2017年11月24日金曜日

森友 国有地値引き問題で検査院が報告 籠池夫妻 勾留が4か月に

「森友学園」への国有地売却でごみの撤去費用などとして8億円余り値引きされ問題で、会計検査院は「値引き額の算定方法には十分な根拠が確認できないごみの量国交省の推計値の3割から7割にとどま」などとする検査結果を22日、国会に提出しました。
 この問題を見過ごしにしなかっただけまだマシですが、実際のごみの量を3割~7割の範囲に認定したことは大甘のそしりを免れません。

 田中龍作氏は、「検査報告は国交省と近畿財務局を一応、悪者にした格好だが、ことの核心をズラしているとの見方もある」として、「森友・加計問題の幕引きを許さない市民の会」の告発状に示されている「地中のゴミによる値引き代はゼロでよい」という考え方を紹介しています。
 原告の一人 醍醐總名誉教授は、会計検査院はゴミの混入率など複雑怪奇な計算式を持ち込んだことで「袋小路に入ってしまっている」と指摘しています
 文中に「有益費」という当初から物議を醸した言葉が出てきますが、これは20155月の定期借地契約、賃借中に森友学園が土壌汚染地下埋設物の除去を行い土地の価値を増大させた場合はその除去費用を「有益費」の名目で国が支払うというもので、実際に2016年度末に13176万円を支払っています。

「市民の会」の告発の行方には注目したいと思いますが、会計検査院の報告は「問題点を指摘した」ということに留まりそうです。

 ところで不必要といわれている籠池泰典前理事長と妻の勾留は、真夏には蒸し風呂となる独房内ですでに4か月に及び、この間家族との面会も認められないでいますが、大阪地裁22日、またしても保釈を認めませんでした。2人は調べに対し黙秘しているということです。
 証拠隠滅等の惧れがなくとも検察が求める自供をしないことには釈放しないというのが「人質司法」の実態です。普通の人は一刻も早く家庭に戻らないことには収入が途絶え家族が生きてゆけなくなるため、検察が求めるままに泣く泣く無実のまま自供を強いられることになります。裁判所も検察と一体になって「人質司法」を成り立たせていることは、籠池夫妻の例でも明らかです。
 関係の記事を4本紹介します。

  お知らせ
    都合により25日、26日は記事の更新ができません。27日は午後更新します。
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森友 国有地値引き 「慎重な調査検討欠いていた」 検査院
NHK NEWS WEB 2017年11月23日
大阪の学校法人「森友学園」に国有地がごみの撤去費用などとして8億円余り値引きされて売却された問題で、会計検査院は「値引き額の算定方法には十分な根拠が確認できない」などとする検査結果を22日、国会に提出しました。独自に行った複数の推計では、いずれもごみの量が国土交通省の推計の3割から7割にとどまり、会計検査院は「慎重な調査検討を欠いていた」と指摘し改善を求めました。
去年6月大阪・豊中市の国有地が、地中のごみの撤去費用などとしておよそ8億2000万円値引きされ、「森友学園」におよそ1億3400万円で売却された問題では、会計検査院が、国会の要請を受けて検査を行い、22日国会に結果を報告しました。

最大の焦点の値引き額が適正だったかどうかについて、会計検査院は、ごみの撤去費用などの見積もりを依頼された国土交通省が、地中のごみの混入率をおよそ47%としたうえで、少なくとも3.8メートルの深さまでごみがあるなどと算定した方法は「十分な根拠を確認できない」と指摘しました。

検査院が、国土交通省が用いたデータをもとに、複数の別の方法で独自に推計を行ったところ、ごみの混入率については32%、ごみのある深さは2メートル以下となり、ごみの量は国土交通省の推計の3割から7割といずれも少なくなったということです。

検査院は「仮定のしかたによって、ごみの処分量の推計値が大きく変動する状況などを踏まえると、算定に必要とされる慎重な調査検討を欠いていた」などと指摘し、今後、適切に算定するよう改善を求めました。

一方、適正と考えられる値引き額については必要な資料がなく、検証が難しいとして報告書には盛り込まず、検査院は「値引き額は仮定のしかたによって変わるもので、いくら損をしたか責任を持って示すことはできない」としています。


【森友値引き】核心をずらした会計検査院報告はガス抜きに使われる
田中龍作ジャーナル 2017年11月22日
 会計検査院までもが安倍首相の意向を忖度するようになったのだろうか。
 国有地が学校法人・森友学園に8億円値引きされて売却された問題で、会計検査院はきょう、国会に検査報告を提出した。
 「値引き額の算定基準が十分でない」「資料が保存されておらず検証が十分に行えない」などと一見厳しい。問題の中心であるゴミについては「国土交通省の推計の3割から7割しかない」とした。
 検査報告は国土交通省と近畿財務局を一応、悪者にした格好だ。だが事の核心をズラしているとの見方もある。

 森友学園への国有地売却問題で1円の値引きをする必要もなかったのにゴミ処理の名目で8億1900万円の値引きをして、国に損害を与えた ― 市民団体が近畿財務局の美並義人局長を背任の疑いで、きょう、東京地検に告発した。
 告発をしたのは「森友・加計問題の幕引きを許さない市民の会」。告発状によるとこうだ。

地下埋設物(ゴミ)は2層に区別される。深さ①「0~3・8m」と②「3・8~9・9m」だ。
①「0~3・8m」のゴミ
  森友学園との借地契約時代に有益費として国は支払い済み。
②「3・8~9・9m」のゴミ
校舎建設の支障になるようなゴミはなかった。原告らは工事関係者から証言を得ている
実際、工事は進み校舎は出来上がった。

 そもそも、ゴミの撤去にからんで国は森友学園に1円も払う必要がなかったのである。にもかかわらず会計検査院は「(ゴミは)3割~7割しかない」としている。つまり3割~7割は払う必要があったというのだ。

 原告の一人で、醍醐總・東大名誉教授(会計学)は、会計検査院はゴミの混入率など複雑怪奇な計算式を持ち込んだことで「袋小路に入ってしまっている」と指摘する。
「国交省を担当している会計検査院のスタッフがそんなことも知らないのか、と驚く。本当に手抜きなくやったのかなという疑問すら持っている」。
「(会計検査院は)本質的、核心的な部分からズレた、それがわからなかったふりをしているのか、本当に分からなかったのか。およそプロの検査とは私には思えない」。
 会計検査院の指摘は膨大だ。次期通常国会で野党は同院の指摘に沿って安倍政権を追及していくのだろうが、袋小路にはまり込むことは必定だ。追及は不発に終わるだろう。
  “正義の指摘” はガス抜きの匂いがする。
~終わり~

籠池夫妻の保釈申請認めず
NHK 関西NEWS WEB 2017年11月23日
学校法人「森友学園」をめぐる事件で、詐欺などの罪で起訴され4か月近く勾留されている籠池泰典前理事長と妻の保釈の申請について、大阪地方裁判所が、22日、保釈を認めない決定をしたことが関係者への取材で分かりました。

森友学園の前の理事長の籠池泰典被告(64)と妻の諄子被告(61)は、▽大阪・豊中市で進めていた小学校の建設工事に対する国の補助金や▽学園が運営する大阪・淀川区の幼稚園に対する大阪府や大阪市の補助金をだまし取ったなどとして詐欺などの罪で起訴されています。
だましとった補助金の総額は1億8000万円余りにのぼるとされ、関係者によりますと2人は調べに対し黙秘しているということです。

2人はことし7月末に大阪地検特捜部に逮捕されて以来、4か月近く大阪拘置所で勾留されていて、弁護士は保釈を申請していましたが、大阪地方裁判所は22日、保釈を認めない決定をしたことが関係者への取材で分かりました。
2人については裁判の前に争点や証拠を絞り込む「公判前整理手続き」が始まっていますが、初公判の日程などはまだ決まっていません。


勾留中の籠池夫妻 大阪拘置所で蒸し風呂“独房生活”の過酷
日刊ゲンダイ 2017年8月5日
 森友学園の補助金不正受給問題で、詐欺の疑いで逮捕された前理事長の籠池泰典容疑者と諄子容疑者。検察の取り調べに対し、一部黙秘を続けているというが、勾留されている大阪拘置所内はかなり過酷のようだ。

 この時季の大阪市内の最高気温は35度を超える。湿気ムンムンのうだるような暑さの中、2人はエアコンもない広さ3畳程度の中で独房生活を余儀なくされているようだ。
「東京や立川の拘置所の独房にはエアコンが設置されているのですが、大阪は送風機だけで、エアコンは完備されていないと聞きました。接見に行った弁護士は『ここは暑すぎる』と収容者から愚痴ばかり聞かされるそうです」(在阪ジャーナリスト)

 郵便不正事件で逮捕されたものの、証拠のでっち上げが発覚し、無罪が確定した村木厚子元厚労次官は大阪拘置所に160日以上も勾留された。村木氏はその時の状況を著書で〈24時間、カメラに監視される〉とつづっている。

 酷暑の中で狭い独房に閉じ込められ、厳しい監視下に置かれていれば、どんなにタフな人間でも精神的に追い込まれてしまうだろう。2人の代理人を務める弁護士にそれぞれ今の拘置所暮らしの様子を聞いたが、そろって「答えられない」と回答した。

 元大阪高検公安部長の三井環氏はこう言う。
「検察にとって真夏は勾留するのに“グッドタイミング”。収容者の中には、厳しい暑さの中でロクに睡眠をとれない人もいる。精神的にも身体的にも弱っていくと、長い取り調べにも耐えられなくなってきます。解放されたい一心で、意思に反する自白をするケースもあるでしょう。こういった人権を無視したような手法は許されません」

 疑惑の“本丸”は補助金不正受給ではなく、財務省の「国有地8億円値引き」問題だ。大阪地検は証拠隠滅の恐れがある財務省職員をさっさと捕まえるべきだ。

拉致被害家族の会も“圧力一辺倒”の安倍外交に異論

 北朝鮮が2か月間ミサイル試射と自制したことから、一旦は米・朝会談の機が熟したのではという雰囲気が生まれましたが、トランプ米大統領は20日、突如北朝鮮を9年ぶりにテロ支援国家に再指定しましたこれにより大規模な対北朝鮮追加制裁が加わりますが、安倍首相が一もにもなくそれに賛成するのは明白です。

 横田早紀江さんは、このところ対北朝鮮“圧力”一辺倒の安倍首相に対し、「金正恩とケンカじゃなく話し合いをして欲しい」と注文をつけています。口先だけで、成果ゼロの安倍首相に不信感を強めているのでしょう。ひとり早紀江さんだけではなく、他の被害者家族も「安倍首相に訪朝して欲しい」と声を上げていますが、首相にそんな気持ちはさらさらありません。

 元家族会事務局長の蓮池透氏は、「家族会『安倍さんに頼るしかない』と思うのは間違いで、安倍さんだから解決しないのです。早く見切りをつけないと、時間がありません」と、一貫した思いを明らかにしています。

 それとは別に北朝鮮から帰還した蓮池薫さんは17日、新潟で講演し、
日本政府はかなりの生存者情報を手に入れていると聞いている。だから、今は再調査なんていう、まどろっこしいことは言わずに、生きている人を返せと伝え、その上であなたたちは何を求めているかと踏み込んだ交渉をすべきだ」、「拉致問題くのは日本政府が何か決断した時だ。拉致被害者を救うためには北朝鮮に見返りのものを与えるのはやむを得ない。その点を理解した上で、今後も拉致問題に声援を送ってほしい」と訴えました。

 日本政府かなりの生存者情報を手に入れているというのがもしも本当であれば(「救う会」はいつもその種のことを「家族の会」に吹き込んでいるようです)、「まず拉致被害者全員の消息を明らかにさせる」という原則にいつまでも拘っている場合ではなくて、生存している人たちを帰還させるのが最優先事項になります。
 その際には、かつて日本が韓国に対して行った戦争による加害への賠償に見合うものを、当然 北朝鮮から暗に要求され、それが事実上の条件になるでしょう。
 アメリカは当然反対することでしょうが、拉致被害者を救うためにどういう形で応じることが出来るのかについて、アメリカと具体的に詰めるのが日本政府の仕事です。
 安倍首相がその任に全くふさわしくないことは言うまでもありません。
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ついに横田早紀江さんも “圧力一辺倒”の安倍外交に異論
日刊ゲンダイ 2017年11月23日
 もう、ガマンの限界なのだろう。横田めぐみさんの母・早紀江さん(81)が、安倍首相の“北朝鮮外交”に異を唱え、波紋を呼んでいる。“圧力”一辺倒の安倍首相に対し、「金正恩とケンカじゃなく話し合いをして欲しい」と注文をつけたのだ。ほかの被害者家族も、21日、「安倍首相に訪朝して欲しい」と声を上げている。さすがに、いつも口先だけで、成果ゼロの安倍首相に不信感を強めているのだろう。

 アメリカが北朝鮮をテロ支援国家に再指定したきのう、拉致被害者の家族からは、効果を期待する一方、日本政府に具体的な取り組みを求める声が相次いだ。
 市川修一さんの兄・健一さん(72)は、圧力の必要性を認めつつも「首相に訪朝してほしい。歯がゆい思いをしているのは家族だ」と焦りをにじませた。
 5年たっても進展ゼロの安倍首相に対して、具体的なアクションを期待する気持ちが強まっているのは間違いない。

 先週(18日)は、早紀江さんまでが、新潟市内の集会で800人を前にこう発言している。
「安倍総理が平壌に行き、金正恩とケンカじゃなく、ちゃんとした話し合いをしてくれたらありがたい」
 あの早紀江さんが安倍首相に注文をつけるのは、よほどのことだ。

 安倍首相の圧力一辺倒は拉致問題の解決を遠ざける――。これまで「拉致の安倍」に全幅の信頼を寄せてきた被害者家族も、言い方は柔らかいが、安倍首相の無策に失望と不信感を強めているのだろう。

■もう政治利用は許されない
「この5年間、安倍政権下で拉致問題は一歩も進んでいません。家族が年を重ねただけです。被害者家族の中に『自分たちは安倍首相に政治利用されているだけではないか』という不信感が芽生えてもおかしくありません。安倍首相を信じたいと思っている家族らも、たまりかねて対話を訴え始めたということでしょう」(政界関係者)

 元家族会事務局長の蓮池透氏がこう言う。
「あれでも早紀江さんは、安倍首相に遠慮して、感情を抑えて発言したのだと思います。安倍首相には圧力だけでなく、対話を含めて行動を起こしてもらいたいと願っているはずです。圧力一辺倒では、展望は全くありません。拉致問題は対話でないと解決できないからです。家族会は『安倍さんに頼るしかない』というスタンスなのでしょうが、違います安倍さんだから解決しないのです早く見切りをつけないと、時間がありません

 拉致問題を政治利用する安倍首相の罪は重い。


「日本政府は踏み込んだ交渉をすべきだ」
〜拉致被害者・蓮池薫さん講演会
    金子通 レイバーネット 2017年11月22日
 新潟では、横田めぐみさんの拉致事件が発生してから40年が経ち、地元紙である新潟日報は「拉致問題の解決を願う一週間」として、さまざまな取組を行っている。11月17日、新潟日報メディアシップにおいて、帰国から15年を迎える拉致被害者・蓮池薫さんを招いた講演会「帰国15年~いま、拉致問題について考えること」が開催された。

 蓮池さんは、講演会冒頭「拉致問題については少し光明が見えたのではないかと思っている。拉致問題は3年前、ストックホルム合意で今度こそ解決するのではないかという期待があった。しかし、結局何の進展もないままになっている。しかし、私が聞いているところでは、水面下ではかなり熾烈な駆け引きが行われている。私は北朝鮮の再調査という段階は終わりにすべきだと思う。日本政府はかなりの生存者情報を手に入れていると聞いている。だから、今は再調査なんていう、まどろっこしいことは言わずに、生きている人を返せと伝え、その上であなたたちは何を求めているかと踏み込んだ交渉をすべきだ」と述べた。

 講演会では、拉致された当時の状況や朝鮮における日常生活、帰国後の思いについて語った上で、日朝交渉について、日本政府の対応について理解を示しつつ「日本は北朝鮮に対して、拉致問題に対する見返りも考えないといけない」と述べ、講演会の終わりに「残された拉致被害者は15年間待たされている。精神的にどれだけつらいか。時間はまったなしだ。やはり拉致問題は動きます。それは日本政府が何か決断した時だ。犯罪者に見返りなどとんでもないということになるかもしれないが、拉致被害者を救うためにはやむを得ない。外交交渉とはそういうものだ。その点を理解した上で、今後も拉致問題に声援を送ってほしい」と訴え、終了した。

 日本国内では、朝鮮の脅威ばかりが強調されるが、圧力一辺倒の外交政策で拉致問題は進展していない。日朝両国政府の思わくや立場はさておき、日朝交渉を再開させ、拉致問題の一刻も早い解決をすべきだ。

24- 安倍政権のあまりにグロテスクな少子化対策

 安倍政権が選挙で打ち出した「教育無償化」の全体像が一向に示されない中で、2018年度所得税改革において、年収800900万円を上回る子どもがいない世帯に増税する案検討されいます。
 これは明らかに「子どもを産まない/産めない人」への差別ですべての人には、子どもを産むことも、いつ産むのか、何人産むのか、そして産まないという選択をする権利(=リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)を蹂躙するもので戦前回帰を目指す安倍首相が、あたかも戦時体制下の1941年に閣議決定した「人口政策確立要綱」を継承しようとしているかのように見えます。
 いずれにしても、これをもって少子化対策にしようなどというのは言語道断です。

 安倍政権は、現に2013年から国の予算を使って都道府県による婚活支援、いわゆる「官製婚活」を進めている一方で、“家族はこうあるべき”と押し付ける「家庭教育支援法案」を提出する予定ですが、これはまさに戦前がそうであったように、国家による個人生活や家庭への介入です。
 そのうえ山東昭子・自民元参院副議長が「子供を4人以上産んだ女性を厚生労働省で表彰してはどうか」と発言するに至っては、もうお笑いというしかありません。

 LITERAの「 ~ 安倍政権のあまりにグロテスクな少子化対策」を紹介します。
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4人以上子どもを産んだ女性を表彰し、子どものいない世帯は増税!
安倍政権のあまりにグロテスクな少子化対策
LITERA 2017.11.22
 安倍自民党が選挙で打ち出した「教育無償化」が嘘八百であったことを昨日の記事でお伝えしたが、じつはもうひとつ、政府がとんでもないプランをぶち上げた。
 2018年度税制改正の主要テーマである所得税改革において、年収800~900万円を上回る子どもがいない世帯に増税とする案を検討しており、今月下旬から議論を進めるというのだ。
 子育て世帯への支援というかたちではなく、子どもがいる世帯と子どもがいない世帯を区別して、いない場合は増税を課す──。これはあきらかに「子どもを産まない/産めない人」への差別ではないか。
 それでなくても日本は、「女性は子どもを産んで当然」という圧力が強い。その一方、不妊に悩む男女カップルは増加傾向にあり、結果として断念する人も少なくない。そうした人たちに「子どもがもてなかったから」と増税しようというのは、傷口に塩を塗るようなものだ。

 いや、そもそもすべての人には、子どもを産むことも、いつ産むのか、何人産むのか、そして産まないという選択をする権利がある。これはリプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康/権利)という概念で、国連で認められた人権のひとつだ。
 こうした権利を守るためには、本来、子を産む人も産まない人も公平になる制度をつくることが求められる。しかし、産まれてくる子どもには生存権があり、生活水準の確保や教育を受ける権利がある。そのための子どもに対する社会保障や子育て支援は充実させるべきだ。だがそれを、子どもをもたなければ税金を課すというかたちで「分断」しようとすることは、産む/産まないの権利を蹂躙する言語道断の政策だ。

安倍政権の少子化対策は、戦時中の「産めよ殖やせよ」「産児報国」とソックリ
 その上、腹立たしいのは、この増税案の目的が少子化対策であるだろうことだ。さんざん指摘されつづけているように、少子化を食い止めたいと本気で考えているのならば、まずは待機児童問題の解消をはじめ、女性が仕事と育児を両立しやすい環境づくりや、男女ともに不安定雇用や長時間労働の見直し、男性の育児参加、選択的夫婦別姓制度の導入、さらに未婚でも産みやすい社会──男女の賃金格差の是正、同棲や事実婚を法律婚と同様の保護を与える──などを押し進めるのが筋だろう。

 にもかかわらず、そうした必要な整備とは逆行する決定をおこなってきたのが安倍政権だ。2017年末までに待機児童を解消するという公約はあっさり破られ、非正規雇用は増加の一途を辿り、国会で上程予定の「働き方改革関連法案」では、時間外労働の上限規制を過労死ラインの月80時間を超える「月最大100時間未満」。こうして「まずやるべきこと」からどんどん離れた上、「増税対象となるなら産もうという人も増える」などと本気で考えているのだとしたら、まともな政治とは到底言えない。
 だが、もっと恐ろしいことがある。人権を蹂躙する増税案を打ち出そうという安倍政権の「少子化対策」が、戦時中の「産めよ殖やせよ」「産児報国」とよく似ていることだ。
 戦時体制下の1941年、政府が閣議決定した「人口政策確立要綱」では、人口増を目指すべく、上昇中だった平均婚姻年齢を3年早め、21歳ごろには結婚し、夫婦あたり平均5人を産むという目標を立てた。そこで実施されたのは、公営機関による結婚の斡旋(現在の婚活サービス)や学校での母性教育、子どもが多い家庭への優遇策、そして個人主義を不健全な思想として排除することだった(参考:荻野美穂『「家族計画」への道─近代日本の生殖をめぐる政治』岩波書店)。

 この「人口政策確立要綱」が閣議決定されたあとの朝日新聞1941年1月23日付)には、こんな文言が躍っている。
従来の西欧文明に蝕まれた個人主義、自由主義の都会的性格がいけないのだ。自己本位の生活を中心にし子宝の多いことを避ける都会人の多いことは全く遺憾至極である〉
 個人主義を自己本位だと叩くあたりは、安倍政権を熱烈に支持し伝統的家族の復権を謳う日本会議系の極右論壇人とまったく同じだが、こうした「産めよ殖やせよ」の思想は安倍政権が継承しているものだ。

子どもを4人以上生んだ女性を表彰し、子どものいない世帯は増税し処罰
 たとえば、2015年9月に『直撃LIVE グッディ!』(フジテレビ)に菅義偉官房長官が出演した際には、福山雅治と吹石一恵の結婚について、こう語っている。
「ハハハ、ほんとうよかったですよね。結婚を機に、やはりママさんたちが、一緒に子どもを産みたいとか、そういうかたちで国家に貢献してくれればいいなと思っています。たくさん産んでください」
 このとき、福山と吹石は結婚しただけで、妊娠はしていない。結婚と聞いてすぐに出産を当然のように前提とすること自体が批判されるべきだが、それ以上に、子どもを産むことを「国に貢献」することだと明言してしまう神経を疑わざるを得ない。つまり、女は「産む機械」であり、子を産まない女は「国家に貢献」しない“役立たず”だと考えていることがよくわかるエピソードだ。
 また、安倍政権は、2013年から国の予算を使って都道府県による婚活支援、いわゆる「官製婚活」を進めている。一方、国会では“家族はこうあるべき”と押し付ける制度「家庭教育支援法案」を提出する予定だ。こうした動きは、国家による個人生活や家庭への介入であり、先に述べた戦時下の体制とそっくりである。

 挙げ句、昨日開かれた自民党役員連絡会では、山東昭子・自民党元参院副議長が「子供を4人以上産んだ女性を厚生労働省で表彰することを検討してはどうか」と発言したというのだ(朝日新聞デジタルより)。
 子どもを多く産んだ人は政府が表彰し、子どもをもたない世帯へは増税する──。「少子化対策」という名のもとに実行しようとしているのは、「子をもうけない」ことが何かに違反しているかのように増税で処罰するというかたちをとることで、子をなさないことを非難対象にすることなのだろう。
 下劣極まりないこの増税案には今後も強く反対していきたいが、それにしても、この国はついに、こんなところまで来てしまったのだ。まさに「どん底」政治と呼ぶべきだが、ここから這い上がることははたしてできるのだろうか。 (田岡 尼)

2017年11月23日木曜日

野党超党派で徹底追及 “詩織さんレイプ事案”

 ジャーナリストの伊藤詩織さんが訴えているレイプ被害への捜査や、検察審査会のあり方を検証する国会議員による「超党派の会」が、ようやく21発足し20人が出席しまし(自民・公明は不参加)
 伊藤詩織さんが、飲食後 前後不覚(薬物によると推定)になりその状態で元TBS記者・山口敬之氏にレイプされたと訴えている準強姦容疑事件は、官邸の関与が推測され山口氏が逮捕される寸前に警視庁の中村格刑事部長(当時)からの指示逮捕が中止になったことをはじめとして、様々に不明朗なことが重なっていますが、「官邸マター」のためか殆どのメディアが二の足を踏み、報道することさえも避けるという状況で経過しました。

 メディアもそうですが、この官邸が関与して逮捕を免れさせた疑いの強い事案を、国会議員たちがこれまで放置していたことは解せませんでしたが、この度ようやく森ゆうこ・事務局長(自由党)田村智子(共産党)福島みずほ(社民党)など女性議員9人が呼びかけ人となり超党派の会を立ち上げました。
 会の名称は「『準強姦事件逮捕状執行停止問題』を検証する会」で、官邸の関与が強く疑われる「逮捕状執行委停止問題」が当面中心のテーマになるようです。

 この事案では、所轄の警察署が山口氏の逮捕状を取り、彼が帰国する空港に警察官を配置するところまで進んだのですが、そこに突然警視庁の中村格刑事部長(当時)からの指示が入り、逮捕が中止になりました。
 これについて元東京地検特捜部副部長若狭勝氏は、「この種の犯罪で、所轄警察署が入手した逮捕状について、警視庁本部刑事部長がその逮捕状の執行をストップすることは通常絶対にあり得ない」と断言しています。
 山口氏も中村氏も共に官邸とは親しい関係にあるので、寸前での逮捕中止に官邸が関与した疑いが持たれる所以です。

 21日に警察庁と法務省からヒアリングを行い、山口氏への逮捕状が逮捕直前に執行停止になった経緯について糺した際に、記者出身で警察司法回りを4年間経験した杉尾秀哉議員(民進)は警察官僚の説明に対して、
「逮捕停止をすることはあり得るというが、刑事部長の一存で執行停止したのを聞いた事は一件もない。極めて特異なケースであるということをまず認めなければこの会は成立しない」
と批判しました。それに対して警察官僚はまともに反論できませんでした。

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ようやく本腰 野党超党派で“詩織さんレイプ事案”徹底追及
日刊ゲンダイ 2017年11月22日
 「記録にない」「記憶にない」の繰り返しになってしまうのか――。
 21日、参院議員会館で、野党議員が超党派で「『準強姦事件逮捕状執行停止問題』を検証する会」を立ち上げた。
 安倍首相と昵懇の元TBSワシントン支局長の山口敬之氏(51)が、ジャーナリストの伊藤詩織さん(28)を2015年4月にレイプしたとする疑惑が主眼だ。

 呼びかけ人は、自由党の森ゆうこ参院議員や立憲民主党の阿部知子衆院議員、希望の党の柚木道義衆院議員ら8人。維新も含めて全野党が、きのうの検証会に参加し、警察庁と法務省からヒアリングを行い、山口氏への逮捕状が逮捕直前に執行停止になった経緯についてただした。
 この問題の最大の焦点は、警察上層部がレイプ事件の捜査に介入し、山口氏の逮捕にストップをかけたのかどうかだ。レイプを告発された山口氏が、安倍首相と極めて親しいために、疑いを招いている。
 ところが、省庁側は、この日も「個別事案についてはお答えできない」の一点張り。逮捕状の執行停止を「決裁」した中村格警察庁総括審議官(当時、警視庁刑事部長)の「決裁文書」については、「把握していない。文書を残すかどうかは場合による」(警察庁)と答え、議員らが「オカシイよ、それ!」と語気を強める場面があった。

 詩織さんが、レイプ事件を訴えてからすでに半年。やっと全野党が超党派で結集して“詩織さん事案”の追及に本腰を入れ始めた形だ。それにしても、なぜ、野党の動きはここまで遅れたのか。
「恐らく理由は2つです。1つは、今年9月に検察審査会で『不起訴相当』の判断が下され、刑事事件としては一応の決着がついたこと。もう1つは、民進党が事実上解党したことで追及しやすくなったことでしょう。事件を握りつぶした張本人と言われている中村格総括審議官は、民主党政権時代に官房長官秘書官を務め、自民が政権を奪取した後も留任している。民進党は、民主政権時代の弱みを握られているからか、あるいは恩義があるのか、これまで中村氏の捜査介入疑惑について国会で大きく取り上げられなかったようです」(永田町関係者)

 要するに、民進党が分裂した今、中村氏に“忖度”する必要はなくなったというワケ。今後、国会の場で焦点となるのは、まさに「不当介入があったか否か」である。どこまで証拠を出させることができるか、野党の本気度にかかっている。


詩織さん事件】総理守り抜く警察官僚 森ゆうこ議員「官邸と相談してください」
田中龍作ジャーナル 2017年11月21日
 準強姦の逮捕状が発行されていながら、被疑者がアベ友のTBS記者であることから警察幹部が逮捕状を握りつぶした -
 いわゆる「詩織さん事件」を追及する超党派の議連がきょう、発足。警察庁と法務省からヒアリングをした。

 警察庁捜査一課を名乗る官僚は冒頭から「東京地検に送致した、不起訴相当と承知している。警察庁としては申し上げかねる」と答えた。済んでしまった事件だからもう言う必要はない、という理屈だ。

 高輪警察署の捜査員はTBS記者・山口敬之の逮捕状を用意しながらも、警視庁刑事部長の指示で逮捕を見送った。
 これについて警察官僚は「逮捕状を取得した後でも証拠を精査した際、執行停止にすることはある」とかわそうとした。
 だが記者出身の杉尾秀哉議員(民進)は、ゴマカシを見逃さなかった。杉尾議員は記者時代に警察司法回りを4年間経験しているからだ。
 「停止をすることはありうるとおっしゃいましたが、寡聞にして執行停止、知らない。刑事部長の一存で執行停止、私はこんなことは少なくとも聞いた事は一件もない
 よくあることのように仰るが全く事実に反する。極めて特異なケースであるということをまず認めなければこの会(超党派の会)は成立しない」。
 警察官僚は杉尾議員の追及にまともに反論できなかった。
「山口の事件じゃなかったら所轄(高輪警察署)の事件だよ」。杉尾議員は断言した。

 実際、準強姦で警察本部(東京の場合、警視庁)が捜査に口を出すことはない・・・多くの警察OBが証言している。例えば小野次郎氏など。
 山口敬之著『総理』(幻冬舎)が発売されたのは2016年6月9日。不起訴が決まる1ヵ月以上も前だ。
 著作の発行人はこれまたアベ友の見城徹。不起訴になることが分かっていて発行したのである。起訴されれば莫大な損失となるからだ。
 ヨイショ本『総理』の発売までの時系列が、権力犯罪であることを証明している。

 議連事務局長の森ゆうこ議員(自由)が釘を刺すのを忘れなかった。
「個別の案件につき対応できないといういつもの言い訳は、今回通用しない。きちんとした説明で国民の疑念を晴らす。説明責任というのが今、求められている。だからここで答えられないと言って帰ってしまうのではなく、官邸と相談して下さい」。
 警察官僚は「官邸に相談する必要ない」と突っぱねた。あくまでも官邸の関与を否定する構えだ。安倍一強の中核を占める警察機構が、力づくで権力犯罪を揉み消してしまうのだろうか。
~終わり~

安保法制密約記録漏洩の嫌疑で 自衛隊内で査問 被疑者は告訴

 自衛隊の情報部に情報将校として勤務していた大貫修平3等陸佐(42)は、2015年9月中旬、突然身に覚えのない「自衛隊機密文書漏洩」の容疑をかけられ、窓のない部屋に案内され休憩もなく水飲ませてもらえない状態で、3時間以上もポリグラフ検査をされました。
 その後も犯人と決めつけた取り調べが昼過ぎから午後10時まで続けられ、挙句に自宅や実家まで家宅捜索され、最終的に総務部庶務係という情報統合部内の閑職へ左遷されました。

 その機密文書というのは、12年末に渡米した河野克俊統合幕僚長米軍高官と会談した際に、安保法制(戦争法)について与党内の協議すらなかった時期に、15年夏ころまでに成立すると米軍高官言明したことが記録されたもので、戦争法案をめぐる国会審議が大詰めを迎えた15年9月に、共産党の仁比聡平参院議員が国会で防衛省の内部文書を示して追及したものでした。
 それに対して中谷元・防衛相(当時)は「文書は確認できておりません」と答弁し、その後、安倍首相も中谷氏も「同一のものの存在を確認できなかった」と否定しました。

 大貫氏は隊内の取り調べに対して一貫して否認を貫き潔白を主張しました。それでも警務隊によって送検されましたが、嫌疑不十分で不起訴になりました。
 今年3月に大貫氏は、「身に覚えのない内部文書の漏洩を疑われ省内で違法な捜査を受けた」として国に慰謝料を求める国家賠償請求訴訟を地裁に起こしました。

 現在地裁で審理が進められていますが、政府が存在しないとした文書を「漏洩」するということはそもそもあり得ない話です。
 大貫さんの代理人の弁護士が自衛隊警務隊と東京地方検察庁から聴取したところでは、漏洩したとされる「秘密」が何かの説明はありませんでした。それを明らかにすると政府が虚偽答弁したことが明確になるために出来ないわけです。
「秘密」が特定されないのに大貫さんに嫌疑をかけること自体許されないことです。

 政府や官僚による事実の隠蔽や文書を不存在として隠蔽することはもうあまり珍しいことでなくなってしまいましたが、秘密保護法違反事件の捜査ではこうしたケースが頻出することになります。特定秘密保護法の審議の際に当初から指摘されていたことです。

 LITERAがこの問題を取り上げました。
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自衛隊の現役情報将校が怒りの実名告発!
“自衛隊統幕長と米軍の安保法制密約記録”漏洩の嫌疑をかけられ…
LITERA 2017.11.22
 戦後日本の防衛を180度転換し、集団的自衛権の行使を可能にした安保法制。その安保法制が強行成立した2015年の晩夏、国会で飛び出した衝撃の“安保法制密約記録”のことを覚えているだろうか。
 防衛省の内部文書であるこの記録には、自衛隊制服組トップである河野克俊統合幕僚長が、2014年12月の衆院選直後に訪米した際、米陸軍のオディエルノ参謀総長に対し、こう説明していたと記されていた。
 オディエルノ「現在、ガイドラインや安保法制について取り組んでいると思うが予定通りに進んでいるか? 何か問題はあるか?」
 河野「与党の勝利により来年夏までには終了するものと考えている」(2014年12月17日の会談)

 この文書は同年9月2日の参院特別委で、共産党の仁比聡平議員によって暴露されたのだが、ようするに、日本の行政府や立法府による決定よりもはるか前に、日米軍部間で安保法制の成立が決められていたことを意味していた。言い換えれば、国民が選出した国会議員による議論をまったく経由せぬまま、制服組トップが勝手に集団的自衛権等の法制化をアメリカ側に約束していたわけである。まさにシビリアンコントロールの欠如と言わざるをえない。
 内部文書が事実ならば、当然、河野統幕長は更迭、内閣も総辞職するほどの大問題だ。しかし、国会で追及された当時の中谷元防衛相は、「資料がいかなるものかは承知をしておりません」「御指摘の資料は確認をできておりません」と答弁。安倍首相も同年9月11日の参院特別委で「仁比委員が示された資料と同一のものの存在は確認できなかったものと認識しております」と強弁した。つまり、政府は“文書は存在しない”と言い張ることで、事態の収拾を図ったのである。

 ところが一方、防衛省・自衛隊内は、この爆弾内部文書の“犯人探し”に躍起となっていた。そして「犯人」と決めつけられた現役自衛官が、今週発売の「サンデー毎日」(毎日新聞社)12月3日号で、ジャーナリスト・青木理氏のインタビューに応じ、その内実を実名告発したのである。

存在しないはずの安保法制密約記録めぐり自衛隊内で厳しい取り調べが
 実名告発したのは、防衛省情報本部の3等陸佐・大貫修平氏。1997年、大学卒業後に陸自入り。技術系の幹部自衛官として経験を積み、2014年8月に情報本部統合情報部に配属されたいわば“情報将校”。情報本部とは〈各種情報を集約のうえ総合的に処理・分析し、国際軍事情勢等防衛省・自衛隊全般を通じて必要となる戦略的な情報を作成することを基本的業務〉(防衛省HP)とする情報機関だ。
 大貫氏は、仕事の性質上、さまざまな機密文書にも携わる立場。特定秘密保護法に基づく秘密も日常的に扱い、特定秘密の登録作業や複製を背広組に届ける作業などもあった。問題の内部文書については、河野統幕長の訪米後、統幕側の3佐からメールで会話記録を受信し、通常業務として部内に転送しただけであり、自衛隊内で「犯人」扱いされたのは濡れ衣だと訴えている。

 大貫氏が最初に呼び出されたのは、問題の内部文書が飛び出した国会質疑からまもない2015年9月中旬から末。自衛隊内の司法警察である警務官から、「文書が流出したのを知ってるか」「国会の件は知ってるか」などと聞かれたという。しかし、同年11月、再び警務隊からの呼び出された大貫氏は、過酷な聴取を受けることになった。青木氏に対して、その時の様子をこのように語っている。
「昼過ぎに中央警務隊に行くと、窓のない部屋に案内され、白衣の隊員に『ポリグラフ(嘘発見器)検査を受けてもらう』と告げられました」
 電極のようなものをつけられ、休憩もなく、水さえ飲ませてもらえない環境のなか、ポリグラフ検査は3時間以上も続いた。まるで戦中のスパイをあぶり出す残酷な自白強要さながらだが、その後も「お前が犯人なのはまちがいない」と決めつけた取り調べが、昼過ぎから午後10時まで続けられたという。さらに組織は陰惨な仕打ちを見舞った。自宅や実家まで家宅捜索しただけでなく、大貫氏を総務部庶務係という情報統合部内の閑職へ飛ばしたのだ。

「やってもいないことを認められるわけがありません」(大貫氏)
 それでも、大貫氏は否認を貫き、潔白を主張した。実際、大貫氏は警務隊によって送検されるも嫌疑不十分で不起訴になっており、今年3月には「身に覚えのない内部文書の漏えいを疑われ省内で違法な捜査を受けた」として国に慰謝料を求める国家賠償請求訴訟を地裁に起こしている
 本サイトは、内部文書のリークがすぐさま罪に問われる現状に対して批判的だが、それは別にしても、大貫氏が青木氏に語った状況などを踏まると、彼が文書を漏洩したとはちょっと考えづらい。大貫氏は、青木氏の「重要情報をリークする気になれば、もっと機微なものをリークすることもできた」との質問に対して「そうですね。いくらでもできたでしょう」と答えているし、少なくとも、仮に大貫氏が文書の出どころだとしたら、自身も真相を追及される訴訟を起こすのは、普通、ありえないはずだからだ。

冤罪捜査の背景に文書をなかったことにしようとする安倍官邸の意向
 逆に言えば大貫氏は、防衛省・自衛隊の何らかの意図で、無理やり内部文書流出事件の“スケープゴート”にされた可能性が極めて高い。重要なのは、政府が「存在は確認できなかった」と言い張っていた内部文書の存在を前提に防衛省が犯人探しをしたという歴然たる事実だ。
 青木氏も記事のなかで指摘しているが、これは当初「破棄した」と答えていた南スーダンPKO派遣をめぐるデータが実際には隠蔽されていたという自衛隊日報問題や、行政が「記録はない」「記憶にない」を連発している森友・加計学園問題を彷彿とさせる事件だ。その背景には、官邸の意向を忖度した官僚たちが、政権幹部を徹底してかばい、不利な情報を葬り去ろうとしているという状況がある。

 実際に、大貫氏の冤罪事件をめぐっても、やはり官邸の影が見え隠れしている。
 提訴を報じた新聞記事にはこうある。訴状などによれば、大貫氏がメールで部内に転送した河野統幕長の会話記録等は、電子データで各職員が保管していた。そのときは「取扱厳重注意」というカテゴリーだったが、しかし、国会で内部文書が暴露された翌日、統合幕僚監部は文書を「秘文書」に指定し、その後、各職員に削除を命じていたというのだ。さらに、大貫氏は警務隊から「これは官邸マターだから協力しろ」「行政府の長が怒っている」といった言葉も浴びせられたという。
 ようするに、安倍首相らが国会で「文書は確認できなかった」と言ったから、それを防衛省が忖度して、実在する文書をなかったことにするため動いた。そういう構図としか思えない。
 事実、しんぶん赤旗2017年10月23日によれば、これまで裁判の口頭弁論で、大貫氏側が文書について事実確認を求めても、被告の国側は「捜査中」を理由に認否を拒んできたという。ようするに、漏洩されたとする文書が「存在した」と言えば、安倍首相らの虚偽答弁と、日米軍部が事前に安保法制の約束をしていたことを認めることになる。一方で「存在しない」と言えば、大貫氏への聴取や送検は事実がまったくないまま吊るしあげたことになる。どちらにしても矛盾するから、国側は文書やその内容の認否を明らかにできない。そういうことらしい。
 “存在しない”はずの内部文書が「官邸マター」として捜査され、無実の幹部自衛官が身代わりとして処罰される──。まるで出来の悪い冗談だが、安倍政権のもとではこんな異常事態が現実に起きているのだ。
 青木氏による大貫氏のインタビューは、次週の「サンデー毎日」にも掲載が予定されている。国会での発覚後の秘文書指定や削除指示など隠蔽の事実、官邸を忖度した歪な防衛省・自衛隊の実態、そして文書が証明している日米の危険な軍事一体化についても、さらに踏み込んでいくだろう。注目しつつ、まずは発売中の同誌を読んでもらいたい。(編集部)