2016年9月24日土曜日

シリア政府軍を空爆した外国軍司令部をロシアが巡航ミサイルで攻撃

 アメリカにとってISは中東に於ける戦争政策を続けていくうえで欠かすことの出来ないコマで、そのISの生みの親であるとともに育ての親の役割を果たしています。
 シリアにおいてもアサド政権を倒すために「ISを攻撃する」という口実で数千回という空爆を繰り返してきたのですが、ISには殆ど打撃はないままに膨大な難民が生み出されました。
 しかしその後ロシアが昨年9月末にISへの空爆攻撃に参加してからは、ISが実際に打撃を受けるようになってシリア政府軍が優勢になりました。
 
 シリアのデリゾールで17日アメリカ側(有志国連合)の戦闘機4機がシリア政府軍を空爆し、80人とも60人ともいわれる人たちを殺害しました。アメリカはISを攻撃するつもりが誤って政府軍を攻撃したと謝罪しましたが、空爆の7分後にISの軍隊が政府軍を攻撃したことから、ISと連携した空爆であったことは明らかです。
 それに対して20日シリア沖ロシア艦船から発射された巡航ミサイルがシリア山岳地帯にある外国軍の司令部を爆撃し、アメリカ、イギリス、イスラエルの軍人など約30名が死亡しました
 
 これまでアメリカ側の行為に対してはロシアも含めてひたすら受忍してきたのですが、今度のケースはアメリカに敢然と反撃した珍しいケースです。櫻井ジャーナルの記事を紹介します。
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デリゾールでシリア政府軍を空爆させた外国人の司令部を
ロシア軍が巡航ミサイルで攻撃との情報    
櫻井ジャーナル 2016年9月23日
 ロシア系アラビア語メディアによると、シリア北部の要衝、アレッポの山岳地帯にある外国軍の司令部を、シリア沖にいるロシア軍の艦船から発射された3発の超音速巡航ミサイルが9月20日に攻撃、約30名が殺されたという。死亡者はアメリカ、イギリス、イスラエル、トルコ、サウジアラビア、カタールから派遣された軍人や情報機関の人間で、17日にデリゾールでシリア政府軍をF-16戦闘機2機とA-10対地攻撃機2機で攻撃させたのはこの司令部だとされている。
 
 デリゾールでの攻撃では60名とも80名とも言われる兵士が殺された。アメリカ、そして攻撃に参加したことを認めているオーストラリアとイギリスはミスだとしているが、現代の戦闘システム、現地の状況から考えてありえない。しかも空爆から7分後、ダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)の部隊が地上でシリア政府軍に対する攻撃を開始、空と陸で連携していた可能性が高いことが明らかになった。
 
 ロシア政府の広報官、マリア・ザハロワはアメリカ軍主導の連合国軍によるシリア政府軍空爆について、「どのように考えても、私たちは恐ろしい結論に到達してしまう。つまり、ホワイトハウスはダーイッシュを守っているのだ。疑いようがない。」と語っているが、アメリカやその「同盟国」がアル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュを侵略の手先に使っていることは公然の秘密。当然のことながらロシア政府も熟知しているはずだが、これまで口にしてこなかっただけだ。
 
 昨年、バラク・オバマ政権は好戦的シフトを強化した。国防長官と統合参謀本部議長はアル・カイダ系武装集団やダーイッシュの危険性を認識していた人物、つまりチャック・ヘイゲルとマーティン・デンプシーから、ロシアを敵国だとし、シリアではバシャール・アル・アサド体制の打倒を最優先する人物、つまりアシュトン・カーターとジョセフ・ダンフォードに交代させている。それを受け、ロシアはシリアで空爆を開始した。
 
 アメリカの好戦派はロシア軍がシリアで空爆すると予想していなかったようで、慌てていた。シリア政府軍に対する攻撃を指揮したとされる外国人をロシア軍が攻撃、殺害したとする情報について西側メディアは沈黙しているようだが、間違った情報なら、それなりの反応があるはず。巡航ミサイルによる攻撃の情報は正しく、オバマ政権は大きなショックを受けているのだろう。
 
 ロシア海軍の重航空巡洋艦(空母)クズネツォフ提督が10月にシリア沖に到着、シリアでの軍事行動に参加すると言われているのだが、これまでと違い、シリアに潜伏しているアメリカなど外国の軍人や情報機関メンバーも攻撃の対象になりそうだ。 
 
(関係記事)
シリア北東部でダーイッシュを攻撃していたシリア政府軍を
米国主導の連合軍が空爆、80名を殺害  
櫻井ジャーナル 2016年9月18日
 シリア北東部の都市デリゾールでダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)を攻撃していたシリア政府軍をアメリカ軍が主導する連合軍のF-16戦闘機2機とA-10対地攻撃機2機が空爆、シリア政府軍の兵士に多くに死傷者が出ている。当初、62名が殺されたとされていたが、その後、シリア政府軍は死者の数を80名と発表している。ロシアは緊急安全保障理事会を開催するよう、国連に対して要求した。アメリカ政府は謝罪したものの、安全保障理事会の開催要求を「扇情的行為」だと非難している。
 
 アメリカがイスラエルやサウジアラビアなどと同様、アル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュを手先の傭兵として使ってきたことは本ブログで何度も指摘してきた。その傭兵を使ってシリアを2011年3月から侵略、昨年9月までは侵略部隊が支配地域を拡大させていたのだが、9月30日にロシア軍がシリア政府の要請を受けて空爆を始めると状況は一変、侵略軍は劣勢になった。
 
 この侵略軍には背後の外国勢力が高性能兵器、例えば携帯型の防空システムMANPADや対戦車ミサイルTOWなどを大量に供給、戦闘員も増派してきた。トルコからシリアの前線へ伸びている兵站線はトルコの情報機関MITが管理、シリアやイラクで盗掘された石油はそのトルコへ運び込まれ、売りさばかれてきた。
  (中 略)
 ・・・現在のアシュトン・カーター国防長官やジョセフ・ダンフォード統合参謀本部議長はシリアのバシャール・アル・アサド体制の打倒を最優先事項とする人びと。
 
 デンプシーがシリア政府と秘密裏に情報を交換していた当時、2013年9月に駐米イスラエル大使だったマイケル・オーレンはシリアのアサド体制よりアル・カイダの方がましだと公言している。このオーレンはベンヤミン・ネタニヤフ首相の側近で、この発言はイスラエル政府の立場を代弁したものだと考えられている。そのイスラエルと同様、アメリカのネオコン/シオニスト、あるいはサウジアラビアもアサド打倒を最優先にしている。アメリカの大統領候補のうち、ヒラリー・クリントンはその仲間である
 今回の攻撃はロシア政府とアメリカ政府がシリアにおける停戦協議を続ける中で引き起こされた。こうした動きを壊したいと考えている勢力がアメリカ政府内にいることは確かで、そうした思惑があるのだろう。(後 略)
 
追加
 アメリカ軍主導の連合軍がシリア政府軍を空爆した7分後、ダーイッシュの部隊が地上でシリア政府軍に対する攻撃を開始、空と陸で連携していた可能性が高いことが明らかになった。リビアではNATO軍の空爆と地上のアル・カイダ系戦闘部隊が連携していたが、ロシアとアメリカとの直接的な軍事衝突を覚悟の上で、シリアでも同じ戦法を強行し始めたのかもしれない。
 
追加2
 ロシア政府の広報担当官、マリア・ザハロワはアメリカ軍主導の連合国軍によるシリア政府軍空爆について、「どのように考えても、私たちは恐ろしい結論に到達してしまう。つまり、ホワイトハウスはダーイッシュを守っているのだ。疑いようがない。」と語った。  (後 略)
 
追加3
 デリゾールにおけるシリア政府軍に対する攻撃にオーストラリア軍とイギリス軍が参加していたことが明らかにされた。攻撃の直前、ダーイッシュに対する攻撃に備えて現地にはシリア政府軍の精鋭部隊が到着していたという。そうした動きを止めるためにアメリカ軍は攻撃したと見られている。