するため必要だから」が54%、
「プライバシーの権利や環境権など新たな権利を盛り込むべきだから」が16%、
「国の自衛権や自衛隊の存在を明確にすべきだから」が15%、
「アメリカに押しつけられた憲法だから」が12%などとなっています。
 
「改正する必要はないと思う」と答えた人にその理由を聞いたところ、
「戦争の放棄を定めた憲法9条を守りたいから」が51%、
「すでに国民の中に定着しているから」が23%、
「基本的人権が守られているから」が21%、
「アジア各国などとの国際関係を損なうから」が3%などとなっています。
 
9条改正「必要」25% 「必要ない」57%
また、「戦争の放棄」を定めた憲法9条を改正する必要があると思うか聞きました。
「改正する必要があると思う」が25%、
「改正する必要はないと思う」が57%、
「どちらともいえない」が11%でした。
 
前回の2002年の調査と比較すると、「改正する必要があると思う」は5ポイント減り、「改正する必要はないと思う」は5ポイント増えました。
「改正する必要があると思う」と答えた人にその理由を聞いたところ、
「自衛力を持てることを憲法にはっきりと書くべきだから」が57%、
「国連の平和維持活動などにより積極的に貢献すべきだから」が24%、
「自衛隊も含めた軍事力を放棄することを明確にすべきだから」が8%、
「海外で武力行使ができるようにすべきだから」が7%などとなっています。
 
「改正する必要はないと思う」と答えた人にその理由を聞いたところ、
「平和憲法としての最も大事な条文だから」が58%、
「海外での武力行使の歯止めがなくなるから」が22%、
「改正しなくても、憲法解釈の変更で対応できるから」が11%、
「アジア各国などとの国際関係を損なうから」が5%などとなっています。
 
憲法9条が日本の平和と安全にどの程度役に立っていると思うか聞いたところ、
「非常に役に立っている」が29%、
「ある程度役に立っている」が53%で、
これまでの調査の中で「役に立っている」と答えた人が初めて8割(82%)を超えました
 
自衛隊について
自衛隊は憲法で認められるものだと思うか聞いたところ、
「認められると思う」が62%、
「認められないと思う」が11%、
「どちらともいえない」が22%でした。
同じ方法で調査した25年前、1992年の結果と比べますと、「認められると思う」が14ポイント増え、「認められないと思う」が7ポイント減りました。
 
また、自衛隊が、今後どのような面に力を入れていったらよいと思うか複数回答で聞いたところ、
「人命救助や災害復旧」が90%、
「テロの防止、対策」が63%、
「他国からの侵略や攻撃に対する防衛」が62%、
「国連の平和維持活動への参加」が47%、
「同盟国と共同で行動すること」が33%でした。
 
国連の平和維持活動に参加する自衛隊について、活動の範囲が拡大され、国連の関係者などが武装グループなどに襲われた場合武器を使って助けられるようになったことについて聞いたところ、
「賛成」が23%、
「どちらかといえば、賛成」が39%、
「どちらかといえば、反対」が25%、
「反対」が8%でした。
 
安全保障への意識
日本が戦争や紛争に巻き込まれたり、他国から侵略を受けたりする危険性がどの程度あると思うか聞いたところ、
「非常にある」が24%、
「ある程度ある」が63%でした。
一方、
「あまりない」が10%、
「まったくない」が1%でした。
 
また、これらの人が憲法9条の改正についてどう考えているかをみると、「危険がある」と答えた人では、27%が「改正する必要があると思う」と答え、56%が「改正する必要はないと思う」と答えています。「危険はない」と答えた人では、13%が「改正する必要があると思う」と答え、72%が「改正する必要はないと思う」と答えています。
 
5つの事柄について、安全保障の面でどの程度脅威を感じるか聞いたところ、「北朝鮮による核開発や弾道ミサイル実験などの挑発的な行動」について、「大いに脅威を感じる」(60%)と「ある程度脅威を感じる」(33%)をあわせた、「脅威を感じる」と答えた人は93%でした。
このほか、「中国の軍事力増強や、海洋における活動の拡大・活発化」は88%、「国際テロ組織の活動が活発になっていること」は85%、「韓国との間で竹島の領有権をめぐる問題があること」は66%、「ロシアの極東における軍の施設や装備増強の動き」は59%の人が「脅威を感じる」と答えました。
 
日米安保条約に基づくアメリカとの同盟関係を今後どうしていくべきだと思うか聞いたところ、
「同盟関係をより強化していくべきだ」が27%、
「現状のまま維持していくべきだ」が56%、
「協力の度合いを今より減らしていくべきだ」が9%、
「日米安保の解消をめざしていくべきだ」が3%でした。
 
九州大学 井上武史准教授
憲法を「改正する必要がある」と答えた人の割合と「改正する必要はない」と答えた人の割合の差が前回の調査よりも縮まったことについて、改正に向けた議論を進めるべきだという立場の九州大学の井上武史准教授は、「意外な結果だ。日常生活や国の政治で特段の不都合はないという考え方が広まっているのではないか」と分析したうえで、「安全保障法制の論議をへて法律ができたことで喫緊の憲法改正の必要がなくなり、憲法を変えなくてもいいという観念が広まった可能性はある」と述べました。
 
また、憲法9条を「改正する必要はない」という回答が「必要がある」を上回り、前回の調査より差が広がったことについては、「日本の平和が保たれているという評価と、安全保障環境が厳しいと指摘されている中で、9条がなければ歯止めなしに突き進んだのではないかという評価が入り交じっている」としたうえで、「9条の中身は時代とともに変わってきているにもかかわらず変える必要がないというのは中身よりも吸引力や文言を抱きしめておきたいという感覚に近いのではないか」と指摘しました。
 
さらに、施行から70年となる憲法が果たしてきた役割について、「立憲主義に基づき民主主義や基本的人権という普遍的な価値が日本社会の基本原理であり続けてきたことは誇りに思ってよいことだ。ただ、憲法を変えることで今よりもっとよくなる可能性もある。単に憲法を守る、変えるという0か1かの議論ではなく立憲主義や民主主義をよりよくしていくという観点で憲法をみることが必要だ」と述べました。
 
東京大学 石川健治教授
憲法を「改正する必要がある」と答えた人の割合と「改正する必要はない」と答えた人の割合の差が前回の調査よりも縮まったことについて、今は憲法を変えるべきでないという立場の東京大学の石川健治教授は、「2002年は小泉総理大臣の時代で、改革がよいことだという気分と同時多発テロ事件に対する危機感とが相乗効果になって、改正が必要だという回答が多くなった」と分析したうえで、「立憲主義に対する理解が一定程度深まり、憲法は常に時代に合わせて更新しなければならないものではないという考えが広がったことがこの結果につながっているのではないか」と指摘しました。
 
また、憲法9条を「改正する必要はない」という回答が「必要がある」を上回り、前回の調査より差が広がったことについては、「東アジアの安全保障の環境に加え、中東の情勢も絡んで状況が複雑になる中で、9条の平和ブランドを掲げていることの意味に関心を持つ人が増えることは自然だ」としたうえで、「危機にあおられて改正するのはいちばん危険で、そうではなくて冷静に、じっくり考えたいという人が多かったのは、大事なことだと思う」と述べました。
 
さらに、施行から70年となる憲法が果たしてきた役割について、「戦時中と比べれば、どれだけ風通しのよい、息苦しくない社会を生きているかがわかる。日本国憲法が制定されたことで明らかによい社会になったことは否定のしようがない。調査結果からは憲法に対する問題への関心の深まりを読み取ることができ、施行70年を迎えて憲法が定着したと感じる」と述べました。