2016年9月2日金曜日

軍事研究助成18倍に 防衛省 産学応募増狙う

 防衛省は過去最大の総額51685億円に上る2017年度予算の概算要求を発表しまし
 このうち、企業や大学に対し、軍事に応用可能な基礎研究費を助成する「安全保障技術研究推進制度」予算として、16年度の6億円から18倍増となる110億円を要求しました。
 これは同制度が創設された15年度には109件の応募がありましたが、研究者らの軍学共同反対運動の広がりを受けて、今年度の応募は44件に急減したことに対して、防衛省が、研究者らの良心を札束で買収するべく、異例の予算措置で反転攻勢に出たもので、研究1件あたり最大で3年・9000万円の現在の助成額を、5年・10億円程度にまで拡大する「大規模な投資」が想定されています。
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軍事研究助成18倍 概算要求6億→110億円
 防衛省、産学応募増狙う
東京新聞 2016年9月1日
 防衛省は三十一日、過去最大の総額五兆一千六百八十五億円に上る二〇一七年度予算の概算要求を発表した。一六年度当初予算比2・3%増。このうち、企業や大学に対し、軍事に応用可能な基礎研究費を助成する「安全保障技術研究推進制度」予算として、一六年度の六億円から十八倍増となる百十億円を要求した。資金提供を通じ「産学」側に軍事研究を促す姿勢を強めた。(新開浩)
 
 この制度は、軍事への応用が期待できる基礎研究を行う機関に、最大で年約四千万円の研究費を三年間助成する内容。制度が創設された一五年度は三億円の予算枠に百九件の応募があり、九件が採用された。一六年度は予算を六億円に倍増したが、応募は前年度の半数を下回る四十四件に減少。採用は十件だった。
 
 応募が減った背景には、主に大学での軍事研究の拡大に対する研究者の警戒があるとみられる。新潟大学は昨年、学内の科学者の倫理行動規範に「軍事への寄与を目的とする研究は行わない」と明記。京都大は今年、学長らでつくる部局長会議が、軍事研究に関する資金援助は受けない従来の指針を再確認した。
 
 一方、自民党の国防部会は五月、軍事研究費の助成制度を百億円規模に増額するよう提言。多額の武器開発費を投じる中国への対策が必要だと強調した。これを受けた今回の大幅増要求により、防衛省は一七年度以降、研究テーマ一件当たりの助成費の増額や研究期間の延長を目指す。
 
 これまでに助成対象となったテーマは、レーダーに探知されにくいステルス性能が期待できる新素材の開発や、海中での長距離・大容量通信を可能とする新型アンテナの研究など。
 
◆軍事費増やす構図
<大学の軍事研究に反対する「日本科学者会議」事務局長の井原聡東北大名誉教授(科学史)の話> この助成制度は、民生にも役立つ技術を研究するという名目で、軍事費を増やすシステムだ。研究者を大金でからめ捕るやり方は許し難い。助成額を大きくすることで、減少した応募件数を増やす狙いではないか。
 
 
「戦争する国」へ 重大段階 防衛省が計画
しんぶん赤旗 2016年9月1日
軍事研究助成18倍に
 防衛省は31日、2017年度予算の概算要求で、大学や公的研究機関、民間企業を将来兵器の研究開発へ動員するための「安全保障技術研究推進制度」に110億円を計上しました。16年度予算の6億円から、一気に18倍の規模への増額になります。
 同制度が創設された15年度には109件の応募がありましたが、研究者らの軍学共同反対運動の広がりを受けて、今年度の応募は44件に急減。過去の侵略戦争への反省から軍事研究に従わない方針を掲げてきた日本学術会議も、安倍政権が推進する軍学共同の是非をめぐって6月に議論を開始しています。
 こうした中、防衛省が、研究者らの良心を札束で買収するべく、異例の予算措置で反転攻勢に出た形です。研究1件あたり最大で3年・9000万円の現在の助成額を、5年・10億円程度にまで拡大する「大規模な投資」が想定されています。
 
無人攻撃機開発に着手
 防衛省は31日、将来の軍事技術開発の方向性を示した「軍事技術戦略」「中長期技術見積り」「研究開発ビジョン」を策定しました。この中で、米軍がイラクやアフガニスタンなどに投入している無人攻撃機を念頭に、戦闘型航空無人機などの研究開発を進める方針を公表しました。米国に追随し、遠隔操作で敵を殺傷する無人攻撃兵器の開発に本格的に乗り出します。
 日本政府は米国製の無人偵察機グローバルホークの導入を進めていますが、戦闘型無人機の開発に着手する方針を示したのは初めてです。
 「研究開発ビジョン」では、米空軍やCIA(中央情報局)が「対テロ」戦争に投入している無人攻撃機「MQ9リーパー」を例示。同機は米本土から遠隔操作され、パキスタンでは無実の民間人約1000人を殺害するなど、無差別攻撃を繰り返しています。
 また、同日に策定された「中長期技術見積り」では、アフリカなど紛争地域でこうした無人兵器を運用する構想も示しています。
 無人機の運用には航空法上の取り決めがなく、民間機との衝突の危険などが指摘されています。