2016年10月26日水曜日

安倍政権の沖縄での報道弾圧を「国境なき記者団」が批判

 国連「表現の自由」特別報告者のデビッド・ケイ氏4月19日、約1週間日本滞在し、政府やメディア、市民団体関係者やジャーナリストらと面会を終え、離日を前に記者会見しました。
 ケイ氏は、1週間に及ぶ聞き取り調査の結果、日本の報道の自由を巡る懸念は「より深まった」として、放送局に「政治的に公平であること」を定めた放送法第4条や、特定秘密保護法について「改正が必要」と提言しました。また政府機関とメディアの癒着を招く現行の記者クラブ制度の廃止求めるとともに、政府からの独立性を担保するためメディア横断的な組織の設立を提唱しました
 翌日の4月20日、NGO「国境なき記者団」「報道の自由度ランキング」で、日本は世界で72位と認定しました。昨年から更に11位後退したわけです。
 これは勿論メディアの本来的な脆弱性を示すものですが、安倍政権が登場する度にたランキングの後退が顕著になるという傾向から見ると、同内閣がメディアに特異的に強い干渉を行っていることを示すものということもできます。
 
 その「国境なき記者団」が、沖縄における報道の自由が侵害されていると指摘する声明を22日に公表しました。
 「国境なき記者団」は特に8月、沖縄県北部での米軍ヘリパッド建設に対する抗議行動を取材していた沖縄タイムスと琉球新報の記者を、機動隊員が記者であることをしりつつ拘束し、現場から連れ去ったことを重視し、それに対して沖縄2紙をはじめとして日本新聞労連も抗議声明を発表したのに対して、政府が10月、「県警においては警察の職務を達成するための業務を適切に行っており、報道の自由は十分に尊重されている」などと答弁し記者の拘束を正当化したことについて、以下のように強く非難しています。
『安倍晋三首相が率いる政府は警察のこうした行動を容認し、将来抗議行動を取材するジャーナリストにとって危険な先例を作った』
 
 LITERAの記事を紹介します。
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安倍政権の沖縄での報道弾圧に「国境なき記者団」が批判声明! 
一方、官邸は国連の「表現の自由」調査を監視する暴挙
LITERA 2016.10.24.
 機動隊員が市民に対し「土人」「シナ人」などと発した暴言問題にくわえ、松井一郎大阪府知事が差別発言を肯定した問題は、批判や責任追及の声がネット上であがる一方で、暴言の当事者である警官2名の戒告処分で幕引きされそうな気配だ。
 
 そんななか、フランスに本部を置く国際的なジャーナリストのNGO「国境なき記者団」が、沖縄における報道の自由が侵害されていると指摘する声明を22日に公表した。
「国境なき記者団」の声明ではまず、イギリス人ジャーナリストのジョン・ミッチェル氏が沖縄の在日米軍の活動について報道してきたことを理由に米軍から監視を受けていることを示し、アジア太平洋事務所所長のコメントとして「日本政府もこれらの活動に関与したかどうかを明確にする必要がある」と批判。そして、沖縄の報道に関し、標的にされているジャーナリストはミッチェル氏だけではないとし、沖縄2紙の問題についてこのように言及している。
 
〈8月、県北部での米軍ヘリパッド建設に対する抗議行動を取材していた沖縄タイムスと琉球新報の記者を、機動隊員が拘束した。記者であることを警察に証明したにもかかわらず、現場から連れ去られた〉(沖縄タイムス掲載「声明全文」より)
 
 これは本サイトでも当時伝えたが、今年8月20日、ヘリパッド建設工事のために砂利を積んだ車両の搬入を止めようと約50人の反対派市民が座り込みで抵抗。それを機動隊が力づくで市民を強制排除したのだが、そのなかには取材中の沖縄タイムスと琉球新報の記者2名がおり、腕章を見せて記者であることを伝えたにもかかわらず、強制的に排除、警察に拘束されたのだ。
 
 市民の抗議活動を取材することは、報道機関として当然の職務であり、国民の知る権利を守るものだ。それを警察が記者を拘束し取材活動を妨害するというのは、あきらかに報道の自由を侵害するものである。当然、沖縄2紙のみならず日本新聞労連も抗議声明を発表したが、政府は10月11日に「県警においては警察の職務を達成するための業務を適切に行っており、報道の自由は十分に尊重されている」などとする答弁を閣議決定。記者の拘束を正当化したのだ。
 この政府の態度に対し、「国境なき記者団」は今回の声明でこう強く非難している。
 
安倍晋三首相が率いる政府は警察のこうした行動を容認し、将来抗議行動を取材するジャーナリストにとって危険な先例を作った〉(同前)
 
 この声明は世界的に見ても高江がいかに異常な状態に晒されているかを証明するものであり、同時に日本全体への警告と言えるだろう。高江ではいま、市民への不当な弾圧だけでなく報道の自由さえ奪われている。そして、これは安倍政権による“将来の日本”の姿でもあるのだ。
 いや、“将来”などではなく、もう現実になっているのかもしれない。たとえば政府は、2015年12月に「表現の自由」の状況を調査するために来日予定だった国連特別報告者であるデイビッド・ケイ氏(米カリフォルニア大学教授)に対し、直前になって「受け入れ態勢が整わない」などとして調査を一方的にキャンセル。今年4月にようやく来日したが、そのときも、何度も高市早苗総務相に面会を申し入れたものの断られたことをケイ氏が明かしている。
 
 しかも、ケイ氏の来日調査に際して、首相官邸は驚くような動きをしていたと「FACTA」(ファクタ出版)6月号が報じている。
 
〈「自民党のゲッペルス」と揶揄される世耕弘成内閣官房副長官が、ケイ氏の来日を前に、通訳など仲介役を担う女性弁護士らに関心を寄せ、内閣情報調査室などインテリジェンス・コミュニティ部員に彼女らの動向を監視するよう指示したと囁かれる〉
 
 記事によれば、〈この情報機関関係者が作成したとみられるメモの一部が永田町に流出〉したというが、そこには「弁護士はヒューマンライツ・ナウ事務局長であり、過激派関係者などと交流」 「弁護士は昨年12月の訪日をデービッド(・ケイ)氏に働きかけた。今回の訪日においては同氏の通訳を担当予定」 「市民団体A会は弁護士を介して、デービッド氏に対し、特定秘密保護法が国民の知る権利を侵害していることを訴えるレポートを提出しようとしている」などと書かれていたという。
 
 つまり、ケイ氏の調査に過敏になった官邸は、ヒューマンライツ・ナウ事務局長である伊藤和子弁護士をマークするために監視していたというのだ。
 しかも、この報道に対し、伊藤弁護士はブログで「政府による監視など、プライバシー侵害の人権侵害です」と批判した上で、「国連調査団の通訳は、国連がプロの通訳を有料で雇うのが常識です。私が通訳など、ありえませんし、国連システムを知っている人なら笑ってしまいます」「私は今回はコーディネートもしていません」と、ケイ氏の調査への関わりを否定している。
 いかに内調の情報が出鱈目なのかがよくわかるというものだが、しかし、笑い話などで済ませられるはずがない。これが事実なら、官邸はケイ氏も監視対象にしていたことは間違いないからだ。よりにもよって「表現の自由」の実態を調査しに来日した国連の報告者を、である。
 
 ケイ氏は調査後の会見で「報道の独立性は重大な脅威に直面している」と警告したが、その元凶は無論、安倍政権だ。このような権力による報道への介入が、高江での記者拘束という言語道断の行為を引き起こし、さらにはメディアの政権への忖度によって、市民の人権を遵守する立場にある松井一郎府知事の明白な差別容認発言が退任問題に発展しないという状態もつくり出しているのだ。
 
 この会見で、ケイ氏は以下のようにも語っている。
「政府から批判されたり、圧力をかけられたりした場合、メディアはそれを押し返さなければなりません。しかし、日本では押し返す力が見えません
 「当たり前ですが、ジャーナリストの役割は権力の監視です。政府の発表をそのまま新聞に掲載したり、テレビで流したりすることではありません。メディアがすべきことは『政府の言動はこれで本当にいいのだろうか』といった議論を含めて記事にすることです。日本では、それが非常に難しくなっているように見えます」
 
 状況の異常さは、その内部にいると麻痺してわかりづらくなっていく。だからこそ、ケイ氏の指摘や、今回の「国境なき記者団」の声明のように、外部の警鐘に耳を傾けなくてはならないだろう。(編集部)