2016年12月18日日曜日

18- 見えた 勝利の方程式(その2)(五十嵐仁氏)

 元大原社会問題研究所所長の五十嵐仁氏による論文「見えた 勝利の方程式」の後半部(その2)です。この連載は今回で終了です。
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見えた 勝利の方程式(その2)
五十嵐仁の転成仁語 2016年12月17日 
〔以下のインタビュー記事は、『女性のひろば』No.455、2017年1月号、に掲載されたものです。2回に分けてアップさせていただきます。〕
 
現代の源氏は「市民と野党」
 特定秘密保護法、安保法制と強行採決を連発しながら「結党以来強行採決など考えたこともない」などという安倍首相の白々しさ。驕り高ぶりも極まった感があります。平安末期は源頼朝が兵を挙げる準備を着々と進めていましたが、現代の源氏は市民と野党ということになるでしょう。いかにして安倍政権を打ち破るか。私は新潟県知事選で「勝利の方程式」がはっきり見えたと思います。
 安保法制に反対する空前のたたかいからわきおこった「野党は共闘」の声。その市民の声にこたえて日本共産党が「戦争法廃止の国民連合政府」を呼びかけ、2016年2月には安倍政権の打倒をめざし国政選挙で協力するという画期的な5野党合意が確認されました。参院選ですべての1人区で野党統一候補が実現し、そのうちの11で勝利を勝ち取った。その流れが新潟県知事選での画期的な勝利につながりました。
 
共産党排除の枠が取れた!
 市民と野党の共同の流れにはこれまでにない新しさがあります。その1。日本共産党の立ち位置がまったく違うこと。これまでは日本共産党を除く共闘が普通でした。ただ一つ、沖縄以外では。しかし参院選ではこの「共産党を除く」という枠が除かれた。国政選挙でこれほどの規模で野党の統一候補が立候補した選挙は過去に例がありません。安保法制に反対する広範な市民運動から澎湃としてわき起こった市民の声に日本共産党がこたえたことで、共産党を排除できなくなった。これは日本の政治史上、きわめて画期的なことです。
 新しい流れ、その2市民が選挙に積極的にかかわるようになったこと。これまで市民は政治や選挙と距離を置き、主体的にかかわることはほとんどありませんでした。この点で新しい政治文化が生まれたといってよいでしょう。
 自覚的な市民と野党の共闘がもたらすはかりしれない可能性それが新しい流れの3つめです。新潟県知事選では、米山候補を推薦したのは共産・自由・社民の3党。民進は自主投票でした。与党は圧勝できると思っていた。しかし「原発再稼働は認めない」という大義の旗を掲げ、市民と野党が本気の共闘をした結果、投票率が10ポイント上がり、多くの無党派層が投票所に足を運び6万票もの差がついた。政党の枠組みだけでは考えられない変化、いわば一種の「化学反応」がおきたのです。これこそが「勝利の方程式」です。明確な争点と大義の旗を掲げ、本気で共闘すれば自公を打ち破れる。はっきりしたじゃありませんか。
 
 与党は恐れおののいています。さっそく自民党の下村幹事長代行は「次の衆院選で野党統一が進めば86議席減る」と若手代議士にハッパをかけましたが、内心ではそれ以上の危機感をもっているでしょう。安倍政権を支持している人が多いように見えるのは、ほかに適当な人がいないだけ。選択肢がないからとりあえず支持しているのが実態です。争点を明確にして魅力ある選択肢を示せば、政党間の組み合わせを越えた支持の広がりを実現することができる。新潟はそれを示しました。そして、同様のことは日本のどこでおきてもおかしくありません。
 政治に望みを失って投票所に足を運ばなくなっている人々に「今度は政治が変わるかもしれない」と思ってもらえるか。アベ政治ではない新しい政治への期待を託してみようと選んでもらえるか。新潟のたたかいで示された「勝利の方程式」を貫くことこそが、政治を変える大きな希望なのです。