2016年10月22日土曜日

稲田防衛相の南スーダン内戦の過小評価を追及 共産党議員

 政府はこれまで南スーダンの情勢については、「武器を使用した衝突はあったが、戦闘行為ではない」という立場を崩しませんでした。戦闘行為ではなく「散発的な発砲事案」であるという訳です。しかし、現実には7月には300人、9月には20人余り、また10月10日を挟む一週間で60人もの死者が出ています。
 共産党の井上哲士議員は20日の参院外交防衛委員会で、南スーダンの戦闘は「攻撃ヘリの展開を特徴とし、政府軍の最高レベルによって指示されたもの」とする国連の専門家委員会報告を示し、政府の認識は「実態を無視したとんでもないものだ」と追及しました。
 稲田防衛相は「政府軍が戦車を出した武力衝突であ」と政府軍の関与を認め、「発砲事案」という評価を事実上修正しました。
 
 政府は、南スーダンのPKO活動で「駆け付け」警護などの新任務を自衛隊に与えたくて、「戦闘状態ではない」と粉飾することに余念がありませんが、今年2月以降の4カ月間で、南スーダン政府軍による国連PKOに対する敵対的行為42発生していて既に「PKO活動」を継続する前提が崩れています(もともとPKOというよりも、アメリカや中国の石油利権の確保が目的と言われています)。
 政府は11月の交代部隊に新任務を付与するのは無理となったために、現地部隊の派遣期間を5か月延長しましたが即刻帰国させるのが筋です。
 
 井上議員は、南スーダンPKO派兵で自衛隊員の家族に不安が広がる中、国が、現地の実態を偽って「安全性」ばかりを強調した家族向けの説明資料を作成していたことも明らかにしました。
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防衛相、「発砲事案」の答弁修正
南スーダン7月内戦 井上氏が「過小評価」追及 参院外交防衛委
しんぶん赤旗 2016年10月21日(金)
 日本共産党の井上哲士議員は20日の参院外交防衛委員会で、安保法制=戦争法による最初の新任務付与が狙われる自衛隊のPKO(国連平和維持活動)部隊が展開する南スーダン情勢をめぐって、政府が危険な実態を意図的に小さく見せていると追及しました。
 
 井上氏は、7月に首都ジュバで発生した大統領派と副大統領派の大規模戦闘について、政府が「散発的な発砲事案」「衝突」(7月12日の防衛相会見)などと過小評価してきた点について、国連の専門家委員会が「攻撃ヘリの展開を特徴とし、戦闘は政府軍の最高レベルによって指示されたもの」と報告していることを指摘。「実態を無視したとんでもない認識だ」と追及しました。
 
 稲田朋美防衛相は「政府軍が戦車を出した武力衝突であり、(その後)治安が悪化したのはそのとおりだ」と答弁。政府軍の関与を認め、「発砲事案」という評価を事実上修正しました。
 さらに井上氏は、自衛官家族への説明要領を示した自衛隊の内部文書では、現地情勢の“安全さ”ばかりが強調される一方、国連報告書では国連要員に対して南スーダン政府機関からの攻撃や脅迫が続発している実態が記されていると指摘。「駆け付け警護などの新任務で自衛隊と政府軍が交戦する可能性を示している」と迫りました。
 
 稲田氏は、「国連や人道支援関係者に対する脅威があるとの報告は承知している」と政府軍による敵対行為の存在を認めました。
 
 また、政府軍がNGO関係者らが滞在するジュバ市内のホテルを襲撃した7月の事件についても「承知している」とする一方、「(自衛隊が新任務によって)南スーダン政府軍と交戦することは想定されない」と強弁しました。
 
 井上氏は、いま必要なのは新任務の付与や派遣期間延長ではなく、自衛隊撤退と人道支援の拡充だと強調しました。
 
 
派遣隊員の家族向け「安全」強調 南スーダンの実態ゆがめる資料 
自衛隊作成 井上氏示す
しんぶん赤旗 2016年10月21日
 事実上の内戦状態になっている南スーダンへのPKO(国連平和維持活動)派兵で自衛隊員の家族に不安が広がる中、自衛隊が南スーダンの実態をゆがめて、「安全性」ばかりを強調した家族向けの説明資料を作成していたことが分かりました。
 
 日本平和委員会の「平和新聞」が入手し、日本共産党の井上哲士議員が20日の参院外交防衛委員会で示したもの。「平和安全法制(家族向け)資料」という題名で、「部内限り」とされ、家族からの疑問に対する応答要領が示されています。
 
 「治安情勢が悪化している中で、自衛隊自身が『駆け付け警護』を行えば、…武力紛争に巻き込まれることになるのではないか?」との問いに対しては、「南スーダン共和国が国連PKOの活動に同意し、受け入れている状況においては、武力紛争に巻き込まれることも無い」と断定しています。
 
 しかし、今年2月以降の4カ月間で、南スーダン政府軍による国連PKOに対する敵対的行為が42件発生、首都ジュバでも国連施設への襲撃が発生しています。
 また、「駆け付け警護」で「任務遂行型」の武器使用が可能になることについて、「従前より安全に任務を遂行することが可能となり、危険が増大するものではありません」と述べています。武器を用いて武装勢力の妨害を排除すれば、交戦に発展するにもかかわらず、事実をまったくゆがめた説明です。