2016年11月21日月曜日

バーニー・サンダース米上院議員の「TPP反対演説」

 「WJFプロジェクト」というブログに、米上院議員:バーニー・サンダースが、米大統領がTPP交渉を進める権限を認める法案ファストトラック法案の審議に当たって行った「TPP反対演説」の全文が掲載されました。 
 以下に紹介します。
 なお全文は8300語ほどで長文なので、事務局で一部を省略し5000語弱に縮めました。 
 原文には記載のURLでアクセスしてください。
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バーニー・サンダースTPP反対演説 「TPPに反対する四つの理由」

2015年5月14日アメリカ連邦議会上院
(前 略私が破滅的であると信じるこの貿易協定(TPP)に反対票を投じるよう、上院議員諸君に訴えます。(中 略四つの客観的な理由に焦点を絞ってお話ししたいと思います。なぜ私たち上院は、今回の、ファストトラック法案を否決すべきなのでしょうか。なぜ私たちは、多国籍大企業のCEOではなく、アメリカの労働者に利益をもたらすような、貿易の新たな全面的アプローチ方法を発展させていく必要があるのでしょうか。   (オバマ大統領がTPP交渉を進める権限を認める法案、別名:TPA・貿易促進権限)
 
第一の理由
(中 略)この自由貿易協定(TPP)が、NAFTA、CAFTA、中国との恒久的正常貿易関係、米韓FTAのような過去の破滅的な貿易協定をなぞって作られていることです。客観的に見れば、これらの貿易協定が、十分な賃金が得られる数百万の雇用を私たちから奪い、アメリカの労働者が、1時間1ペニーで働く低賃金の国々の労働者との競争を強いられる「底辺への競争」につながったことは明らかです。
(中 略彼らが私たちに語ってきたことが、実際にはすべて誤りであったことが明らかになってきたのです。にもかかわらず、彼らは再び、今回のTPPで同じ誤りを繰り返そうとしています。
1993年、ビル・クリントン大統領は、NAFTAが、五年間で100万の雇用を創出すると約束しました。しかし、実際には、NAFTAは、70万の雇用の喪失につながりました。
1999年には、中国との恒久的正常貿易関係によって、中国市場がアメリカの製品やサービスに対して開かれていくという約束を私たちは聞かされました。しかし、(中 略私たちが買うものは中国製品ばかりであり、中国との貿易協定はアメリカ人から270万もの雇用を奪い取ってきたのです。(中 略
2011年には、合衆国商工会議所は、米韓FTAが28万の雇用を創出すると私たちに語りましたが、これも誤りでした。実際には、米韓FTAは、7万5千の雇用の喪失につながったのです。
なぜこのようなことが起きるのか、その理由は明らかです。アメリカ企業が、自由に海外に出て行くことが許されており、賃金が1時間1ペニーで済み、環境に配慮する必要もないときに、わざわざアメリカ国内に投資をし、アメリカ人労働者に1時間15ドル、18ドル、20ドルもの大金を支払い、保険制度を整え、環境規制に従い、労働組合に対処したりするでしょうか。当然の結果として、これが実際に起きてきたことです。(中 略これが、私たち上院が、TPPを否決しなくてはならない一つ目の理由です。
 
第二の理由
(中 略誰がTPPに賛成しているのでしょうか。アメリカ国内の工場を閉鎖し海外に移転を進めてきた多数の企業を含む、多国籍大企業がこぞって、TPPは素晴らしいアイディアであると考えています。(中 略TPPによって、企業が、これまで以上に簡単にアメリカ国内にある工場を閉鎖して海外の低賃金の国々に移転できるようになるからです。
 私たち上院に、TPPに賛成票を投じるように積極的に働きかけているもう一つのグループが存在します。それは、製薬会社です。(中 略なぜならTPPによって、貧しい国々を含む世界中の人々に、彼らの製品を高い価格で売ることができるようになると考えているからです。
 最も驚くべきことですが、ウォールストリートはTPPが大好きです。(中 略ウォールストリートがTPPに愛着を寄せる理由は、TPPによって、彼らの怪しげで複雑な金融商品を、より簡単に世界中に売りつけることが可能になるからです。
 以上が、TPPが素晴らしいものであり、私たち上院がTPPに賛成票を投ずべきであると考えている集団です。
 
では、TPPに反対している集団や組織はどのようなものでしょうか。
わが国のすべての労働組合、2000万人以上のアメリカ人労働者を代表し、よりよい賃金と保険制度をもたらすために日々戦っている労働組合が、TPPに強く反対しています。労働組合がTPPについて寄せてくださったメッセージを紹介させていただきます。
「ファストトラックによる貿易協定(TPP)は、雇用の減少、賃金の低下、中間層の衰退をもたらします。(中 略世界の巨大企業によって、また世界の巨大企業のために書かれているこれらの貿易協定は、雇用を創出しません。これらの貿易協定の主な目的は、貿易とは無関係であり、企業が海外に投資をすることを簡易にし、グローバル経済に対する影響力を増大させるためのルールを定めることなのです。」(中 略
 
TPPに反対してきたのは労働組合だけではありません。実際には(中 略わが国の主要な環境及び科学団体が、こぞってTPPに反対しています。(中 略2000万人のアメリカ人労働者を代表する労働組合が、わが国はTPPを推進すべきではないと語り、環境問題に取り組む数百万人の人々を代表する団体が、貿易促進権限に反対しているのです。
さらに、米国長老派教会、合同メソジスト教会、シスターズオブマーシーのような宗教団体も、貿易促進権限に反対しています。次に紹介するのは宗教団体の皆様からいただいたメッセージです。
(中 略近代的な貿易協定は、人々、特に、アメリカ合衆国や世界の最も弱い立場にある人々に害を及ぼしてきました。貿易は、他の経済活動と同様に、人々を貧困から引き上げ、国家が、国民の健康や安全や福祉や、この地球を守る能力を担保する手段でなくてはなりません。(中 略」(引用終わり)
(中 略私たち上院は、労働者の権利と、環境と、倫理的な価値観に配慮する人々の側に立つべきであると、私は皆さんに申し上げます。
 
第三の理由
(中 略これは人々がほとんど注意を向けてこなかった条項なのですが、ISDS(投資家対国家の紛争解決)条項というものがあります。これは極めて専門性の高い用語に聞こえますが、一体、どのようなものなのでしょうか。(中 略)これは多国籍大企業が、アメリカ合衆国のみならず世界中の国家や州や地方自治体を、それらの政府が企業が見込む将来の利益に損害を与えるような立法行為を行った場合に、訴えることができることを意味します。
これこそ、まさにTPP全体の本質を表すものであると、私には思われます。TPPは、賃金を引き上げたり、雇用を創出したりするためのものではなく、ひたすら企業の利益をまもるためのものなのです。
信じがたいことに、TPPが目論んでいるのは、世界中の地域共同体、アメリカ合衆国の各州、アメリカか他国かを問わず各国政府の基本的な民主主義が、多国籍大企業の利益を侵害する場合に、民主主義を侵害することなのです。これは、極めて異常なことです。
(中 略なぜなら、民主的に選ばれた人々が法律を可決し、医療制度や環境をまもるためのその法律が多国籍大企業の将来の利益を侵害するならば、提訴され、その国が莫大な罰金を支払わなければならなくなることを、この法案が示しているからです。
これは、医療や環境のみならず、民主主義の基本的な理念そのものに対する、なんという攻撃なのでしょうか。(中 略
 
いくつかの例を示させてください。(中 略世界最大のタバコ会社の一つであるフィリップ・モリスは、タバコの表示義務をめぐってオーストラリアやウルグアイを訴えています。ウルグアイは小さな国ですが、彼らが行ったことは、子どもたちや国民を喫煙の害から積極的に守ろうとしたことでした。 
(中 略ウルグアイという小国、癌について危惧する腫瘍学の専門家を大統領にもつこの小さな国が、子どもたちがニコチンに惹きつけられないようにするために、なしうるかぎりのことをなそうとした。
するとウルグアイに何が起きたでしょうか。ウルグアイは、三人の企業弁護士によって構成される独立した法廷に訴えられました。フィリップ・モリスが次のように述べたからです。
「おいウルグアイ、お前たちは我々の将来の利益に損害を与えている。我々は子どもたちがニコチンに惹きつけられることを望んでいるのだ。我々は、我々の製品をウルグアイの子どもたちや国民に売りたいのだ。その我々に逆らい、子どもたちが喫煙することを困難にするような法律を作ることによって、お前たちは我々の利益を台無しにしているのだ。」
この問題は独立した法廷で目下係争中です。
これは、(中 略単なる医療問題ではなく、民主主義の根幹に関わる問題です。
(中 略もしフィリップ・モリスが勝訴すれば、世界中の政府に、子どもたちを喫煙から守るために積極的な対策を取るべきではないというメッセージを与えることになります。
 
これは一例に過ぎません。(中 略このISDS条項の下で、フランスの廃棄物処理会社ヴェオリアは、フランス・エジプト二国間投資協定に基き、労働法を改正し最低賃金を引き上げたエジプト政府に対して、一億一千万ドルの損害賠償を求めて訴訟を起こしています。
(中 略私は、エジプトに限らず、地球上のあらゆる国の政府は、正当な理由があると彼らが考えるならば、企業から訴えられる心配を抱くことなく、最低賃金を上げる権利をもっていると考えます。(中 略最低賃金をあげるという「犯罪」のために訴えられるということは、私の理解を超えたことがらです。
 再度繰り返しますが、これは現在起きているできごとの一例に過ぎず、また私たちがTPPを可決するならば、今後、さらに酷いやり方で起きていくであろうできごとの一例に過ぎないのですが、最後にもう一つの例についてお話させてください。
 
バッテンフォールというスウェーデンの電力会社は、福島の原発事故を受けて、原発廃止を決めたドイツ政府に対して、50億ドルの損害賠償を求める訴訟を起こしました。(中 略独立国であるドイツが、原発を廃止する決定を行いました。(中 略選挙で選ばれたドイツの政治家たちが、原発の廃止を決めたのです。しかし、その決定をめぐり、スウェーデンの電力会社バッテンフォールから、50億ドルの損害賠償を求めて訴訟をおこされているのです。
(中 略たとえば、環境問題に敏感な私のバーモント州が環境に関する法律を制定した場合、大企業が独立した法廷に行き、次のように言うことが可能になります。
「さあ、我々は10億ドルの損害賠償を求めてバーモント州を訴えよう。なぜなら我々はバーモント州でのビジネスを望んでおり、彼らの環境規制は我々が利潤をあげる能力に被害を与えているからだ。」
(中 略アメリカや他の国で民主的になされた決定を理由に、独立した法廷が、企業に対して数十億ドルの損害賠償を認めることができるようになるということは、私にはまったく理解できない話です。
 
第四の理由
(中 略世界の貧困国では、状況は明らかにさらにひどいものです。TPPが可決した際に生じることは、製薬会社が彼らのブランド名を冠した薬品が、より安価なジェネリック薬品として製造されるのを阻止できるようになることです。その結果、世界中の貧しい国々では、十分なお金をもたない人々が薬の価格に悩まされるようになることでしょう。
 (中 略国境なき医師団が、次のようなメッセージを寄せていますので紹介させていただきます。 
「TPPは、発展途上国の医療アクセスにとって、これまでで最も有害な貿易協定になろうとしています。」(引用終わり)
 
結論
(中 略合衆国上院議員の諸君が、企業世界に対して、TPPは受け入れられないという、響き渡る「NO」の声を突きつけ、労働世帯や、中間層や、世界中で苦しむ人々を保護するような貿易協定こそを通過させ、ファストトラック法案を否決し、TPPを否決してくださることを希望します。