2016年10月9日日曜日

反TPP = 保護主義 (読売社説) は的外れ

 韓国国民の激しい抵抗を押し切って韓国議会が2011年11月に協定を批准し、2012年3月米韓自由貿易協定FTAが発効したとき、日本の保守層にはTPPへの参加で韓国に遅れをとったかのように評価する人がいました。
 しかしそれは全く誤った見方であって、韓国はFTAの発効以後 塗炭の苦しみを味わうことになりました。
 
  (関係記事) 
    2015年11月19日 米韓FTAで韓国はボロボロに 米でもTPP反対集会 日本でも 
    2013年3月4日 韓米FTAで韓国に数千億円の損害賠償請求が + 
 
 読売新聞が8日、TPP反対を批判する内容の「自由貿易を阻む保護主義を廃せ」と題した社説を掲げたことに対して、「日々雑感」氏が韓国の現在の惨状を示して、的外れな主張であると批判しました。
 以下に紹介します。
 
 追記)韓国議会でFTA協定の批准を審議した際には至るところで反対のデモが行われ、国会にもデモ隊が乱入しました。しかし李明博大統領はそれらを全く無視して強引に批准させました。安倍首相はいま全く同じ道を歩もうとしていますが、隣国で現実に起こったことについての認識さえも持っていないようです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
読売新聞の社説「自由貿易を阻む保護主義を廃せ」は的外れだ。
日々雑感 2016年10月8日
 読売新聞は本日付の社説で「自由貿易を阻む保護主義を廃せ」と主張している。内容は英国のEU離脱や米国大統領の両候補がTPP反対を掲げていることに対する批判だ。
 その論理展開の中で読売新聞は飛んでもない勘違いをしている。「リーマン以後の世界経済の低迷は、各国で失業率の悪化や所得格差の拡大を生み、政治の内向き思考を強める作用をもたらした」とハナシにならない論理展開振りだ。
 
 リーマンショック以後の世界経済の低迷は供給過多による経済のデフレ傾向がもたらしたものだ。その主因は中国の爆発的な生産能力の拡大にある。その供給過多たるや異常を通り越して狂気の沙汰だ。
 たとえば中国の粗鋼生産能力は年間8億トンに達し、それは中国が投資バブル当時の需要4億トンの倍に達していた。ちなみに日本の年間需要は1億トンに過ぎない。国内で消費しきれない粗鋼が世界の鉄鋼市場へ向けて洪水のように溢れ出し、米国や日本などの粗鋼市場に異常事態を起こしている。
 
 米国は中国の粗鋼輸出に対してダンピングに抵触するとして提訴する構えだし、日本は日新製鋼がついに音を上げて新日鉄の傘下に入った。中国への投資が企業利益を最大化する近道だとして、世界各国の企業は先を争って中国へ進出した。
 その結果、中国の貿易に占める輸出品の半数が外国企業による、とういう状態だ。安価な製品が世界市場に溢れれば当然のように各国の物価はデフレ傾向にならざるを得ない。それでも中国に投資した企業の利益は最大化している。
 
 自由貿易が進み関税を廃して自由に「ヒト、モノ、カネ」が行き来するようになると、どういう事態が起こるか。その先進国が英国であり、韓国だ。
 英国はEUという欧州一体化に参加して、短期間に国内に800万人もの労働移民が溢れてしまった。人口6800万人の国に対する800万人だ。日本は人口1億2千万人で、現在は約230万人の外国人がいる。全人口半分の国に、日本の約4倍もの労働移民が押し寄せたのだ。その影響がいかに深刻なものかお解かりだろうか。
 
 TPPに反対するのを「保護主義」だというのはあまりに短絡に過ぎる。TPPは条約の構造上、日本を丸ごと米国の「金融植民地」にするようなものだ。その格好の例が米国とFTAを結んだ韓国だ。
 たとえば韓国の銀行は一行を除いて、残りのすべては資本金の過半数を外国資本に握られている。韓国内の企業も同様に外国資本に多くを握られていて、いかに銀行や企業が利益を上げようと、その利益は外国投資資本家へ還流されて、韓国内に残らない仕組みになっている。だから韓国の財閥企業が利益を上げようと韓国民の労働賃金は一向に上がらないし、街に溢れる失業者たちを雇用しようとする動機にはならない。
 そうした「自由」は投機家たちのための自由であって、国民経済を豊かにするための自由貿易ではない。投機資本による侵略を容易にするための「構造改革」がTPPの真髄だ。だから私はTPPに反対する。