2016年11月10日木曜日

トランプの勝因は反グローバリズム

 アメリカ大統領選は大方の予想に反してトランプが勝利を収めました。
 日刊ゲンダイが巻頭特集で、「トランプの勝因は反グローバリズム(要旨)」とする記事を掲げました。彼が、アメリカが30年間にわたって主導してきた「グローバリズム」と新自由主義を真っ向から否定したことが勝因であるというものです。グローバリズムと新自由主義は所詮グローバル企業が潤うための政策であって、それによって大企業と富裕層はこの間大いに富みましたが、一般国民いわゆる「99%の人たち」には何の恩恵もないどころか彼らをより貧しくしました。
 いま安倍政権の元で進められているのはその縮図であって、日本でも富裕者と貧困者の二極化が急速に進んでいます。
 
 歴代の米大統領は口では正しく美しいことを語るものの、実際に行われたことはグローバル企業の発展であり、貧富の二極化でした。
 ところでトランプがそれを否定したのはいいのですが、彼の場合は何しろ排外主義が強烈なので、「メキシコ人には帰国してもらう」などというものだから、非白人たちは今回ヒラリーを支持したと言われます。しかしそうした心配のない白人たちは、トランプ支持が多かったということです。
 また40才以下の人たちがヒラリーを多く支持したというのは、やはり「正しく美しい表現」に惹かれたのでしょう。しかし40才以上の世代になると、もはやそういう美辞麗句に魅力を感じることはなく、「実態」がどうであったかを認識すれば自ずからトランプ支持に傾いたというわけです。
 
 TPPの問題もまさにそうです。自由貿易協定という美名のもとに行われようとしていることは、グローバル企業の強引な大儲けであって、99%の国民にとってはメリットはないどころか確実に生活を圧迫するものでした。そうした国民の怒りを前にしては、さすがのヒラリーも、『今も反対、選挙後も反対、大統領になっても反対』と言わざるを得なくなりましたが、それが体制側の代表である彼女の本心でないことくらいは米国民には分かっていました。
 
 そんな中で安倍政権はTPPの衆院通過を目指して強行採決をしようとしています。まさに「恥の上塗り」という訳ですが、そこまで行き着かないことには「醜態」の収めどころがないということなのでしょう。
 アベノミクスは既に破綻しているので、いまや「TPPを起爆剤にして景気の回復を図る・・・」というしかないのでしょうが、一体仮にTPPが成立したとして、そのどこが起爆剤になるというのでしょうか。とても理解することができません。米国のグローバル企業が大発展する起爆剤にこそなれ、日本には大被害が及ぶだけであることが何故わからないのでしょうか。
 
 そんなTPPが確実に頓挫することになったのは本当に喜ばしいことです。
 TPPにしてもTTIPにしても、正に神をも恐れない強欲で極端に不正義な協定です。その実現が阻止されたのはまさに天の摂理と思われます。 
 日本でも早く安倍政権に鉄槌を下す日が来て欲しいものです。
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泡沫と思われた放言王 トランプの勝因は反グローバリズム
日刊ゲンダイ 2016年11月9日
「史上最低の醜悪」などと言われた米国の大統領選は大接戦の末、共和党のトランプ候補が制した。この結果に、株式市場が大暴落するなど、世界中が騒然としているが、背景を探れば、そこには必然的ともいえる米国の闇がある。
 
 確かにトランプの訴えはむちゃくちゃだった。口を開けば「メキシコとの国境に壁をつくる」「中国が雇用を奪っている」と他国を攻撃し、ワイセツ発言も酷くて「ピー」音をかぶせて伝えるニュース番組も多かった。さすがに、大新聞は一斉にトランプ批判に回り、発行部数上位100紙中、ヒラリー支持を表明したのが55紙だったのに対し、トランプ支持はわずか1紙だけだった。
 
 しかし、それでもトランプ人気は落ちなかった。最後の最後でリードを許していたクリントンを逆転した。どんなに暴言を吐こうが、スキャンダルが飛び出そうが、あきれるほど根強い支持層に支えられたのである。支持率は終始40%台をキープし、最後はフロリダなど激戦州で次々と下馬評をひっくり返した。ツイッターのフォロワー数は、ヒラリーの1005万人に対し1280万人と凌駕、トランプの演説を生中継すると視聴率が跳ね上がるという現象も起こった。
 
■疲弊したアメリカ国民が喝采、支持
 なぜ、他人の悪口しか口にしないトランプのような下品な男が、ここまでアメリカ国民から熱狂的な支持を集めたのか。
 トランプの主張は、ハッキリしている。一言でいえば、「排外主義」だが、それは「反グローバリズム」である。市場に任せれば経済はうまく回るとアメリカが30年間にわたり主導してきた「グローバリズム」と「新自由主義」を、真っ向から否定した。その訴えがアメリカ国民の心をとらえたのは間違いない。
 
 外務省OBの天木直人氏(元レバノン大使)がこう言う。
「もともとグローバリズムは、“勝ち組”の政策です。格差が広がり、希望を持てない人を増やしてしまう。アメリカ国民も疲弊してしまった。一握りの富裕層だけが富み、中産階級が崩壊しつつあります。だから、以前から大衆の不満が充満していた。トランプはその不満を上手にすくい上げた形です。トランプが『中国が雇用を奪っている』『雇用を奪うTPPを止める』と自由貿易を批判すると、聴衆は拍手喝采し、熱狂した。これは“サンダース現象”にも通じる話です。ヒラリーと大統領候補の座を争ったサンダースも、新自由主義を否定し、TPPを『破滅的な協定だ』と批判して支持を集めた。アメリカ大統領選を通じて分かったのは、行き過ぎた新自由主義とグローバリズムが限界に達しつつあるということです。今後アメリカは、大きな転換を迫られると思う。熱心なTPP推進派だったヒラリーが、国民の強い反発を目の当たりにして『今も反対、選挙後も反対、大統領になっても反対』とTPP反対に宗旨変えしたことが、この先のアメリカを物語っています」
 
 実際、新自由主義とグローバリズムによって、アメリカ国民の生活はボロボロになっている。安い労働力を求めて企業が海外に進出したために雇用は減り、その一方、安い商品が海外から流入し、アメリカ製は競争力を失ってしまった。グローバリズムに対するアメリカ国民の怒りと絶望が、トランプを押し上げたのである。大統領選で敗北したのは、新自由主義とグローバリズムだったのではないか。
 
TPPに参加したら日本経済は崩壊
 グローバリズムへの「反動」は、アメリカだけの現象ではない。世界各国で「保護主義」の動きが強まっている。自由貿易を進めたはいいが、どの国もヘトヘトになっているからだ。
 なのに安倍首相は、TPPを筆頭にした新自由主義を推し進めようとしているのだから、時代錯誤もいいところだ。もしTPPに参加したら、日本は決定的な打撃を受けてしまうだろう。筑波大名誉教授の小林弥六氏(経済学)がこう言う。
「例外なき関税撤廃、自由貿易が大前提のTPPに参加したら、日本の産業と雇用が破壊されるのは必至です。たとえば、日本が強い自動車産業だって、とても全メーカーが生き残れるとは思えない。まず農業、林業、漁業は、安い外国産に太刀打ちできないでしょう。第1次産業が壊滅したら、地方経済は成り立たなくなる。今でもシャッター通りだらけなのに、地方は活気を失い、本当に死んでしまう。新自由主義とグローバリズムの本質は、一般国民を犠牲にしてグローバル企業を儲けさせることです。世界的な大企業は潤うが、大衆には恩恵がない。だからアメリカも、産業界はTPPに賛成し、多くの国民が反対している。それでも安倍首相はTPP参加を強行しようとしているのだから、どうかしています。百歩譲って、もしメード・イン・ジャパンが世界市場を席巻している時だったら、TPPに参加するメリットがあったかもしれませんが、国際競争力が低下している今、参加するのは狂気の沙汰です。日本の富と市場を、アメリカのグローバル企業に奪われるのは目に見えています」
 
■グローバリズムをやめ、日本型を探せ
 いずれ世界各国に、「グローバリズム」を見直す動きが広がっていくはずだ。「保護主義」の動きが強まってくるのは間違いない。日本も大急ぎで、行き過ぎたグローバリズムと一線を画すべきだ。
 このままグローバルな競争に突入しても、過激なコスト競争に巻き込まれ、デフレ不況を悪化させるだけである。アベノミクスが「異次元の金融緩和」を実施し、経済対策に何十兆円もの税金をつぎ込んでも物価が上昇しないのは、過度なグローバル競争によって、国内にデフレ圧力がかかっているからである。
 そもそも、日本のGDPの6割は個人消費なのだから、一部のグローバル企業を強くし、多少輸出を増やしたところで、景気が良くなるはずがないのだ。
 
この20年、アメリカのエージェントのような経済学者やエコノミストが、グローバルスタンダードだ、構造改革だと日本式の経済システムをアメリカ型に変えてきたが、果たして日本国民の利益になったのかどうか。大失敗だったのは、この20年の日本経済が証明しています。今からでも日本の状況に合った経済システムを探すべきです。今振り返っても、年功序列、終身雇用、系列といった日本型経営はある意味、合理的なシステムでした。雇用が守られるので、サラリーマンは結婚、子育て、マイホーム取得と人生設計を立てられた。将来不安が少ない分、消費もできた。ところが、グローバルスタンダードに合わせるべきだと雇用を壊し、非正規を増やしたために、将来不安が強まり、消費が増えなくなってしまった。最悪なのは、社内に人材と技術の蓄積がなくなったために、商品開発力まで落ちてしまったことです」(経済評論家・斎藤満氏)
 アメリカ大統領選でなぜ、「トランプ現象」や「サンダース現象」が起きたのか、日本はよく考える必要がある。
 
 
トランプ氏勝利、安倍首相「日米同盟さらに強固に」
TBS ニュース 2016年11月9日
 アメリカの大統領選でトランプ氏が勝利したことを受け、安倍総理は日米同盟をさらに強固にしていきたいとして、トランプ氏との対話に意欲を示しました。
 「トランプ候補が次期米国大統領に選出されたことに、心からお祝いを申し上げます。日米同盟は普遍的価値で結ばれた揺るぎない同盟です。その絆をさらに強固なものにしていきたいと思います」 (安倍首相)
 
 また、安倍総理は「トランプ次期大統領とも世界の様々な課題に協力して取り組んでいきたい」「一緒に仕事することを楽しみにしている」などと語りました。
 一方、稲田防衛大臣は「日米同盟の強化を働きかけていく必要がある」などと述べました。
 「想定内でした。想定内ですよ。どの政権であったとしても、日本の立場であったり、日米同盟の強化であったり、そういったことは働きかけていく必要があるというふうに思っています」(稲田朋美 防衛相)
 
 また、トランプ氏はTPP=環太平洋パートナーシップ協定について離脱を主張していますが、自民党・二階幹事長は「我々があわててなにかをすることはない」として、この国会でTPP承認案などを通すという基本方針に変わりないことを強調しました。