2016年10月27日木曜日

自衛隊は南スーダンから撤退を

 南スーダンは、国外に逃亡したマシャール前副大統領「和平合意は完全に崩壊した」と述べ、政府軍も国連NGO部隊に敵対行為を繰り返すなどPKO参加5原則は完全に崩れています。
 それにもかかわらず安倍首相・稲田防衛相などは「参加5原則は維持されている」とうそぶいて、PKO部隊を撤退させるどころか、この11月にも「駆け付け警護」や「宿営地共同防護」といった新任務付与を判断する積りにしています。
 
 しんぶん赤旗が、参加5原則が既に崩壊していることから撤退すべきであること(26日付)や自衛隊岩手山演習場で行われている自衛隊の新任務の訓練の様子から自衛隊が戦後初めて、海外で殺し殺される道に踏み出すことを実感した(25日付)ことを報じました
 
※ PKO参加5原則
1)紛争当事者の間で停戦合意が成立していること
2)当該平和維持隊が活動する地域の属する国を含む紛争当事者が当該平和維持隊の活動及び当該平和維持隊へのわが国の参加に同意していること。
3)当該平和維持隊が特定の紛争当事者に偏ることなく、中立的立場を厳守すること。
4)上記の基本方針のいずれかが満たされない状況が生じた場合には、我が国から参加した部隊は、撤収することが出来ること。
5)武器の使用は、要員の生命等の防護のために必要な最小限のものに限られること。
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南スーダンから撤退を 政府は派兵5カ月延長 「駆け付け警護」付与狙う
しんぶん赤旗 2016年10月26日
 政府は25日の閣議で、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)への陸上自衛隊部隊の派兵について、現行計画で期限切れとなる今月末から5カ月間延長し、2017年3月末までとすることを決定しました。政府は3月施行の安保法制―戦争法に基づき、11月にも、「駆け付け警護」や「宿営地共同防護」といった新任務付与を判断する見通しです。
 
 陸自派兵の延長は、国連が南スーダン派遣団(UNMISS)の活動期間を12月15日まで延ばしたことに連動した措置。陸自第9師団(青森市)を中心とする部隊が派兵されます。同部隊は岩手山演習場(岩手県)で新任務を含む訓練を行っています。菅義偉官房長官は25日午前の記者会見で、交代時期について「11月下旬以降」との見通しを示しました。
 
解説 参加5原則 既に崩壊
「PKO5原則は維持されている」。稲田朋美防衛相は25日の記者会見でこう述べ、南スーダンでのPKO(国連平和維持活動)派兵延長を正当化しました。政府はこの期間中、「駆け付け警護」などの新任務付与を狙っています。
 しかし、南スーダンでは7月に大統領派・副大統領派の激しい戦闘が、自衛隊が駐留する首都ジュバを含む全土で発生して数百人が死亡。その後も各地で武力衝突が続いています。国外に逃亡したマシャール前副大統領は「和平合意は完全に崩壊した」(NHK報道)と公言。政府軍との戦闘のかまえを崩していません。
 「紛争当事者間の停戦合意」などのPKO参加5原則は完全に崩れているのが実態です。
 稲田氏は、マシャール派のタバン・デン氏が現在の副大統領に就任していることをもって「新たな紛争当事者は出現していない」といいます。しかし、タバン・デン氏が同派から離脱して、政府側についたのが実態です。
 いま、政府がすべきは派兵延長ではなく、南スーダンからの即時撤退と、憲法9条に基づいた民生支援の抜本的強化です。新任務の付与は論外です。(竹下岳)
 
 
陸自新任務訓練 「暴徒」無抵抗で退散 南スーダンの現実と隔たり
「殺し殺される」道へ
しんぶん赤旗 2016年10月25日
 「道を開けなさい!」「説得したが群衆は解散せず!」「車両、前へ!」
 岩手県の最高峰・岩手山ろくに広がる陸上自衛隊岩手山演習場(滝沢市、八幡平市)に、緊迫した無線の交信が続きます。
 初めて姿を見せた、安保法制=戦争法に基づく自衛隊の新任務の訓練とは―。
 
盾持ち突入
 南スーダンで政府に職を求めた群衆が暴徒と化し、国連職員が取り残されたため、国連PKO(平和維持活動)に「駆け付け警護」を要請。これに応じた陸上自衛隊約20人が軽装甲車から大音量の警告音を発し、「暴徒」がひるむと盾を持って突入し、現場を制圧。建物の中に取り残されていた国連職員を救出して現場を離脱。「暴徒」は無抵抗のまま退散していった―。
 24日、報道陣に公開された「駆け付け警護」などの新任務の訓練は、戦闘状態の南スーダンに11月中旬から派兵される陸自第9師団第5普通科連隊(青森市)を中心とした部隊によるものでした。
 戦争法の一部である改定PKO法では、敵対勢力の殺傷を含む「任務遂行」のための武器使用が可能になります。自衛隊が戦後初めて、海外で殺し、殺される道に踏み出す―。その最初の一歩になりかねない訓練です。
 しかし、肝心の武器使用を伴う訓練は「手の内をさらす」(自衛隊関係者)として非公開でした。武器使用基準も覆い隠されています。
 
深刻な矛盾
 そもそも、今回の訓練で想定された状況は、南スーダンの実態からかけ離れています
 南スーダンでは政府軍と反政府勢力(副大統領派)が戦車による砲撃を伴う激しい戦闘を展開しています。武装した政府軍が国連施設やNGO(非政府組織)関係者を襲撃する事例が相次いでいます。「駆け付け警護」の最も現実性が高いシナリオは、南スーダン政府軍などとの交戦なのです。
 関係者は、「より烈度の高い訓練も行っている」と述べました。しかし、仮に政府軍や副大統領派まで想定しているのなら、憲法9条に反する海外での武力行使を前提にした訓練となります。逆に、「暴徒」以上の想定を行っていないとしたら、自衛隊は南スーダンでほとんど何もできません。
 
 深刻な矛盾を抱えたまま、政府は来月、南スーダンPKOへの新任務付与を判断します。(竹下岳)