2017年3月4日土曜日

WTOを否定:トランプ大統領 防衛費GDP1%を無視:安倍首相

 米通商代表部が1日米議会に出した年次通商報告書には、貿易紛争の解決にはWTOの判断に縛られず国内法を優先すると明記されました。WTOの紛争解決手続きが不利益になる場合はそれに従わず、自分たちで勝手に関税をかけられるようにするものです。
 トランプ氏が選挙戦中に「メキシコには35%、中国には45%の関税を課す」などと主張したことを実行に移すもので、そうなれば相手国も報復関税を課すので米国製品の競争力は事実上なくなります。
 実質的にWTOを離れて、その分をFTA(2国間貿易協定)でカバーしようというのがトランプ氏の構想で、米国はそこまで腹を決めているわけです。
 それでは「標的である日本」はどこまで腹を決めて国益を守ろうとするのでしょうか。こういうときこそ日本自主・独立した政策を追求しなければならないのですが、安倍政権にはとてもそういう開明さもなければ気概もなく、ただ米国に無条件で追従するだけです。それではTPPが成立したときと同様に日本は沈没してしまいます。
 
 また安倍首相は2日の参院予算委で、片山虎之助議員の誘導質問に答える形で防衛費について「アジア太平洋地域の安全保障環境を勘案し、効率的に我が国を守るために防衛費GDPの1%以内に抑える考えはない」と述べました
 防衛費をGDP1%枠内とすることを決定したのは1976年の閣議決定で、以来基本的に守られてきましたその40年来の鉄則を安倍氏は自分の一存で「破る」と堂々と述べたわけです。
 トランプ氏は日本の防衛費が少ないことに不満を持っているので、安倍氏がその意向に迎合しようとしていることは言うまでもありません。この件に関しては、トランプ氏からの圧力に安倍氏自身の希望を重ね合わせているということが出来ます。
 
 既に日本の防衛力は十二分であって増強させる必要などはありません。防衛費の増額は不要であるだけでなく、憲法9条にも抵触するもので許されないことです。
 天木直人氏の二つのブログを紹介します。
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ついに「WTOに従わない」と言い出した米国の衝撃
天木直人のブログ 2017-03-03
 米通商代表部が3月1日、米国議会に年次通商報告書を出した。
 その中で、貿易紛争の解決にはWTOの判断に縛られず国内法を優先すると明記した。
 ついに米国がWTO否定したのだ。
 その衝撃は大きい。
 
 しかし、WTOを否定したのはトランプ大統領がはじめてではない。
 中国にルールをつくらせないと言ってTPPを唱えたオバマ大統領がそうだ。
 もっとさかのぼれば、米・カナダ・メキシコ間の北米自由貿易協定をつくった米国がそうだ。
 トランプ大統領が、その動きに止めを刺し、WTOを明確に否定したということだ。
 世界自由貿易体制は日米安保体制とともに、戦後の日本外交を支えて来た。
 いずれも米国主導の体制だ。
 その米国が、WTOを否定し、そして日米安保体制を米国第一主義の軍事体制に舵を切ろうとしている。
 戦後の国際秩序が大きく揺らぐ今こそ、日本は日本の自主、自立した政策を追求する時だ。
 しかし、安倍政権はトランプの米国に無条件で追従しようとしている。
 これ以上ない危険な状況に日本は突き進もうとしている。
 それに異を唱える政党がいまの日本には皆無だ。
 事態は深刻である(了)
 
 
防衛費GNP1%枠の撤廃を国会で明言した安倍首相の衝撃
天木直人のブログ 2017-03-03
 国会は森友問題ばかりに関心が集中しているが、その陰に隠れてとんでもない答弁が行われている。
 すなわち安倍首相はきのう3月2日の参院予算委員会で、改憲志向の日本維新の会の片山虎之助議員の誘導質問に答える形で、防衛費について次のように語ったというのだ。
 「アジア太平洋地域の安全保障環境を勘案し、財政状況もあるなかで、効率的に我が国を守るために必要な予算を確保する考えだ」と。
 これが財政赤字でも防衛費は増額すると言っているのだ。
 そして、そう言った後で次のように答えたという。
 「国内総生産(GDP)1%以内に抑える考えはない」と。
 これは聞き捨てならない国会答弁だ。
 日本政府が防衛費をGD1%枠内とすることを決定したのは1976年の閣議決定だった。
 その後中曽根首相は1987年度予算作成時に1%枠を外し、1%を超える予算が組まれた時もあった。
 米軍経費負担を含めたり、補正予算を合わせたら、すでに1%枠は超えている。
 しかし、予算案を決める前から「1%以内に抑える考え方はない」と、明言した首相は安倍首相がはじめてだ。
 これはこれからは防衛費は1%を超えると決意表明したのと同じだ。
 しかし、安部首相がこんな開き直った発言をしたというのに、国会は黙ったままだ。
 私が森友学園問題で野党を応援するのは、何としてでも安倍政権を倒し、安倍暴政をストップさせたいからだ。
 もし野党がここで安倍首相を退陣させることが出来なければ、安倍首相は勢いづいて、その暴政を一気に加速させるだろう。
 そうなったら野党の反対など一蹴されるだろう。
 追い込まれているのは野党の方である(了)