2016年11月17日木曜日

17- 参院憲法審査会が 9か月ぶりに審議を再開

 参議院憲法審査会およそ9か月ぶりに審議を再開し、「憲法に対する考え方」をテーマに各党が意見を述べました。 
 護憲政党が憲法審査会開催の必要性を認めない中で自民党の強い要請で開かれたものですが、その自民党は「自民党の12年制定の)憲法改正草案を、そのまま審査会に提案するつもりはない」と述べました。
 
 そもそも2012年に仕上がった当時野党の自民党の改憲草案は、安倍氏の側近である礒崎陽輔氏が安倍氏の意向をすべて織り込んでまとめたもので、2005年に制定された自民改憲草案に比べても大幅に反動的なものになっています※1
※1  10月6日  安倍首相は改憲案にこんなに関わっていた
 
 しかしさすがにそれでは国民の賛成は得られないと考えて、比較的最近になって事実上撤回(歴史文書の扱いとする)したのは当然のことですが、安倍氏が細部までかかわって仕上げた12年改憲草案をどこまで緩和した内容にするのか注目されます。
 
 いずれにしても、まずは改訂したい側が改正案を確定して初めてスタートすることになります※2
※2  10月10日 自民党が現行の改憲案を練り直すと・・・
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参院憲法審査会 9か月ぶりに審議を再開
NHK NEWS WEB 2016年11月16日
参議院憲法審査会は、ことし2月以来およそ9か月ぶりに審議を再開させ、自民党は、「現行憲法は、国民の自由な意思が十分に反映されたとは言い難い」として、「憲法改正は、国政の重要課題となっている」と主張しました。これに対し民進党は、「現行憲法は、平和国家の構築などに大きく貢献している」として、「憲法を正しく評価し、守ることが求められている」と主張しました。
衆参両院で、与党と憲法改正に前向きな勢力が、改正の発議に必要な3分の2の議席を占めるなか、参議院憲法審査会は、ことし2月以来およそ9か月ぶりに審議を再開させ、「憲法に対する考え方」をテーマに、各党などが意見を表明しました。
 
この中で、自民党の中川・元参議院議院運営委員長は、「現行憲法は、日本の主権が制限されたなかで制定され、国民の自由な意思が十分に反映されたとは言い難いことは事実だ。自主的な憲法改正は、まさに国政の重要な課題となっている。自民党の憲法改正草案を、そのまま審査会に提案するつもりはない」と述べました。
 
民進党の白眞勲参議院議員は、「現行憲法は、戦後日本の発展と平和国家構築に多大な貢献をし、今後も『国民主権』や『基本的人権の尊重』、『平和主義』の理念は、国民の生命などを守るうえで不可欠だ。まずは現行憲法を正しく評価し、そのうえで憲法を守ることが、今求められている」と述べました。
公明党の西田・参議院幹事長は、「憲法ができるまでの過程をつぶさに見ると一方的な押しつけでないことは明らかで、現行憲法は、すぐれた憲法であると積極的に評価している。現行憲法を維持したうえで、改正が必要になった場合に新たな条文を付け加える形の、『加憲』という方法を主張する」と述べました。
共産党の山添拓参議院議員は、「国民の多数が改憲を求めていないなか、憲法審査会を動かす必要はないし、動かすべきではない。今求められているのは、戦争する国をつくり、憲法改正に進んでいくことではなく、憲法を生かし、憲法が掲げる理想に現実を少しでも近づけることだ」と述べました。
日本維新の会の浅田政務調査会長は、「現行憲法は、平和主義や基本的人権の尊重という基本的な価値を国民に根づかせたという点で評価できるが、憲法裁判所や未来志向を欠くといった点で不備がある。審査会に各会派が憲法改正原案を持ち寄り、改正の是非を議論できるようになってほしい」と述べました。
社民党の福島副党首は、「今の日本で、憲法で定められた健康で文化的な最低限度の生活を営む権利などは実現しているのか。国会は、こうした憲法価値の実現こそやるべきで、改憲の必要性はない」と述べました。
 
参議院の会派「無所属クラブ」の松沢成文参議院議員は、「来年度、憲法審査会が世論調査を行い、多くの国民の憲法改正に向けた方向を把握したうえで、憲法改正の発議案をしっかり議論すべきだ」と述べました。日本のこころを大切にする党の中山代表は、「憲法は、国の形を示すもので、日本人自身の手で日本の国柄を明確に表現したものにしなけばならない。今後、各党が憲法改正案を提出し、審査に着手すべきだ」と述べました。
 
衆参で前向きな勢力が3分の2に
公布から70年となった憲法をめぐっては、これまで内閣や国会に調査会が設けられて議論され、平成19年には憲法改正の原案を提出できる憲法審査会が衆参両院に設置されました。現在、衆参両院では与党と憲法改正に前向きな勢力が改正の発議に必要な3分の2の議席を占めていて、審査会の議論の行方が注目されます。
 
憲法をめぐって内閣に初めて調査会が設けられたのは、戦後の占領期が終わってまもない昭和31年のことで、翌年、「自主憲法の制定」を目指した当時の岸信介総理大臣のもとで議論がスタートしました。
7年にわたって議論が交わされた結果、結論は出さず、改正を必要とする意見と不要とする意見の両論を併記する形で報告書がまとめられました。
当時は民間でも盛んに議論され、我妻栄や丸山眞男など日本を代表する法学者や政治学者など50人が参加して「憲法問題研究会」を発足しました。
この民間の研究会は18年にわたって議論を続け、毎年、憲法記念日に講演会を開くなどして議論の成果を広く伝えました。
その後、憲法の施行から50年を契機として憲法への関心が改めて高まり、3年後の平成12年に衆参両院に憲法調査会が設けられました。
この調査会には憲法改正の原案を提出する権限は認められておらず、憲法9条に関連して、湾岸戦争をきっかけとした日本の国際貢献の在り方などが議論されました。
平成19年には「憲法審査会」が衆参両院に設置され、憲法改正の原案を提出できる権限が付与されました。
ことし7月の参議院選挙の結果、衆参両院で与党と憲法改正に前向きな勢力が改正の発議に必要な3分の2の議席を占めることになり、16日再開された審査会の議論の行方が注目されます。