2017年1月20日金曜日

日米のメディアは体制側の意のままに動いている

 トランプ氏が米大統領に当選して以降、米国と日本のメディアはトランプ叩きに腐心していますが、その理由について植草一秀氏は18日付のブログ記事:「鳩山政権叩きに似ているトランプ政権叩き」で、次のように述べています。
 
 グローバリズムとは国境を超える、ヒト、モノ、カネの移動を完全自由にすることを目指す運動で、TPPなどの自由貿易協定によってそれが実現すれば巨大資本(多国籍企業)の利益極大化するものの、国民の方は逆に賃金を切り下げられ失業する人たちも出ます。
 米国にはNAFTA(北米自由貿易協定=米・加・メキシコ)によってそうした苦境に立たされた国民が沢山いて、その人たちがトランプ氏反グローバリズム(=反TPPや反NAFTAなど)を熱烈に支持したために当選を勝ち取ることが出来たとされています。
 しかしそれは巨大企業(=米支配体制)に取っては絶対許せないことなので、その意を体したメディアが猛烈なトランプ叩きを行っているというものです。
 
 またトランプ氏はロシアとの融和政策に意欲を見せましたが、それは軍需産業を主体とする産軍共同体にとっては絶対に許せないことでした。
 メディアは国民が強く支持している「反グローバリズム」への攻撃はあまりしなくて、もっぱらトランプ氏の人格面やロシアとの融和性を攻撃しています。そしてその害悪が余りにも明らかなマッカーシズム旋風がいまアメリカ国内で吹き荒れているのも結局はメディアのせいです。
 
 問題なのはメディアが完全に米国の体制側の意のままの報道姿勢をとっていることです。しかしながらそれこそは米国が第二次大戦直後から周到に準備した結果であって、いまやEUのメディアまでもがCIAの掣肘下にあります。 
 因みに1977年にワシントン・ポスト紙を辞めたカール・バーンスタインは、その直後雑誌に「CIAとメディア」という記事を載せましたが、それによるとまだメディアの統制が緩かった当時でも400名以上のジャーナリストがCIAのために働いていたということです
 
 反体制派の政権を徹底的に叩いたのは日本のメディアも同じでした。
 かつて登場した鳩山(・小沢)政権は日本の既得権による支配の構造を、根底から破壊しかねない政権でした。米国が支配する日本官僚が支配する日本そして大資本が支配する日本を根底から破壊する可能性を秘めていました。
 そのため鳩山政権は叩かれて退陣に追い込まれました。そしてそのあとを小沢一郎氏が継ぐのを国は徹底的に妨害しました。
 まず検察庁が陸山会事件という政治資金問題をデッチ上げると、検察の意図のままに全メディアが小沢氏を総攻撃しました。検察のリークは元々根拠のあるものではなかったので、小沢氏は最終的には不起訴となりましたが、検察の目的は彼の失脚だったのでその目的は十分に果たしました。
 
 植草一秀氏は、「日本のメディアも完全に巨大資本に支配されており、偏った情報しか流布しないので、日本の主権者は、この偏り、バイアスの存在をしっかりと認識して報道に接しなければならない」と述べています。
 
 同氏の19日付ブログ記事:「主権者判断に敬意払わない腐り切ったメディア」も併せて紹介します。
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鳩山政権叩きに似ているトランプ政権叩き
植草一秀の「知られざる真実」 2017年1月18日
米国では1月20日に第45代米国大統領にドナルド・トランプ氏が就任する。
メディアは相変わらずトランプ叩きを続けているが、米国の主権者が選挙でトランプ氏を選出した以上、その結果に対して一定の敬意を払うことは必要ではないか。
 
米国には「ハネムーンの100日」と呼ばれる風習がある。
新しい政権が軌道に乗るまでには、ある程度の時間を要する。
政権交代後の新政権の最初の100日間は、報道機関のみならず野党も新政権に対する批判や性急な評価を避けるという紳士協定がある。これを「ハネムーンの100日間」と呼ぶ。
 
しかし、今回のトランプ新政権に対して、米国の主要メディアはこの風習を無視している。
日本では、2009年に誕生した鳩山政権に対して、メディアは政権発足当初から攻撃的な姿勢を示し続けた。
2001年に誕生した小泉純一郎政権に対する報道と、鳩山由紀夫政権に対する報道は、好対照を示した。
メディアを支配しているのは巨大資本である。そして、NHKは米国に支配されている。
正確に表現すれば、米国を支配する勢力がNHKを支配している。
この勢力にとって、鳩山政権は歓迎すべからざる政権だった。
そして、いま誕生しようとしているトランプ政権も、米国を支配する支配者にとって、歓迎すべからざる政権なのである。だから、メディアの激しい攻撃が続いている。
 
メディアが鳩山政権を猛攻撃したのは当然のことだったと思われる。
鳩山政権は日本の既得権による支配の構造を、根底から破壊しかねない政権だったからだ。
米国が支配する日本 官僚が支配する日本 そして、大資本が支配する日本 を根底から破壊する可能性を秘めていた。だから、鳩山政権は叩かれた。
 
小泉純一郎政権と安倍晋三政権は瓜二つである。
米国が支配する日本 官僚が支配する日本 そして 大資本が支配する日本 を、そのまま容認するのがこの二つの政権だった。
メディアが情報操作によって、この二つの政権を支えたのである。
 
メディアがネガティブキャンペーンを張り続ければ政権は倒れる。
メディアがポジティブキャンペーンを張り続ければ政権は存続する。
国民主権ではないメディア主権国家の様相が強まっているのだ。
 
トランプ氏は反グローバリズムを鮮明にしている。
グローバリズムとは国境を超える、ヒト、モノ、カネの移動を完全自由にすることを目指す運動だ。これを実現するとき、巨大資本の利益は極大化する。これにトランプ氏がNOを突き付けている
米国と他国を隔てる国境の中における生産を増大させることを最重視している。そして、ヒトの移動の自由化に反対する。巨大資本の求めることを阻止しようとしている。
だから、これを徹底的に叩いている。だからトランプ氏が叩かれているのである。
このことを念頭に入れてトランプ新政権を眺めてゆくべきだ。
 
欧州では英国が「反グローバリズム」の旗幟を鮮明にした。
オランダ、フランス、ドイツ、イタリアが後に続く可能性がある。
日本のメディアも完全に巨大資本に支配されており、偏った情報しか流布しない。
日本の主権者は、この偏り、バイアスの存在をしっかりと認識して報道に接しなければならない。
 
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主権者判断に敬意払わない腐り切ったメディア
植草一秀の「知られざる真実」 2017年1月19日
1月13日は名古屋税理士会熱田支部の新春研修会で講演をさせていただいた。
190名もの会員が参集下さり、熱気あふれる研修会になった。
米国でドナルド・トランプ氏が新大統領に選出され、日本企業に対してもメキシコではなく米国での生産増大を求めている。
米国の新政権が発足する2017年の政治経済情勢に対する関心が極めて高い。
 
英国の主権者は昨年6月の国民投票で、EUからの離脱の意思を表明した。
メディアはEU離脱の選択が間違っているかのような論評を流布しているが、決めたのは英国の主権者であって、民主主義を重んじるのであれば、英国主権者の意思決定に敬意を払うべきである。
 
米国でトランプ氏が新大統領に選出されたのも同じ。
決定したのは米国の主権者である。
あらゆる論評が存立し得るが、論評者は米国の主権者の判断に対して敬意を払うことが必要である。
メディアは大きな勘違いをしている。主権を有するのはそれぞれの国の主権者であって、メディアではない。
メディアが予測を間違えたこと、メディアを支配する勢力にとって望ましくない結果が示されたことは事実だが、それを理由に、主権者が示した判断を、思慮なくののしるのは控えるべきだ。
 
メディアを支配する勢力が政治を支配してきた。これまでの、この現実を踏まえれば、メディアを支配する勢力が望まない判断を英国や米国の主権者が示したことは驚きであり、メディアにとって戸惑うことであるのは理解できる。
この現実を冷静に見つめて、いま、何が起きているのかを沈思黙考することが必要だ。
ヒステリックに、「民衆の判断は間違っている」とわめいたところで、何の解決にもならない。
これまでメディアが垂れ流してきた「自由化=善」の図式に対する根本的な見直しが進んでいるのだ。
自由主義=善 保護主義=悪 の図式ですべてを処理する単細胞思考に誤りがあるのだ。
自由にするべきこと  自由に制限をかけるべきこと の両方がある。
当たり前のことだが、この当たり前のことが見落とされてきた。あるいは、無視されてきた。
 
「新自由主義論者」が求めるのは、「カネ」と「ヒト」の完全なる自由な移動を認めるべきであるということだ。そして、この「完全な移動の自由」を妨げるすべての規制を取り払うのが「善」である、というのが「新自由主義論者」の主張である。
その終着点は、世界のすべての生産手段を巨大資本が支配し、生産活動に全世界の安価な労働力が投入されることである。
 
賃金の高い国には賃金の低い国の労働力が持ち込まれる。その結果、賃金水準が暴落する。
失業しないためには、その安価な賃金水準を受け入れるしかない。
産業はグローバルな巨大資本に支配され、賃金水準はグローバルな最低価格に収斂する。
これが「新自由主義」の行き着く先である。
資本にとってデメリットはないが、労働者にとってはメリットがない
この現実を直視したときに、「ヒトの移動」に制限をかけることが必要だと、各国の主権者が考えるのはおかしなことでない。
英国の主権者も米国の主権者も、冷静な判断力を持ち、メディアに左右されない行動力を有していることが示された。極めて意義深いことだ。
私たちはメディアの上滑りした議論に惑わされずに、英国や米国の国民が示した判断の意味をじっくりと考える必要がある。
(以下は有料ブログのため非公開