2016年12月19日月曜日

19- 西側の対ロシア経済制裁の理不尽

 プーチンの来日によっても北方領土問題は全く進展しませんでしたが、経済面での交流拡大は合意されました。喜ばしいことです。
 プーチンは、日本がロシアに対する経済制裁に加わっていることや、日米同盟を堅持していて北方領土が返ればそこに米軍基地ができかねないことを挙げて、そんな状況の中では領土問題の進展は無理だとも述べたようです。それ自体は納得のいく主張です。
 
 ところでロシアに対する西側の経済制裁の理由は「ロシアがクリミヤを併合した」ことでした。
 櫻井ジャーナルが「安倍政権を操っているのは米国の好戦派」だとする記事を書きましたが、その中で期せずして「ロシアがクリミヤを併合したのは正当」なことであったことを明らかにしました。
 世の中には、ウクライナでクーデターが起きた時にロシアが1~2日の間に1万人以上の軍隊をクリミヤに差し向けて占拠したと言う人がいますが、いくら何でもそんな神業が出来るはずはありません。
 
 1997年にウクライナと協定が結ばれて、クリミヤにはそれ以来ロシア軍が駐留し続けていたのでした。
 ウクライナでクーデターが起こされた後、クリミヤの住民たちはロシアに加盟するかどうかの住民投票を行い、95%の人たちがロシアへの加盟を支持しました。
 
 アメリカは、それはウクライナ全土での投票でないから無効だと主張しています。しかし強引にウクライナにクーデターを起こさせたアメリカにそんなことを言う資格はありません。
 アメリカはそれまで5000億円とも言われる資金を投じてウクライナの不安定化を画策したにもかかわらず、当時のビクトル・ヤヌコビッチ大統領がロシアに接近しようとしたために予定が狂いました。そのため囚人上がりと呼ばれるような暴徒の集団を指し向けて、市民を虐殺し強引にクーデターを起こさせました。
 そうであるにもかかわらず黒を白というアメリカの横車が通って、日本を含めた西側諸国はアメリカの言うがままに対ロシア経済制裁を続けているのが実状です。
   (関係記事)
           2014年3月19日 ウクライナ・クリミア問題 ロシアは何も悪くない
                https://yuzawaheiwa.blogspot.jp/2014/03/blog-post_8607.html
           2014年8月28日 マレーシア航空機撃墜の真相は? 
                https://yuzawaheiwa.blogspot.jp/2014/08/blog-post_90.html 
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安倍政権が平然と民意を無視するのは
彼らを操っている米国の好戦派が民意を無視しているから    
櫻井ジャーナル 2016.12.17 
 論議を尽くすことなく強行採決を繰り返す安倍晋三政権が「民意」を軽視していることは明白だが、それは官僚にも野党にもマスコミにも言えることだ。民主主義は多くの人に踏みにじられ、安倍政権が暴走する下地が作られたのである。
 
 鳩山由紀夫政権の誕生は「民意」が形になった最後の出来事だろう。中曽根康弘、小泉純一郎、安倍晋三たちが推進してきた新自由主義的な政策が自分たちの利益にならないことを庶民も理解、鳩山と小沢一郎のコンビは支持された。
 新自由主義を推進、TPP(環太平洋連携協定)によってアメリカの巨大資本が国を支配するファシズム体制を実現させようとしている日米の支配層は怒り、慌てた。そして東京地検特捜部、マスコミ、そして野党を含む政治家たちは鳩山と小沢のコンビを葬り去ることにほぼ成功した。これはファシストによるクーデターだ。
 
 こうしたファシストは外国の出来事でも民意を嫌う。例えば、西側の支配層はウクライナに新自由主義的な政策を押しつけて食い物にしようとしたが、ビクトル・ヤヌコビッチ大統領はそれを嫌ってロシアに接近した。そこで2013年11月にキエフのユーロマイダン(ユーロ広場、元の独立広場)で反ヤヌコビッチの抗議活動が始まる。ヤヌコビッチの支持基盤は東部と南部で、キエフの周辺には少なかった。
 人が集まったところで登場してくるのがアメリカ/NATOの訓練と支援を受けたネオ・ナチ(ステファン・バンデラ派)。2014年2月18日頃から彼らはチェーン、ナイフ、棍棒を手に、石や火炎瓶を投げ、ブルドーザーなどを持ち出し、中にはピストルやライフルを撃ち始める
 2月21日にヤヌコビッチ大統領と反ヤヌコビッチ派は平和協定に調印するが、22日に狙撃で多くの死者が出始め、議会の議長を務めていたボロディミール・リバクは「EU派」の脅迫で辞任、アレクサンドル・トゥルチノフが後任になる。憲法の規定を無視して新議長を議会が大統領代行に任命、23日の段階でヤヌコビッチ大統領は排除された
 
 この大統領排除は憲法の規定に反している。ヤヌコビッチは東部や南部を中心として住民の民意で選ばれた大統領だが、それをネオ・ナチが前面に出た暴力集団によって倒されたわけだ。つまり、これはクーデター。そのクーデターを日本では政府、マスコミ、あるいは「リベラル派」や「革新勢力」も支持した。
 クーデターに反対する人びとの中で最も早く動いたのがクリミアの住民で、3月16日にロシアの構成主体としてロシアに加盟するかどうかを問う住民投票が実施された。その結果、投票率は80%を超え、そのうち95%以上が加盟に賛成している。この投票は国外の監視団が見守る中で行われ、公正なものだった。つまり、これは民意だ。
 
 ちなみに、西側の政府やメディアはロシア軍がクリミアへ侵攻したと叫んでいたが、これも嘘。クリミアのセバストポリには黒海艦隊の拠点があり、ソ連が消滅した後の1997年にロシアとウクライナは条約を結び、基地の使用と2万5000名までの駐留がロシア軍に認められた。この条約は1999年に発効、その当時から1万6000名のロシア軍が実際に駐留してきたのだ。クーデター後、西側の政府やメディアはこのロシア軍を「侵攻部隊」だと宣伝したわけだ。そうした主張をしたいなら、在日米軍について、日本を軍事侵略している侵略部隊だと言わねばならない。
 
 東部や南部の住民もクリミアに続こうと考え、5月11日に住民投票をすることになっていた。その9日前、5月2日にネオ・ナチは黒海に面した港湾都市のオデッサで反クーデター派の住民を虐殺する。
 大量殺戮の舞台になったのは労働組合会館。その中で50名弱が殺されたと伝えられているが、これは地上階で発見された死体の数で、それを上回る数の人びとが地下室で惨殺され、犠牲者の数は120名から130名だと住民は語っている。
 
 この虐殺はキエフのクーデター政権だけでなく、アメリカ政府が関与していた疑いが濃厚だ。例えば、4月12日にジョン・ブレナンCIA長官がキエフを極秘訪問、その2日後にキエフ政権のアレクサンドル・トゥルチノフ大統領代行が制圧作戦を承認、4月22日にはジョー・バイデン米副大統領がキエフを訪問、それにタイミングを合わせるようにしてオデッサでの工作が話し合われている。その10日後にオデッサで虐殺があった。
オデッサの虐殺から1週間後、5月9日にクーデター派は部隊をドンバス州へ派遣、戦車をマリウポリ市に突入させた。その際、住民が殺されている。9日はソ連がナチスに勝ったことを記念する戦勝記念日。街頭に出て祝っていた住民を攻撃したわけである。6月2日にはデレク・チョレット米国防次官補がキエフ入りするが、そのタイミングでキエフ軍はルガンスクで住宅街を空爆、建物を破壊し、住民を殺し始めた。
 
 そうした中、アメリカ政府は訓練のためにCIAやFBIの専門家数十名を顧問として派遣し、国防総省は戦略と政策の専門家チーム、つまり軍事顧問団をキエフへ送り込んでいる。4月にはアメリカの第173空挺旅団の兵士290名がポーランドへ入り、9月にウクライナで演習を実施している。
 アメリカをはじめとする西側支配者がネオ・ナチを使ってウクライナでクーデターを実行したのだが、これを西側では「民主化」と呼ぶようだ。その後、NATOは部隊をロシアとの国境近くへ進め、ウクライナではネオ・ナチによる暴力が蔓延、経済は破綻したが、西側の政府もメディアも気にしていない。
 
 傭兵を使った侵略はリビアやシリアでも実行されてきた。中東/北アフリカの手先はアル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)。戦闘員の主力はサウジアラビアに雇われたサラフ主義者(ワッハーブ派)やムスリム同胞団だ。アメリカは武器/兵器を提供、戦闘員の訓練を実施しているだけでなく、CIAや特殊部隊が戦闘を指揮しているようだ。
 
 安倍政権を操っているアメリカの勢力は民主主義の破壊者であり、民意を尊重する意思は持っていない。安倍政権が暴走するのは必然であり、そうした政権を誕生させた検察やマスコミだけでなく、こうした日米オリガルヒの走狗に従っている人びとも責任は免れない。