2017年1月14日土曜日

14- オバマ大統領の退任は米国民にとって良い方向だと

 櫻井ジャーナルが退任するオバマ大統領の業績を総括する文章を載せました。
 それは、「オバマ大統領が米国をチェンジさせないまま退任するのは米国民にとって良い方向になる」という実に手厳しいものです。
 
 彼は着任早々核廃絶を訴える演説を行ってその年のノーベル平和賞に輝きましたが、翌年の2010年には早速「臨界前核実験」を行って世界を失望落胆させました。
 米国はこの8年間も、対ロシア関係で極限まで緊張の度を高めるとともに、イラク、アフガン、パキスタン、ウクライナ、シリアなどいちいち上げきれないほど多くの国との間で、米国が発明した「対テロ戦争」を行いながら多くの国を破壊・破綻させました。
 その一方で対空戦力が劣る国に対しては、無人攻撃機ドローンによる無差別攻撃を多用して膨大な数の殺人を行いました。それに対しては国連の人権委が、「1949年のジュネーブ諸条約および追加議定書」などに違反していると度々警告を出しています。
 違法といえばキューバ・グアンタナモの捕虜収容所の問題も結局解決できませんでした。
 
 史上空前の戦争国家である米国がこうして戦争 乃至は「対テロ戦争」を継続することは、必ずしもオバマ氏一人の責任ではありませんが、それを承知のうえで大統領になったのですから、その最高責任者としての責めは負うべきでしょう。
 また先進国の中で唯一国民皆保険制度のない米国にいわゆる「オバマケア」を実現しようとした意気は評価できますが、それが結果した実態は惨憺たるもので、保険料は2倍~3倍に高騰して、いまだに6分の1の国民が無保険のままだと言われています。
 これもまた根の深い問題なのでオバマ氏一人を責めるのは酷かも知れませんが・・・
 
 櫻井氏は、それでもマケインが大統領になるよりもマシであって(勿論ヒラリーがなるよりもはるかにマシで)、オバマ氏の政治がうまくいかなかったのは「それほどアメリカは腐敗しているということでもある」と述べています
 櫻井ジャーナルの記事を紹介します。
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米国の圧倒的多数にとって良い方向へ「チェンジ」させないまま
ホワイトハウスを去るオバマ大統領
櫻井ジャーナル 2017.01.13 
 バラク・オバマ米大統領は1月10日、シカゴで退任演説を行った。「チェンジ」という標語を掲げて当選したのだが、アメリカ庶民にとって良い方向へチェンジさせることなくホワイトハウスを去って行く。
 1980年代に始まった国内のファシズム化プロジェクトは2001年9月11日の攻撃で加速したが、その流れは継続、労働分野ではパートタイム労働を拡大させて貧困は深刻化、医療保険制度の改革、いわゆる「オバマケア」は保険会社や製薬業界を儲けさせただけ。国民の6人に1人が医療保険に入れないという惨状を改善するどころか悪化させている。
 国外では軍事侵略を継続した。ジョージ・W・ブッシュ政権はアメリカ軍を直接導入したが、戦乱は今でも続いている。ネオコンなどはヨルダン、イラク、トルコの親米/イスラエル国帯を作ってシリアとイランを分断して潰す予定だったようだが、これは成功していない。
 ブッシュ・ジュニア政権の終盤、2007年にジャーナリストのシーモア・ハーシュは、アメリカ、サウジアラビア、イスラエルがシリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラに対する秘密工作を開始したと書いている。その秘密工作はオバマ政権下の2011年春に顕在化した。アル・カイダ系武装集団を使ってシリアやリビアを侵略、破壊と殺戮を始めたのである。ダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)はアル・カイダ系武装集団から派生した。ウクライナではネオ・ナチを使ってクーデターを実行、やはり多くのウクライナ国民を殺害、国土を荒廃させ、破綻国家にしてしまった。
 ネオコンは1992年2月、国防総省のDPG草案という形で世界制覇プランを作成している。いわゆるウォルフォウィッツ・ドクトリンだ。アメリカを唯一の超大国と位置づけ、アメリカの支配層を頂点とする支配システムを築こうといたわけである。そこには寛容さも多様性も存在しない。オバマはアメリカ支配層に従わない国々を恐怖で屈服させるためにアル・カイダ系武装集団、ダーイッシュ、あるいはネオ・ナチを使ってきたわけだ。アメリカは民主主義の破壊者だとも言える。
 こうした足跡を残したオバマだが、2008年の大統領選挙で彼が勝利した意味はある。その時の相手はジョン・マケイン。この人物は2013年にトルコからシリアへ密入国して反シリア政府勢力のリーダーと会談したが、その中にはアブ・バクル・アル・バグダディも含まれていた。後にダーイッシュを率いることになる人物だ。ウクライナではネオ・ナチの幹部に会い、クーデターを扇動している。このマケインが大統領になっていた場合、オバマよりひどい状況を作り出した可能性は小さくない。オバマを批判するだけでは問題を解決できない。それほどアメリカは腐敗しているということでもある。