ドゥテルテ大統領の米国に対する罵倒、絶縁宣言が、常に米国の前でひれ伏している安倍政権や自民党さらにはマスメディアにはどうしても理解できないようです。しかし1899年以降日米戦争に至るまでの40年余りの間米国の植民地となって、米国人から凄惨な加虐を受け続けて来たフィリピン国民がそうした感情を持つのは極めて当然のことだと言われます。
そうした歴史を背景にして決然と「意志表明」をした同大統領に対して、何の認識も持たずに「米比の懸け橋になる」などという妄想を抱くとは笑止なことです。
彼ら米国人がどれほど獰猛苛烈であったのかは、アメリカ・カナダ・オーストラリア・ニュージーランドでそれぞれ原住民を絶滅させて新国家を打ち立てた血塗られた歴史を見れば容易に理解できることです。
それとももうそんな「意志」は一切喪失するほどに、いわゆる日本の保守派やマスメディアは対米的に骨抜き状態にされているのでしょうか。
天木直人氏の「『米比の橋渡し』とは笑わせる」を紹介します。
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「米比の橋渡し」とは笑わせる
天木直人 2016年10月27日
繰り返すが、私がここで書きたいのはドゥテルテ大統領の訪日の実態の事ではない。
それを報じるメディアの事だ。
ドゥテルテ大統領の訪日の実態については書くまでもない。
ドゥテルテ大統領の訪日は日本にとって大きな誤算に終わったのだ。
ドゥテルテ大統領の訪日を決めた時点ではこんなはずではなかったに違いない。
巡視船などを供与し、日比間で対中包囲網を謳い上げるつもりだった。
しかし、先に中国を訪問され、その中国で南シナ海の棚上げを宣言された。
もっと衝撃的なのは、米比軍事同盟の破棄を宣言されたことだ。
日本は完全に思惑が外れたのだ。
といって、今からドゥテルテ大統領の訪日を止めるわけにはいかない。
だから、今度のドゥテルテ大統領の訪日の実態は、いかにダメージコントロールするかであった。
しかも、それさえもうまくいかなかった。
ドゥテルテ大統領は、日本に来てまで反米の言動を繰り返したからだ。
日本に到着した早々、在日フィリピン人の集まりで対米自立を訴え喝采を浴び、2年以内に米軍に出て行ってもらうと、時期まで明示して、同盟見直しを公言した。
驚くべき事に、サタヤ外相ですら、日本記者クラブで、米軍とフィリピン軍の合同軍事演習は中国側の疑念を高めることにつながりかねないと言ってドゥテルテ大統領の任期中の中止を示唆した(10月27日産経)
すかさずアーネスト米大統領報道官が不快感を示した。
日本にとっては面目丸つぶれだ。
このようなドゥテルテ大統領の訪日の実態をメディアはストレートに報じない。
それどころか、どの新聞も、首脳会談で、南シナ海を「法の支配で解決」、「平和的に解決」、で合意した事ばかりを強調する。
そこまではいい。
私が予想した通りだ。
しかし、「米国の重要性共有」(産経)や、「米とフィリピンの橋渡し」(日経)、「対米融和呼び掛け」(東京)などとメディアが書いたのには笑ってしまった。
どこにそれが出来たというのか。
ドゥテルテ大統領の訪日を大手メディアはどう報じるか、目が離せないと私は書いたが、ここまでウソを書くとは思わなかった。
それほどドゥテルテ大統領の訪日は安倍首相にとって手に負えなかったということである(了)