2016年11月11日金曜日

11- 防衛省が「駆け付け警護」を英訳しない事情 新任務の付与は絶対に不可

 7月に南スーダンであった政府軍と反政府軍の戦闘行為は、安倍首相や稲田防衛相によれば『衝突』だということです。
 その『衝突』では、戦闘ヘリや戦車・機関銃が使われて数百人の死者がでました。それでも『衝突』とするとは口は便利なものです。勿論恥を知らない図太い心臓を有している人間だからできることなのですが・・・。
 彼らがいくらそのように真実を糊塗しようとも、そこに派遣されて「駆け付け警護」を命じられる自衛隊員にとって絶えず命の危険と隣り合わせであることには間違いありません。それなのに防衛省は自衛隊員の家族に対して「武力紛争に巻き込まれることはない」と説明しているということです。こうなると もはや犯罪的な虚偽です。
 
 それでは彼らは外国にはどう説明しているのでしょうか。
 驚いたことに英文の閣議決定資料などを見ると「駆け付け警護」は「kaketsuke-keigo」と単に日本語をローマ字化した訳になっているということです。普通であれば「peace keeping force」に類する言葉が適訳なのですが、そう訳すと世間(世界)の常識では「国連平和維持軍」という軍隊の範疇の用語になってしまうためにローマ字で誤魔化そうという発想です。
 また安倍首相は「武力と一体化しない後方支援」というあり得ない日本語も平然と使用していますが、これも世界では通用しない概念なので、英文では「Ittaika」 というローマ字訳?になっているということです。
 
 日刊ゲンダイが、昨年成立した安保法の正体が、英訳という公式作業の中でついに表面化してきたことを明らかにしました。
 「南スーダン新任務 派兵自衛隊に交戦の道開くな」とするしんぶん赤旗の「主張」も併せて紹介します。
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防衛省が政府文書の「駆け付け警護」英訳しなかった事情
日刊ゲンダイ 2016年11月10日
 外国にはどう説明しているのか―。南スーダンPKOの自衛隊に「駆け付け警護」の任務がいよいよ付与されようとしている。8日、自民党部会で了承され、15日に閣議決定。20日以降に派遣される部隊に新任務が付与される見通しだ。
 
  駆け付け警護とは、PKOに参加する自衛隊が、救援要請に基づいて、武装集団に襲われている国連やNGOの職員、他国軍のいる所へ “駆け付け” て、武器を使用して、助ける任務だ。昨秋の安保法成立で可能になった。
  今後、自衛隊は外国の部隊とともに駆け付け警護の任務を行うことになるのだが、驚いたことに英文の閣議決定資料などを見ると「kaketsuke-keigo」と訳されているではないか。これでは外国はチンプンカンプンなんじゃないか。防衛省に聞くと「ピッタリ対応する英語がないため、日本語をそのまま訳しています」(報道官室)との回答だった。
 
■世界の常識では「軍隊活動」
  軍事ジャーナリストの世良光弘氏がこう言う。
 「駆け付け警護は英語に訳すなら、PKF( peace keeping force=国連平和維持軍)の活動でしょう。自衛隊はPKFにはコミットしないので、PKFの活動とは言えない。protection(防護)ではこちらから出向くニュアンスがない。やむを得ず kaketsuke-keigo という表現になったのでしょう」
  つまり、稲田防衛相は駆け付け警護を「人道的見地」から実施すると説明したが、世界の常識では軍隊活動に他ならないから、変な英訳でごまかしているのである。
  安全保障がらみでは、過去にも日本語のまま英訳される珍事があった。昨年の安保国会で、安倍首相は「武力と一体化しない後方支援」と独自の概念を強弁。この時の「一体化」も適訳がなく、英文では“Ittaika”とされた。
 
 元外交官の天木直人氏は「駆け付け警護」という表現にも、自衛隊の質的な変貌を感じるという。
 「救出という名目で、慌てて駆け付けて、紛争に巻き込まれていくモデルです。これまでの受け身ではなくて、海外で積極的に動き回る自衛隊の姿です。あえて、駆け付けという行動的な表現を使っているのでしょう」
  昨年成立した安保法の正体が、ついに表面化してきた。 
 
 
主張南スーダン新任務 派兵自衛隊に交戦の道開くな
しんぶん赤旗 2016年11月9日
 安倍晋三政権は、南スーダンPKO(国連平和維持活動)に派兵する自衛隊部隊に対し、戦争法(安保法制)に基づく「駆け付け警護」などの新任務を付与しようと狙っています。20日から派兵が始まる第11次隊に付与するため、15日にも閣議決定する方針です。しかし、南スーダンでは、内戦状態の悪化、PKOの攻撃的性格への変質によって、停戦合意や中立性など自衛隊の「PKO参加5原則」は崩壊しています。自衛隊は直ちに撤退すべきであり、憲法9条が禁止する武力行使に踏み出す危険をますます高める新任務の付与など絶対に許されません。
 
「参加5原則」は完全崩壊
 南スーダンでは、内戦状態の悪化が深刻です。自衛隊が駐留する首都ジュバでは、7月に大統領派(政府軍)と副大統領(当時)派武装勢力との大規模な戦闘が発生し、数百人が死亡しました。
 
 国連が今月1日に公表した報告書によると、7月の戦闘では大砲や戦車、攻撃ヘリが総動員され、国連南スーダン派遣団(UNMISS)の施設にある建物182棟が銃撃や迫撃砲、ロケット砲によって被弾しました。複数の住民保護施設も攻撃を受け、20人以上の国内避難民を含め、少なくとも73人が犠牲になり、中国のPKO隊員2人も死亡しました。
 
 報告書は、7月の戦闘によって「キール大統領とマシャール前副大統領との不安定な和平合意は崩壊した」と明記しています。「PKO参加5原則」の紛争当事者間の「停戦合意」が完全に崩れているのは明らかです。
 
 「PKO参加5原則」の「中立性」も大きく揺らいでいます。
 かつてのPKOは、国連の内政不干渉・中立の原則を踏まえて、「停戦監視」を主要任務にしていました。しかし、今や、PKOの性格は大きく変貌し、「住民保護」のために武力行使も辞さない「交戦主体」となっています。
 
 「住民保護」を任務の筆頭に掲げるUNMISSは、その典型です。実際、7月の戦闘では、政府軍とUNMISS部隊との間でも一時交戦があったとの報道があります。さらに、国連安全保障理事会は8月、UNMISS強化のため「地域防護部隊」を創設し、住民などへの「攻撃準備」が認められる場合には「いかなる当事者」との交戦も認める決議を上げています。事実上の先制攻撃の権限を与え、南スーダン政府軍との交戦も想定する内容です。自衛隊のUNMISS派兵の継続が許されないのは明白です。
 前出の報告書によると、7月の戦闘では、政府軍兵士が国連職員や人道援助関係者らが滞在していたホテルを襲撃し、殺人や性的暴行などを働きました。その際、襲撃された宿泊者は、UNMISSに出動を要請しています。
 
「殺し、殺される」事態に
 自衛隊の「駆け付け警護」では、国連職員や人道援助関係者などを救助するため武器の使用が認められています。南スーダンの内戦状態の深刻化、攻撃的なPKOへの変質の下で、「駆け付け警護」の任務が付与されれば、政府軍や反政府勢力と交戦する危険は極めて大きく、取り返しのつかない状況に直結しかねません。
 違憲の武力行使によって自衛隊員が「殺し、殺される」事態は絶対に起こさせてはなりません。