2017年1月27日金曜日

27- 山本太郎議員が安倍首相を褒め殺しに その何が悪い

 安倍首相が、何か興奮したように甲高い声でわめく国会の答弁を、冷静に聞き終える(あるいは見終える)ことが出来る人はかなり忍耐力のある人です。人間が出来ていると言った方が良いかもしれません。
 安倍首相の場合、野党側の質問に対してはそもそも答弁になっていないのが殆どです。
 
 高名なブログ:「世に倦む日々」氏は安倍首相の答弁の態様を次のように評しています。
幼児性とわがままな自己中心性ということでいえば、まさに安倍晋三が前代未聞の姿を見せている。それがずっと4年間も続いている。国会質疑で、安倍晋三は自分が言って聞かせたい持論しか言わず、自画自賛と自己正当化しか言わず、野党議員の質問にまともに答えない。スリカエしか言わず、反論されたり批判されたりしたら逆ギレして大声で相手を罵倒しまくる。暴言も平気で言う。非常識と言うよりも、精神に疾患を持った異常者のような狂態を晒す。』(1月13日http://critic20.exblog.jp/26316454/#26316454_1 )
 
 従って普通の人はとても正視出来ないので、国会中継は見ないという人が多いのではないでしょうか。
 
 そんな中 自由党の山本太郎議員が25日の参院本会議で代表質問に立ち、安倍首相に「褒め殺し」の質問をしました
 それが余りにも鮮やかで安倍政治の神髄を衝いていたためか、安倍首相の答弁が終わると、参議院の議長から「山本君の発言につきましては速記録を調査の上、適切に対応したい」という発言があったということです。要するに山本議員の質疑議事録から削除するかも知れないということです。
 
 随所に多少のユーモアを交えたかもしれませんが、山本議員の質問は虚偽ではなく事実を並べ立てたものなので、削除するいわれなどはありません。実に見事に安倍政治の反国民性をピックアップし、それを鮮やかな文脈で構成して「褒め殺し」の演説にまとめています。
 「首相を褒め殺して何が悪いというのか」です。
 
 万一議事録から削除されるようなことがあれば、記念すべきこの質問が歴史から抹消されることになります。
 LITERAが即日山本議員の質問の要旨文書化しましたので紹介します。
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参院代表質問でまた山本太郎節が炸裂! 
安倍首相を「大企業ファースト」とホメ殺しも議事録から削除の動きが
LITERA 2017年1月25日
 あの男が、またも国会で大暴れした。自由党共同代表の山本太郎参院議員のことだ。
 本日開かれた参院代表質問で山本太郎は、自由党と社民党の参院統一会派「希望の会」の代表として質問に立った。本会議において山本が質問をするのは、これが初めて。一体、どんな質問が飛び出すかと思えば、こんな発言から質疑は始まった。
「先日、安倍総理が施政方針演説で『ただ批判に明け暮れても何も生まれない』とおっしゃりましたので、きょうは批判ではなく、政権のこれまでのお仕事を肯定的に振り返り、褒め殺し気味に、希望の会、自由・社民を代表し総理に質問します」
 
 安倍政権の政策を肯定的に、褒め殺し気味に振り返る──。山本はそう宣言すると、まずはこう切り出した。
「政治の使命は、この国に生きる人々の生命・財産を守ること、そう考えます。安倍総理は、誰のための政治をおこなっていらっしゃいますか。安倍総理は、きっちりとお仕事をされております。庶民を犠牲にして大企業を儲けさせる。そのご活躍ぶり、歴代の総理大臣を見てもナンバーワンです」
 
 そして、山本は“庶民を犠牲にするナンバーワンの活躍ぶり”の詳細をこのように挙げていくのだ。
「庶民から搾り取った税金で、庶民への再分配は最低限に抑え、真っ先に手当をするのは、選挙や、権力基盤づくりでお世話になった経団連や大企業など資本家、高額納税者へのご恩返し。とことんおいしい減税、補助金メニューを提供。一方で、派遣法を改悪し、働く人々をコストとして切り捨てやすくするルール改正などを取りそろえる。おかげで上場企業はあのバブルのときよりも儲かり、過去最高益。一方で、中小零細企業の解散・休業は、過去最高。見ているのは大口の支持者のみ。まさに大企業ファースト! これぞ額に汗を流す政治家の鑑ではないでしょうか」
 
 一見、極端な話をしているようだが、山本が並べた問題はいずれも現実に起こっている話であり、「大企業ファースト」とは言い得て妙だ。そんな「政治家の鑑」と褒め殺す安倍首相がいかに庶民に犠牲を強いているかをあぶり出す。それは、子どもの貧困対策において、安倍首相が民間から募金を集めてNPOなどに助成するという完全に他力本願の施策を取ったことだ。
「子どもの貧困問題を人々の善意、基金で解決しようというウルトラCは、安倍総理が薄情で、指導者の器ではない……のではなく、総理はただ、興味がないだけなんです」
 
 さらに山本は、昨年12月に「子どもの相対的貧困率が大きく改善した」と発言したことについて、安倍首相が根拠としたデータが、OECDなどが採用する厚労省の「国民生活基礎調査」ではなく、総務省の「全国消費実態調査」であったことに言及。「この調査は非常に面倒な作業を対象者に求めるもので、お金と時間に余裕のある人しかなかなか対応することができず、低所得者層の実態をしっかり反映しづらいという傾向があると言われています」と指摘し、安倍首相に子どもの貧困率の数値目標を問うたのだった。
 
 また、つづけて山本は、奨学金についてもOECDなどの先進国のなかで「もっとも教育にカネを出さない、ドケチ国家の第2位が日本」と紹介。これも事実で、実際に昨年9月に発表されたOECD加盟国内でGDPに占める教育機関への公的支出の割合(2013年)は33カ国中32位だった。
 そのため、山本は「個人消費を引き上げる意味でも少子化問題を改善する意味でも、奨学金という名のサラ金地獄から対象者を救い出す必要があるのは言うまでもありません」と言うが、しかし安倍首相にその気がまったくない。そうした姿勢を、「新たな奨学金国債を発行して借り換える、マイナス金利に合わせて過去の有利子奨学金をすべて無利子に転換する……などは、もちろんやりません」と批判し、こう続けたのだ。
「なぜ国がサラ金のようなシステムで若い人々を苦しめるのか。奨学金の利息収入は年間390億円ほど。奨学金の延滞収入は年間40億円ほど。これらで金融機関を潤わし、取り立てをおこなう債権回収会社に対しても手堅い仕事を提供する。──若い者たちの未来には投資をしない、企業のためだ、若いうちの苦労は買ってでもしろ。安倍総理の親心ではありませんか!」
 
 山本の“褒め殺し”はまだ続く。“福祉施設介護員の給料が全産業平均よりも月11万円も低い”上、介護・福祉職において過労自殺に追い込まれる人は多いが、にもかかわらず安倍首相の「改革」は「(給金を)月額たった1万円ほど上げる」だけ。これにも山本は吠える。
「現場の悲鳴は聞こえないふり、細かい中身は見ないでいただきたい、表側の数字だけで評価するんです。これこそが、アベノミクスの真髄ではありませんか!」
 
 そして、話題は今国会で安倍首相が成立に血筋を上げる「共謀罪」へ。山本はこう追及する。
「安倍晋三閣下は、行政府の長であるばかりか立法府の長でもあるとご本人がご宣言されました。司法の長になられるのも時間の問題ではないでしょうか。そのためにも現行憲法など守っていられませんし、守りもしません。当然です。不都合な真実、事実を声高に叫ぶ人間は邪魔です。オリンピックに向けて火事場泥棒的に治安立法を成立させます。
 安倍総理、『オリンピックを成功させるためには共謀罪が必要』との趣旨の発言がありました。共謀罪を『テロ等準備罪』と名前を変えるようですが、『テロ準備罪』の“等”、この“等”とはどういう意味ですか? テロ以外にも適用される余地を残す理由を教えてください。世界一安全な東京とアピールしておきながら、たった数週間の体育祭を開催するのに国民を監視し、密告制度で相互監視までさせ、相談しただけでアウトという、権力が思想信条の領域にまで足を踏み入れるとんでもない法律が必要な理由は何なんでしょうか?」
 
 くわえて山本は、安倍首相がIOC総会で世界に向かってついた大嘘「汚染水は0.3平方キロメートルの港湾内でブロックされている」発言を、「お間違いはないでしょうか」と確認。さらには安倍首相が押し進める原発再稼働を「将来もう一箇所で原発の過酷事故が起きた場合、国の経済破綻は免れない」とし、「日本は火山国であり地震大国です。それでも原発再稼働を進めて大丈夫だと言えますか? 言い切れますか?」と問いただした。
 山本が一貫してこだわってきた原発問題。その言葉には力がますます入り、一気呵成にこうまくし立てたのだ。
「事故原発の原因も究明しない、安全基準デタラメ、避難基準テキトー、原発がなくても電力は余っていますが、原発は再稼働します。海外に売りつけるために再稼働します。プルトニウムを持ち続けるために再稼働します。
  三菱、東芝、日立、鹿島建設、大林、大成、竹中、清水、IHI、富士電機、三井住友銀行、UFJなどなどなど、原発に関係する企業のみなさん、安心してください。安倍政権は脱原発など絶対にやりません。安倍政権は税金と電気料金を湯水のように使える発電方法は諦めません」
 「すべては『想定外』という魔法の言葉で逃げるおつもりでしょう。次の事故が起きたとしても、安倍総理ならもっと上手にごまかせます。みなさん、安倍総理を信じて、このバスに乗り込みましょう! 次の停車駅は地獄の1丁目1番地です!」
 
 安倍政権の次の停車駅は地獄の1丁目1番地……もう褒め殺しでも何でもなくなっているが、山本は質問の最後をこのように締めくくった。
「今回、無理をして批判は避けようと思いましたが、どう考えても無理です。総理、あなたがこの国の総理でいる限り、この国の未来はもちません。最後にお伺いします。総理、いつ総理の座から降りていただけるのでしょうか?」
 国を思えば、おのずと「あなたが総理だと未来がない」という答えに行き着く。まさに真理としか言いようがない。だが、まさか本人に「いつ辞めてくれるの?」と聞いてしまうとは……。
 
 無論、この山本の代表質問を世界でいちばん腹立たしく聞いていたのは、ほかでもない安倍首相だろう。「批判するな」と言ったら“褒め殺し”で斬り返されてしまった安倍首相は、山本の質問中、じっと何かを我慢するかのように目線を下に落としたりなど表情を読み取られまいと必死。山本に「あなたがこの国の総理でいる限り、この国の未来はもちません」と突きつけられた瞬間には、肘を組みながら目を閉じ、首を左右に振るという行動を見せた。それはまるで込み上げる怒りを必死に鎮めているかのようだった。そして、答弁もこれまでの方針を繰り返し、ただ淡々と読み上げた。
 
 しかし、問題はその後だ。安倍首相の答弁が終わると、伊達忠一参院議長が「山本君の発言につきましては速記録を調査の上、適切に対応したい」と宣言したからだ。
 たしかに山本の質問は少々煽り気味ではあったが、その内容は虚偽ではなく事実を並べ立てただけだ。もしもこの山本の質疑が議事録に残らないようなことになったとしたら、それは権力による事実の「改竄」にほかならない
 山本の質問を今後、参議院がどのように扱うかについては本サイトも注視したいが、山本が国民に訴えた「庶民を犠牲にした大企業ファースト」という批判さえ議事録から抹消されるようであれば、すでに安倍政権の恐怖のバスは地獄の1丁目1番地を過ぎ、終点に向かって走っている証拠だろう。 (編集部)