2016年10月24日月曜日

新潟知事選で何が起きたのか

 新潟知事選での脱原発派の勝利は何かにつけて注目されています。
 東京新聞が改めて要旨次のような総括をしました。

 新潟県では、1996年東北電力巻原発の建設反対の巻町住民投票、2001年に柏崎刈羽原発へのプルサーマル導入反対の住民投票で、いずれも反対派が勝利し電力の計画撤回させました。
 今回の知事選は「原発再稼働の是非」というワン・イシュウ(単一争点)をめぐる「三度目の住民投票」という意味合いがあり、「知事選は県民が意思表明をする機会となりました
 
 民進党が米山候補陣営に加わらなかったことは「野党」勢力の分散にはならずに、それによって「再稼働反対を鮮明にできた」ことで逆に無党派層に浸透することができました。 
 一方、自公推薦森民夫候補が「中央との強い関係を前面に打ち出し」て選挙に臨んだことは、却って支持の広がりを抑制することになりました。
 
 何にもまして、民進党が加わらないデメリットよりも「反原発の旗幟を鮮明」にできることのメリットの方が大きいことが確認できたのは、この選挙の大きな収穫でした。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
原発「3度目の住民投票」 新潟知事選 何が起きた
東京新聞 2016年10月23日
 新潟県に二十五日、東京電力柏崎刈羽原発(柏崎市、刈羽村)の再稼働に反対する知事が誕生する。先の知事選で、共産、自由、社民三党の推薦を受けた米山隆一氏(49)が、自民、公明両党推薦の候補に約六万票差をつけて初当選した。新潟の有権者はなぜ、再稼働反対派を選んだのか。 (山口哲人)
 
■自分の問題
 「知事選は再稼働の是非を問う『住民投票』の性格を帯び、県民が意思表明できる機会となった」。刈羽村の市民団体「原発反対刈羽村を守る会」メンバー武本和幸さん(66)はこう振り返った。
 新潟県では過去二回、原発を巡る住民投票が行われた。一九九六年には東北電力が巻町(現・新潟市西蒲区の一部)に計画していた巻原発の建設二〇〇一年には柏崎刈羽原発へのプルサーマル導入の是非が問われた。いずれも反対派が勝利し、東北電と東電は計画の撤回に追い込まれた。
 今回の知事選は、原発をめぐる「三度目の住民投票」という意味合いがあった。過去二回は原発が立地する町村だけが対象だったが、今回は県内すべての自治体の住民が対象。反対が上回った背景には東電福島第一原発事故があると、武本さんは指摘する。
 コメどころの南魚沼市では、事故後の一時期、放射線量が急上昇した。福島県から避難してきた約三千人は、今も新潟県内で暮らす。「原発は自分の問題だと感じる人が増え、知事選の結果を左右した」
 
■脱原発鮮明
 党内に再稼働を容認する議員を抱える民進党が自主投票となり、皮肉にも米山氏は脱原発を鮮明にすることができた。「市民連合@新潟」の共同代表を務める佐々木寛・新潟国際情報大教授(政治学)は「米山陣営は遠慮なく再稼働反対を主張でき、無党派層に浸透できた」と分析する。
 佐々木氏はこうも指摘する。「県民は原発を危険というだけでなく、中央の押し付けと感じた
 新潟県内に電力を供給するのは東北電力だ。柏崎刈羽原発は一二年以降、運転を停止しているが、もし再稼働しても、電力は首都圏向けに提供される。東電が政府と二人三脚で再稼働を急ぐ姿は、中央の押し付けに映ったとみる。
 
■戦略のミス
 自公が推薦した前長岡市長の森民夫氏(67)の陣営は、中央との関係を前面に打ち出した。投票前日に、地元紙に出した選挙広告で「国から見放されない新潟県を!! 国との太いパイプをもつ新潟県を!!」と強調。森氏は街頭演説で「国とパイプがあるから(再稼働を巡っても)厳しいことも言える」と訴えた。
 自民党の伊吹文明元衆院議長は投開票後の派閥会合で、知事選応援で新潟入りした際に、県民から言われた話を紹介した。
 「東京から来る偉い人(応援弁士)は中央とのパイプを話し、俺たちに入れないと損だという利益誘導みたいな印象を与え、非常に不愉快だと言われた。一般の人の九十九パーセントはこういう感覚なんだと気付いた」