2017年2月4日土曜日

アベノミクスが強制終了になれば国債大暴落⇒日本財政破綻の大悲劇

 トランプ大統領は、「日本はこの数年間金融市場を利用して事実上の通貨切り下げを行って来た」と円安誘導を批判しました。
 公平に見てその指摘は正しく、米国務省の10月の報告書には「日本約5年にわたって為替介入をしていないが、日本の当局者らは円高抑制を狙って何度も公に発言した記載されているので、そこには一連の発言がリストアップされているのでしょう。植草一秀氏も、首相自身がかつて(米国から批判されるまでは)そういう発言をしていたとしてその例を挙げています。
 安倍首相は例によって「日銀が適切な金融政策をとった結果なので、その指摘は当たらない」としていますが、「結果としてそうなった」論だけでトランプ氏を説得できるのかは大いに疑問です。
 
 日刊ゲンダイは、もしもこの問題でトランプの軍門に下るようなことがあれば、アベノミクスは強制的に終了させられることになると述べました。
 円安を誘導した以外には全く何の効果もないアベノミクスは勿論終了すべきなのですが、毎年多額の「円」を発行し年間80兆円もの国債の購入を続けてきた日銀がそれを止めてしまっては、国債の大暴落(⇒国債の金利が急上昇)が起きて日本の財政自体が破綻することになります。
 この問題は米国が批判を行う以前から、それこそアベノミクスがスタートした時点から「出口なし」論(=異次元金融緩和には軟着陸の手法が存在しない)として識者から指摘されていたものです。
※ 2014年11月30日 「異次元」から「正次元」に帰れるのか
 
 「アメリカの指摘によって日本の財政が破綻」などという結末だけは避けなくてはならないので、今回は日本側が十分に理論武装して乗り切るしかありませんが、これを機会に安倍政権はアベノミクス(=異次元金融緩和)からの脱出方法(=軟着陸)を必死に検討すべきです。
 異次元金融緩和が永遠に続けられるなどということは全くあり得ない話なのに加えて、アベノミクスが全くその実を挙げていないのですから、それを無事に転換することが政権の責任であることをよく自覚すべきです。
 
 日刊ゲンダイと植草一秀の「知られざる真実」の記事を紹介します。
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国債暴落も トランプ「円安批判」でアベノミクス強制終了
日刊ゲンダイ 2017年2月3日
 米国のトランプ大統領から「為替操作国」だと名指しで批判され、日本の金融当局に動揺が広がっている。
「この数年、日本がやってきたことを見てみろ。金融市場を利用した通貨の切り下げだ」
 31日の米製薬業界との会合で、トランプはこう言って日本の円安誘導を批判した。為替操作国に出し抜かれて米国が損しているというのがトランプの言い分だ。この発言を受け、外国為替市場で円が急伸。一時、1ドル=112円台前半まで円高が進んだ。
 
 1日の衆院予算委で、トランプの円安批判発言について聞かれた安倍首相は、「適切な金融政策を黒田総裁の下、日本銀行に委ねている。円安誘導という批判には当たらない」と反論。この日の予算委に出席していた日銀の黒田総裁も、「物価安定のために金融緩和を進めることについては、G20各国が了解している」と平静を装っていたが、2人とも内心は冷や汗モノだろう。トランプの円安批判は、アベノミクスの根幹をなす異次元緩和批判でもあるからだ。実際、安倍政権は異次元緩和を進めることで円安に誘導していった
 
トランプは2国間の貿易協定に通貨安誘導を制限する“為替条項”を盛り込む意向も示しています。10日に行われる日米首脳会談でも、為替政策への注文がありそうです」(財務省関係者)
 首脳会談に為替政策を担う麻生財務相や浅川財務官が同行するのも、為替について話し合うためだとみられている。
 
■2・10首脳会談どうなる?
 シグマ・キャピタルのチーフエコノミスト、田代秀敏氏が言う。
「国内のインフラ整備など、トランプ大統領がやろうとしている政策はレーガノミクスの前半とそっくりです。しかし、これを進めると金利が上昇しドル高の弊害が出てくる。それで、レーガン政権は発足から5年目の85年にプラザ合意で大幅な円高を起こして調整した。当時は旧大蔵省や日銀の担当者が極秘裏に渡米して、綿密に米側と打ち合わせをしたそうですが、トランプ大統領は政策を実行する前に “口先介入” だけで強引に調整しようとしているのです」
 トランプが「この数年」と言ったのは、明らかにアベノミクスを念頭に置いてのことだ。首脳会談で「今すぐやめろ」と命令されたら、どうするのか。アベノミクスは、“強制終了”させられる可能性がある。
 
年に80兆円のペースで国債を購入してきた日銀がいきなり異次元緩和をやめた途端、国債市場は最大の買い手を失い、国債の暴落は避けられません。クラッシュを避けるためには、徐々に出口に向かうしかないのですが、緩和策を続けながら円安を是正するためには、並行して猛烈な勢いで円買いドル売りをしなければならない。これは互いに矛盾する政策であり、長く続けることは不可能です。アクセルとブレーキを同時に思い切り踏み込むようなもので、いずれ車両本体が著しく損傷してしまいます」(田代秀敏氏)
 10日の首脳会談でトランプが何を言い出すのか、注視するしかない。
 
 
安倍首相が金融緩和=円安誘導を目指したのは事実
植草一秀の「知られざる真実」 2017年2月 2日
米国のトランプ大統領が1月31日に、日本の為替政策について「円安誘導」だと批判したことについて、毎日新聞が次のように伝えている。
「トランプ米大統領は先月31日、米製薬大手幹部との会合で「他国は通貨安に依存している。中国はやっているし、日本が何年もやってきたことだ」と発言し、日本の為替政策を批判した。
米大統領が主要国の為替政策を名指しで批判するのは異例。
安倍晋三首相は1日の衆院予算委員会で「円安誘導という批判はあたらない」としたうえで、「首脳会談の際には、反論すべき点があれば反論していく」と話し、日本側の立場を説明する姿勢を強調。
10日に開かれる日米首脳会談で、為替政策が論点となる可能性が浮上した。」
2月10日、11日に予定されている日米首脳会談で為替政策が論点になる可能性が浮上しているが、安倍首相は国会答弁で、為替政策はトップ同士で論じるべき話題ではないと発言している。
しかし、時と場合によっては、首脳が為替政策について論議することもあり得るわけで、為替政策が首脳会談の議題となる可能性をあらかじめ排除することは適正でない。
 
米国財務省は、半期に一度の外国為替報告書で、2016年4月、初めて「監視リスト」を公表し、中国、日本、ドイツ、韓国、台湾の5カ国・地域を指定した。
「為替操作国」として認定していないが、その前段階となる外国為替報告書では、上記5ヵ国に加えて、スイスが「監視リスト」に掲載された。
10月の報告書では、日本について、約5年にわたって為替介入をしていないが、日本の当局者らは「円高抑制を狙って」何度も公に発言したと指摘している。
米国財務省のチェック項目は、
1.対米貿易黒字が年200億ドル超
2.経常黒字が国内総生産(GDP)の3%超
3.一方的な為替介入による外貨買いがGDPの2%超
であり3項目に該当すれば「為替操作国」との認定を受ける。
中国は、経常収支黒字が引き続き基準を下回り、為替介入の目立った動きが見当たらない場合、本年4月に監視対象から除外される可能性がある。
 
ブルームバーグニュースは次の事実を伝えている。 https://goo.gl/Xysyty 
安倍首相は2月1日午後、衆院予算委員会でトランプ大統領の通貨安誘導発言について、日本は「2%の物価安定目標を到達」するために、適切な金融政策を日本銀行に委ねており、「円安誘導という批判は当たらない」と言明。必要なら米側に日本の姿勢を説明する考えを示した。
これに先立ち、浅川雅嗣財務官は同日午前、記者団に対しトランプ氏の発言について、「日本の金融政策はデフレ脱却という国内政策目的のためにやっている」のであり、「為替を念頭に置いたものでは全くない」と述べた。その上で、「為替相場はマーケットで動いている。操作をしている訳ではない」と反論。日本はしばらく為替介入もしていないとも話し、真意について「もう少し説明がないと分からない」と述べた。
 
しかし、事実は違う。
安倍首相は、2012年12月に首相に再就任する直前、日銀による量的金融緩和の目的について、円安誘導とインフレ誘導であることを明言している。http://www.nicovideo.jp/watch/sm19359610 
                                  (3分~3分15秒の部分参照)
財政出動のための国債発行金額分を全額、15~20兆円の国債を日銀が市場から買い取る、お金を刷る、このお金は直ちに建設に向かうわけで、このことによって、間違いなく、円安とインフレが誘導される、と述べている。
安倍首相がアベノミクスとして提示した日銀の金融緩和政策強化は、インフレ誘導とともに円安誘導を目指すものであった。
ところが、米国から「円安誘導」との批判が生じたために、途上から、「円安誘導ではなくインフレ誘導である」と説明を変えたのである。
過去の経緯について、事実と異なる説明をすることはやめるべきだ。
 
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国債暴落も トランプ「円安批判」でアベノミクス強制終了
日刊ゲンダイ 2017年2月3日
 米国のトランプ大統領から「為替操作国」だと名指しで批判され、日本の金融当局に動揺が広がっている。
「この数年、日本がやってきたことを見てみろ。金融市場を利用した通貨の切り下げだ」
 31日の米製薬業界との会合で、トランプはこう言って日本の円安誘導を批判した。為替操作国に出し抜かれて米国が損しているというのがトランプの言い分だ。この発言を受け、外国為替市場で円が急伸。一時、1ドル=112円台前半まで円高が進んだ。
 
 1日の衆院予算委で、トランプの円安批判発言について聞かれた安倍首相は、「適切な金融政策を黒田総裁の下、日本銀行に委ねている。円安誘導という批判には当たらない」と反論。この日の予算委に出席していた日銀の黒田総裁も、「物価安定のために金融緩和を進めることについては、G20各国が了解している」と平静を装っていたが、2人とも内心は冷や汗モノだろう。トランプの円安批判は、アベノミクスの根幹をなす異次元緩和批判でもあるからだ。実際、安倍政権は異次元緩和を進めることで円安に誘導していった
 
「トランプは2国間の貿易協定に通貨安誘導を制限する“為替条項”を盛り込む意向も示しています。10日に行われる日米首脳会談でも、為替政策への注文がありそうです」(財務省関係者)
 首脳会談に為替政策を担う麻生財務相や浅川財務官が同行するのも、為替について話し合うためだとみられている。
 
■2・10首脳会談どうなる?
 シグマ・キャピタルのチーフエコノミスト、田代秀敏氏が言う。
「国内のインフラ整備など、トランプ大統領がやろうとしている政策はレーガノミクスの前半とそっくりです。しかし、これを進めると金利が上昇しドル高の弊害が出てくる。それで、レーガン政権は発足から5年目の85年にプラザ合意で大幅な円高を起こして調整した。当時は旧大蔵省や日銀の担当者が極秘裏に渡米して、綿密に米側と打ち合わせをしたそうですが、トランプ大統領は政策を実行する前に “口先介入” だけで強引に調整しようとしているのです」
 トランプが「この数年」と言ったのは、明らかにアベノミクスを念頭に置いてのことだ。首脳会談で「今すぐやめろ」と命令されたら、どうするのか。アベノミクスは、“強制終了”させられる可能性がある。
 
年に80兆円のペースで国債を購入してきた日銀がいきなり異次元緩和をやめた途端、国債市場は最大の買い手を失い、国債の暴落は避けられません。クラッシュを避けるためには、徐々に出口に向かうしかないのですが、緩和策を続けながら円安を是正するためには、並行して猛烈な勢いで円買いドル売りをしなければならない。これは互いに矛盾する政策であり、長く続けることは不可能です。アクセルとブレーキを同時に思い切り踏み込むようなもので、いずれ車両本体が著しく損傷してしまいます」(田代秀敏氏)
 
 10日の首脳会談でトランプが何を言い出すのか、注視するしかない。