2017年1月25日水曜日

25- オリンピックのため共謀罪創設という本末転倒

 安倍首相は国会答弁で、「共謀罪」(テロ等準備罪)創設について、「国際組織犯罪防止条約の国内担保法を整備し、本条約を締結することができなければ、東京オリンピック・パラリンピックを開けないと言っても過言ではない」と述べました。勿論デタラメで、「息をするようにウソを吐く」の一例です。
 同条約の批准に当たって、共謀罪の制定は全く不必要であることは法の専門家が明らかにしています。
 また、外務省によれば、既に条約を批准・締結している187の国・地域の内、新たに締結に際して共謀罪を設けたのはノルウェーとブルガリアの2カ国に過ぎません
 
※ 共謀罪」新設、2国だけ 外務省説明、条約締結に必要なはずが
朝日新聞デジタル 2017年1月20日
 
 植草一秀氏のブログ:「オリンピックのため共謀罪創設という本末転倒」を紹介します。
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オリンピックのため共謀罪創設という本末転倒
植草一秀の「知られざる真実」 2017年1月24日
安倍首相は国会答弁で、今国会で審議される「共謀罪」創設(「テロ等準備罪」)について、「(国際組織犯罪防止)条約の国内担保法を整備し、本条約を締結することができなければ、東京オリンピック・パラリンピックを開けないと言っても過言ではない」と述べた。
これが真実であるなら、東京オリンピック・パラリンピックの開催を返上すべきだろう。
日本の諸制度、諸規制、法制度はオリンピック・パラリンピックのために存在するものでない。諸制度・諸規制・法制度は国の根幹である。
オリンピック・パラリンピックの開催が、その国家の根幹の諸制度・諸規制・法制度と対立するとき、対応の基本スタンスは二つに一つだ。
一つは、日本の諸制度・諸規制・法制度がオリンピック・パラリンピックと対立するから、法制度を変えてしまう。
いま一つは、オリンピック・パラリンピックが日本の諸制度・諸規制・法制度と対立するから、オリンピック・パラリンピックをあきらめる。
どちらが正しい対応なのか。
 
共謀罪は極めて危険な犯罪である。犯罪を実行していないのに、犯罪を考えただけで罪人にされる制度である。
共謀の認定など、いい加減極まりないものである。市民政治活動を展開されている斎藤まさし氏は、公職選挙法違反で逮捕、起訴され、一審で有罪判決を受けたが、完全な冤罪事案である。
疑いがかけられた行為について、チラシを配る際の文言について、当事者が斎藤氏と共謀していないことを法廷で証言した。
「共謀」は成り立ちようがないにもかかわらず、裁判所は「未必の故意による黙示的共謀」があったと認定した。魔法のような言葉であるが、この言葉があれば、何も存在しなくても「共謀があった」と認定してしまうことができることになる。
こんな恐ろしい法律運用、裁判所判断が示されているのである。
この状況下で「共謀罪」が創設されれば、権力は自由自在に市民を犯罪者に仕立て上げることができることになる。
 
安倍政権は昨年刑事訴訟法を改定した。正確に言えば「改悪」した。
本来は、検察が密室で犯罪を実行しないように、警察、検察の行動を監視することが法改正の目的だった。
ところが、取り調べの完全・全面可視化などはまったく盛り込まず、司法取引や通信傍受などの権限だけが大拡大された。
この刑事訴訟法改悪と共謀罪創設が組み合わせられると、政治権力は、権力に盾突く市民を片端から犯罪者に仕立て上げることができるようになる。
刑事訴訟法改悪+共謀罪創設=新治安維持法になる。こんな危険な犯罪を創設するべきでない。
共謀罪を創設しないとオリンピックを開けないなら、オリンピックを開かなければいいだけだ。逆立ちした主張を控えるべきである。
 
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(後 略)