2016年10月19日水曜日

自民は“復古調”改憲草案を棚上げの方向

 自民党が野党時代の2012年4月にまとめた自民党憲法草案は、前文で日本の歴史、伝統、風土などに触れるとともに、「基本的人権の制約」、「天皇の元首化」「国防軍・軍事裁判所の創設」、「国旗国歌の尊重規定」、「家族尊重の規定」等々、いわば旧憲法(大日本帝国憲法)への回帰路線を鮮明にしたもので、同党が2005年に作成した改憲草案に比べても著しく右傾化しています。
 それは2009年に自民党内に「憲法改正推進本部」ができた時に安倍氏が最高顧問としてそれに参加し、腹心の礒崎陽輔氏、稲田朋美氏や加藤勝信氏などにけしかけて安倍カラーの強い現在の草案を作らせたからでした
※  10月6日 安倍首相は改憲案にこんなに関わっていた
 たまたま草案の執筆を担当した礒崎陽輔氏(事務局長)には立憲主義という認識が欠けていたこともあって、出来上がったものは「生徒会の規則」というか「慶安のお触書」のような体裁のものになりました。
 
 安倍首相は、この草案作成後に4回の総選挙の洗礼を受けて国民に受け入れられているなどと述べていますが、一般の国民でそんな風に理解している人はいないと思います。
 当然野党側からはそれを憲法審査会のベースにするのでは審議も出来ないとして、強く撤回を要求されてきました。
 
 この状況を打開するために、自民党はこの草案を議論のたたき台とするのは止めて、棚上げにすることで憲法審査会への野党の出席を促すことにしたということです。12年版の草案は「撤回」はしないものの、「歴史文書」と位置付けられ封印?されることになります。 (^○^)
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自民、“復古調”改憲草案を棚上げ 審議進めるため
テレビ朝日 2016年10月18日
 憲法改正を巡って自民党に新たな動きです。自民党が野党時代にまとめた改憲草案について「天皇の元首化」や「国防軍の創設」「家族尊重の規定」など保守色が濃いため、野党側から撤回を要求され、国会審議に入れていません。このため、自民党はこの草案を議論のたたき台とはせずに棚上げにすることで国会審議の呼び水にしたい考えです。(政治部・澤井尚子記者報告)
 
 自民党の二階幹事長は、憲法改正草案について、野党の撤回要求には応じないながらも、棚上げにすることで何とか前に進めたい考えを強調しました。
 自民党・二階幹事長:「それ(改憲草案)にこだわる必要ないが、そういうものを表に出したことに対して、やっぱり責任を感じながら審議をしていかなければならない
 野党時代に作成された改憲草案には若手議員を中心に半数の議員が関わっていないため、「復古調だ」などの異論が出ています。このため、推進本部では、改憲草案を2012年時点で作成された「歴史文書」と位置付けることで、棚上げにする案が浮上しています。一方、日本維新の会の幹部が、衆議院・憲法審査会に早期審議入りを申し入れました。ある自民党幹部は「重要な推進力だ」として連携に強い期待感を示しています。ただ、民進党などが求める「撤回」には応じるつもりはないため、まだ審議入りのめどは立っていません。
 
 
安倍首相、憲法改正は「柔軟な姿勢で」
  自民党「改憲草案は撤回しない」と表明
吉川慧 The Huffington Post  2016年10月18日
自民党は7月の参院選後初となる憲法改正推進本部の会合を10月18日に開き、2012年に発表した憲法改正草案(改憲草案)を撤回しない方針を示した。本部長の保岡興治元法相が表明した。朝日新聞デジタルなどが報じた。 
自民党の改憲草案は、自民党が野党時代の2012年に作成されたもの。「国防軍の保持」「天皇の元首化」「国旗・国歌の尊重義務」「家族尊重の規定」など保守色が濃いため、野党側が批判している。
 自民党は改憲草案を「『公式文書』の中の一つ」と位置付ける。その一方で、保岡氏は草案やその一部を切り取って、そのまま憲法審査会に提案することは考えていない」と話した。与野党協議のたたき台とせず、国会には提出しない方針だ。
改憲草案を強く批判する野党側に配慮し、撤回はしないものの改憲草案を事実上棚上げすることで、野党側への歩み寄りを見せたかたちだ。これにより、憲法審査会での改憲論議を再始動させる狙いがあるとみられる。
 
保岡氏は「草案を手にしてから既に4回の国政選挙を経て、議員構成も大きく変わった」とした上で、「現在の所属議員で闊達な議論を行い、党の考え方を整理する必要がある」と、党派を超えた合意形成を図るべきだという方針を述べた。
 
■野党側は改憲草案の撤回を要求
野党側は自民党の改憲草案を強く批判しており、今後、与野党協議が進むかどうかは不透明だ。
安倍首相は7月の参院選後、自民党の改憲草案をベースに改憲論議を進めたい意向を示した。ただ、今秋の臨時国会では「草案を世に出したのは私ではない」と述べるなど、野党からの改憲草案に関する質問には、「行政府の長」として明言を避けている。
 
民進党の野田佳彦幹事長は9月27日の衆院本会議の代表質問で「本気で議論する気があるなら、まずは自民党総裁として草案を撤回して頂きたい」と求めたが、安倍晋三首相は「理解に苦しむ」と撤回を拒否している。
また、同じく民進党の長妻昭元厚労相は10月3日の衆院予算委員会で、基本的人権を「永久の権利」と定めた憲法97条などを改憲草案で削除した理由を追及。これに対し安倍首相は「憲法審査会で議論を」との答弁に終始し、説明を避けた。
また、安倍首相は「私が憲法草案を出したと言うが、どこに出したのか。世に出したのは私ではない。谷垣総裁の時に出された。これは屁理屈ではない」と長妻氏に反論した。
その一方、安倍首相は9月29日の参院本会議で「合意形成の過程で特定の党の主張がそのまま通ることがないのは当然だ」と発言。衆参両院の憲法審査会で、自民党の改憲草案にこだわらない考えを示した。
10月5日の参院予算委員会でも安倍首相は、「一字一句変えないと言ったら一歩も進まない。柔軟な姿勢で臨む」と述べている。
 
自民党と連立を組む公明党は、憲法改正には慎重な姿勢だ。党の公式サイトでも、現行憲法について「『基本的人権の尊重』『国民主権主義』『恒久平和主義』の3原則は、人類の英知というべき優れた普遍の原理」としており、自民党案には難色を示すものとみられる。