2005年に制定された草案を「極右の安倍カラー」によってさらに大幅に改悪したのが現行の2012年版です。
天木直人氏は、「改憲したいのは自民党なのだから、どう改憲したいのかその確定案はあるのかと詰め寄るだけでいい。自民党が果たして確定案を作れるかどうかも怪しい」と述べています。そして間違っても対案など出してはいけないと。
蓮舫氏は何か対案を出すのが賢いことかのような感覚を持っているようですが、それは改憲については大間違いというものです。
天木氏のいうとおり、いつになれば自民党の各提案が出てくるのか、先ずはそれをじっくりと待つべきです。
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改憲したいものが改憲案を確定することからすべてが始まる
天木直人 2016年10月8日
きょう10月8日の毎日新聞が一面でスクープ報道した。
「自民党は国会の憲法審査会で憲法改正の議論を促すため、野党の批判が強い2012年の憲法改正草案だけでなく、2005年に確定した新憲法草案もベースに改憲項目を盛り込む方針を固めたと。
2012年草案のうち保守色の強い条文を事実上、棚上げすることで、野党を議論の土俵に乗せる狙いと見られる」と。
スクープというほどのものではない。こうなることはすでにわかりきっていたことだ。
そして、この短い文章の中に、今の改憲論争の馬鹿さ加減のすべてが凝縮されている。
まず自民党の2012年の改憲案の酷さだ。安倍側近のウルトラ保守が主導して作ったお粗末な改憲案など、野党が反発するまでもなく、まともな国民なら相手に出来ない酷さだ。
だから野党はその草案の撤回を求めるのではなく、それをベースに逐一議論して、その馬鹿さ加減を白日の下にさらすだけでいいのだ。そう私は繰り返し書いてきた。
自民党も馬鹿ではないからて、それに気づき、野党に譲歩した形で棚上げしただけの話だ。
その動きは既にかなり前から見られた。
野党はここで自民党の戦略に乗せられてはいけない。
改憲したいのは自民党なのだから、自民党の確定案は一体どっちなんだ、そもそも確定案はあるのか、と詰め寄るだけでいいのだ。
自民党は2005年に策定した新憲法案もベースに改憲項目を絞り込むという。
2012年と2005年の改憲案のどっちなんだ。
それともあらたに折衷案をつくって提出し直すというのか。
そもそも自民党は、改憲草案について最終的な確定案をつくれるのか。
実は、その時、その時に自民党草案なるものが出来て、それが再び変更されて来たのが自民党草案の歴史だった。
つまり自民党はいつまでたっても最終的な確定案がつくれないのだ。
それほど改憲は自民党内でも議論が百出し、まとめる事が難しい一大事業なのである。
野党は間違っても対案を出してはいけない。
自民党に、これ以外にはないという確定案を出せと詰め寄るだけでいいのだ。
それが出て初めて、条文ごとの議論を始めればいいのだ。
そうすれば、いつまでたっても自民党は確定案を出せずじまいで終わるだろう。
つまり自民党に憲法改正など出来ないのだ。
ましてや精緻な議論の出来ない安倍首相の頭では100%出来ない。
それをごまかすために安倍首相は、今度は野党の番だ。対案をお示し下さいと、ボールを投げ返してくるに違いない。野党はそれに乗ってはいけない。
当たり前だろう。改憲案は改憲したいものが出すのが当たり前の事だ。
もっとも、野党もまた改憲したいというのであれば、何をかいわんやである(了)
(付録)
語るに落ちる安倍首相の配偶者控除見直し先送り
天木直人 2016年10月9日
安倍首相は「働き方改革」の柱として、女性の就労を妨げているとされる配偶者控除の見直しをすると大見得を切って来た。
ところがあっさりとその旗を降ろした。その理由がふるっている。
来年早々にも踏み切るといわれている解散・総選挙を意識して方向転換したというのだ。
つまり選挙に不利だから延期したのである。語るに落ちるとはこのことだ。
配偶者控除の見直しが、実は、「働き方改革」とか「女性の活躍」などというきれいごととは無関係な、単なる増税だったことを認めたようなものだ。
あらゆる税制改革は、その理由は聞こえはいいが、すべて増税である。
その事を見事に教えてくれた配偶者控除見直しの撤回である(了)